「みんなが普通にできていることなのに、なぜ自分にはできないのだろう」

私自身、人間関係やコミュニケーションなどで悩みを持つことがあります。

もう少しだけ社会全体で一人ひとりの「できること」「得意なこと」に目を向けてみる。そこを伸ばす教育、働き方ができたら生きやすい社会に近づくのかもしれない。このような思いを、発達障害を抱えた方々と出会い、強く持つようになりました。

障害と聞くと「できないこと」に目が行きがちですが、彼ら彼女らには能力に凸凹があるというだけ。そんな発達障害を抱えた人々の可能性を、プログラミング・デザインを通して広げようとしているのがGIFTED AGENT社です。

 

うつを併発するなど社会問題化する発達障害

約600万人――これは全国において発達障害の疑い、またその傾向がある人の推定数字です(「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」より算出 ※文部省調べ)。

発達障害は脳における障害であり、「見た目にわかりづらい」という特徴があります。たとえば、多くの職場で必要とされるような対人関係が苦手であったり、場の空気が読めなかったり、マルチタスクの処理が困難であったり、こういった傾向が認められています。

障害を抱えていない上司や同僚から見ると「努力が足りない」「怠けているだけ」「なぜできないのか」という風に見えてしまうケースが多く、この障害の難しさと言われています。職場で「変わり者」とされ、みんなと同じように業務をこなすことができず、うつを併発するケースなども社会問題となっています。

また、一言で「発達障害」と言っても広汎性発達障害(PDD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などに分類されており、育った環境や年齢、発達の度合いなどによっても症状・能力に偏りがあります。複数の障害を同時に抱えることもあり、就労・勤続にあたっての障壁を取り除くのは簡単ではありません。

 

「偏りを活かす社会を創る」GIFTED AGENT社のチャレンジ

こういった課題に向き合っているのがGIFTED AGENT社です。「偏りを活かす社会を創る」というビジョンを掲げ、特に人材不足が深刻なプログラミング・デザインに特化し、発達障害者向けに研修・就労支援を行っています。

 

近年では、社会的にも発達や能力における凸凹、つまりその人たちの得意なところ、秀でた分野で活躍の場を探していくといった考え方も広まりつつあります。また、特定領域において顕著に平均よりも能力が高い人、その特質は「GIFTED(ギフテッド)」と呼ばれており、そういった人材の発掘と育成も同社が掲げているテーマの一つです。

 

「GIFTED ACADEMY」6月開所予定。発達障害の当事者として––河崎純真さん

CEOである河崎純真さんご自身が、発達障害を抱えながらエンジニアとしてさまざまなスタートアップで実績を残してきた方です。

直近では米国で法人登記しているWeb 3D / VR(仮想現実)ベンチャー「AMATELUS Inc.」にもCOOとして参画していました(同社が3000万円の資金を調達したタイミングで離脱)。

【写真】インタビューに笑顔でこたえるかわさきさん。

GIFTED AGENT合同会社 CEO 河崎純真さん (画像:CAREER HACK) 

そんな河崎さんがスタートさせた新しいプロジェクトが「GIFTED ACADEMY」です。2016年6月に開所予定で、初の発達障害者向けのプログラミング・デザインに特化した就労移行支援施設です。

現在では同施設のオープンに向けて、クラウドファウンディングがスタートしています。

代表である河崎純真さんは、今回の施設開所にあたり、こうコメントをしています。

この度、「自身の偏りを理解し、活かす機会を見つけ、それを活かす場に繋げる」取り組みのために就労移行支援施設を開所することにいたしました。6月の開所まで約80日間で授業カリキュラムや、ワークショップ、そして発達障害の特性に配慮した家具、内装設計などを進めているところです。「偏りを活かせる社会を創る」まで長い道のりだとは感じておりますが、私自身の人生をかけてこの取り組みを続けていきます。

習得スキルにプログラミング・デザインを選んだ理由として、300社以上への企業ヒアリング調査から判明した「障害者雇用のニーズ顕在化」「IT人材不足」という背景があるそうです。また、さまざまな研修を実践するなかで「発達障害者であってもプログラミング、デザインのスキルを問題なく学習できる」とわかり、今回の取り組みにつながっていると言います。

(ちなみに、同施設のインテリアデザインも実際に6月から通所される発達障害の当事者の方に設計、製作をお願いしているのだそうです)

クラウドファウンディングで提供した資金はその額によって、活動報告の受け取り、セミナー参加、授業・ワークショップ体験、個別キャリアカウンセリングなどができます。また10万円以上の「法人・自治体向け」のファウンディングプランがあり、優秀なIT人材の採用に興味がある企業も資金を提供できるようになっています。

発達障害を持つ方だけではなく、社会的マイノリティと呼ばれる人たちが「自分」を活かしてどう活躍していくか。そんな社会に近づくためのプロジェクトとして今後とも注目していきたいと思います。

 

河崎純真 Jun Kawasaki GIFTED AGENT合同会社 CEO
1991年生まれ。母親は「カリオストロの城」などを手がけた著名なイラストレーターであり、アスペルガー症候群であった。自身も発達障害を抱えており「発達障害者が充分に才能を活かすことが出来ない社会」に問題意識を持つ。高校に行く意味を感じず、15歳からエンジニアとして働きはじめ、Tokyo Otaku Modeなど複数のITベンチャー・スタートアップの立ち上げ、事業売却、役員業務などを経験。直近では、Web 3D / VR(仮想現実)ベンチャー、AMATELUS Inc.(米国)にてCOOとして活躍。離脱後、自身のライフワークであった「発達障害の人が活躍できる社会を創ること」に人生をかけて取り組むことをブログで綴っている。

 

関連リンク:

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代表問い合わせ先 hello@giftedagent.com

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