【写真】机の上に並ぶ様々な味のとても美味しそうなジェラート。

このたび熊本に、一軒のジェラートショップ『SLOW GELATO–MADE IN NONOSHIMA–』がオープンしました。

初めてホームページを見たとき、その色とりどりでおいしそうなビジュアルに一目惚れ。思わず「あれもこれも食べてみたい!」とドキドキしてしまいました。

絵本に出てきそうな白い小屋、トッピングまで丁寧に作っているのがわかるジェラート。新鮮な素材。温もりが感じられる器。写真で見るだけでも、ここで作られているジェラートに思いが込められているのが伝わってくるようです。

 

熊本の障害者施設内に誕生した、誰もが食べたくなるジェラートショップ

 【写真】田んぼの前にたつすろーじぇらーとの看板

このSLOW GELATOの直営店があるのは、熊本県合志市にある知的障害者施設「野々島学園」の敷地の中。緑あふれるスペースにぽつんと佇む真っ白な小屋は、もともとはカフェだった場所を、学園の利用者とデザイナーがDIYで改装したもの。暑さをひと時忘れさせてくれるような涼しげな小屋の中に、色とりどりのジェラートが並んでいます。

【写真】ショーケースの中に並ぶ様々な味のジェラート。

ジェラートは、シングル、ダブル、特製ブリオッシュで挟んだサンドの3種。さらに店内では、ショップ・イン・ショップのSoul kitchen Pieのパイやスープがついたランチプレートのほか、自家製シロップを使ったソーダ割りや桑の葉茶など、ヘルシーなドリンクもいただけます。

【写真】シュークリームの生地に挟まっているジェラート。

また、大きな特徴の一つが、ジェラートの素材に熊本県産の伝統的な食材や、季節の野菜や果物を使っていること。季節に合わせて6種類ほどあるジェラートは、夏なら、「晩柑&白岳(焼酎)」「ご汁&大豆プラリネ」「煮込みトマト&生姜」「桑の葉」と、まさに熊本ならではのものばかり。「どんな味なんだろう?」と想像の中でイメージが膨らみますね。

 

障害を持つ人たちの創造性とアートの融合。日本一スローなジェラート

そんなユニークでヘルシーなレシピは、東京都内で活躍するフードデザイナー・モコメシの小沢朋子さんの監修によるもの。レシピをもとに、現在は5名の利用者さんたちが、素材の下ごしらえからトッピング用のクッキー作りまでを担当しています。 

【写真】2種類のジェラートがスタイリッシュな食器に盛られている。 

レシピや小屋だけでなく、食器も全て利用者の手作り。それぞれが得意な分野でクリエイティビティを発揮しているのです。全体的なアートディレクションにはSAFARI.inc、器デザインには高橋孝治さん、インテリアデザインにはOFFRECO のヤマシタマサトシさんと、すべて、一流のプロを起用。そのアイディアをもとに、施設利用者さんたちが、すべて手作業で仕上げているのです。

 

震災を乗り越えて。2年越しで完成した奇跡の店

「時間をかけて、丁寧に。」まさに日本一スローに、日本一思いを込めてつくられたこのジェラート店をプロデュースしたのは、NPO法人スローレーベル。国内外のアーティストやデザイナーと福祉施設や企業を繋げたモノ・コトづくりを行っている活動団体です。アートの力を利用して、多様な市民が社会の中で、それぞれの個性や創造性を最大限に生かせる場所を作りたい。そんな思いで活動を続けているSLOW LABEL。今回の試みもその一つでした。


店がオープンしたのは、2016年7月11日。でもこのオープンに至るまでは、大変な道のりがありました。

SLOW LABELが野々島学園とジェラートショップを作ろうと決めたのは、2年前の2014年のこと。野々島学園の企画土井章平がSLOW LABELディレクターの栗栖良依さんと偶然出会い、意気投合して設立を決意したのがきっかけでした。

そこから先は大変なことの連続。行政からの支援がない中での資金の調達、このプロジェクトに関わることができる新たな人員の確保、法人内のコンセンサスを取るための粘り強い交渉、障害を持つ人たちにとっては非常に困難と言われるアイスクリーム類製造業の資格取得など、数々のハードルをなんとか乗り越えて、まさにスローに少しずつ、二人はオープンを目指します。

しかしオープンを間近にした2016年4月14日。熊本を震源とするあの大地震が襲いました。もともと、目指していたオープン日は、5月11日。一ヶ月を切った中での大打撃でした。余震や集中豪雨などの二次災害が続く中、オープンを一時延期にするしか選択肢はありませんでした。

 7月開業を再目標にがんばる間も、余震は続きます。その影響で学園内の窯が使えず、イートインで使う予定だったオリジナルデザインの器が間に合わない上に、外装の仕上げもままならない、という中、なんとかプレオープン!そして、やっと正式オープンの日を迎えたといいます。

【写真】すろーじぇらーとの店内。店内でジェラートを食べる子供やジェラートを選んでいる大人がいたりと、大勢の人で賑わっている。

自然災害のどうしようもない抵抗に遭いながらも、なんとか力を合わせて出来上がった奇跡の店。そう思うと、このプロジェクトに関わる人たちの思いがどれほどのものかが伝わってきます。

 

障害がある人の心に寄り添い、本質を理解すれば、可能性はきっと広がる

【写真】メニューから一緒にジェラートを選ぶ店員とお客さん。笑顔で楽しそうな表情をしている。 

社会福祉法人愛火の会が運営する野々島学園は設立20年の障害者施設。知的障害を持つ人や自閉症の人たちの、日々のひたむきさに寄り添い、障害者の行動や問題ではなく、障害の本質に向き合うことで、一人一人が持つ天性の清々しさやひたむきさという可能性を活かすこと心がけています。その中で、利用者が自立した生活を地域社会で営むことができることを支援の一つとし、授産活動(障害がある人々の社会参加や就労の目的で、ものづくりを作業を行う活動のこと)にも力を入れた、就労継続支援B型施設(障害者が雇用契約に基づき、給料をもらいながら利用する施設のこと)です。

現在の利用者は約40名。主に知的障害がある方々が、それぞれの得意な分野でステンドグラス・手織り・陶芸・園芸・パンづくり・ビーズ織りなどに励んでいます。学園内には、パン工房やカフェ&クラフトショップなど、地域の人々が利用できる施設も。障害を持っていても、能力を最大限に生かし、社会に関わっていく道筋を作ることを大切にして活動してきた学園だからこそ、今回の画期的な取り組みが実現した、と言えます。

 

全国での限定販売もあり! 作り手とつながるジェラート

すごく食べてみたいけど熊本までなかなか行けないのが残念・・・という方もご心配なく。野々島学園だけでなく、全国の飲食店やイベントでも卸販売を行っていくとのこと。

 現在は、東京・渋谷ヒカリエのd47食堂で、8月末までの限定メニューとして、SLOW GELATOのジェラートを食べることができます! お味は、こだわりミルク/桑の葉/晩柑&白岳/フレッシュトマトの4種。

私は早速d47食堂まで足を運んで、全種類試してきました!

こだわりミルクは濃厚まったりとしたクリームが後を引き、桑の葉は程よい苦味のある抹茶のような味。美しいピンク色のフレッシュトマトはさっぱりとした甘さ。晩柑&白岳は柑橘の中にかすかな焼酎の味わいで、どれもやみつきになりそうです! 

【写真】様々な種類のジェラートがカップに入って並んでいる。それぞれにはクッキーがささっている。

 野菜を洗う所から、熊本の空の下で丁寧に作られたものなんだ…。そんなふうに、作り手の方々のお仕事を想像すると、スプーンを口に運ぶ自分の動作さえ、いつもより少しゆっくり、丁寧になる気がしました。

口にスーッと溶けていく甘さが、障害を持つ人と食べる人をつないでくれる。アートという力が両者を優しく結びつけてくれているのが、心地よく伝わってくるジェラート。ぜひ一度、お試しください。

関連情報:

SLOW GELATO –MADE IN NONOSHIMA- ホームページ

野々島学園 ホームページ

所在地 熊本県合志市野々島2774−4

営業時間:10:00-16:00(水曜日定休)

電話番号:096-242-6811

 

NPO法人スローレーベルホームページ

*全国での期間限定販売についてのお問い合わせはこちらまで。

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