【写真】センターの周りにたくさんの人が集まり、中の様子を伺っている

障害のある人が働き、自立して生きていける社会であれば、もっと多くの人が自分の可能性を発揮できるようになる。そんなコンセプトを持つ「GoodJob!センター香芝」が奈良県香芝市にオープンしました!

障害のある人が作るプロダクトや、新しい働き方を世の中に送り出す「GoodJob!センター香芝」

 

「GoodJob!センター香芝」は、アート・デザイン・ビジネスなどの分野の垣根を越えて、障害のある人と共に社会に新たな仕事を生み出す拠点です。 障害のある人の個性豊かな表現を生かしたプロダクトの開発・製造、全国の福祉事業所で作られた商品の流通、企業・NPOなどと連携し未来の働き方について発信する機能を持っています。

 

障害のある人の新しい仕事拠点は、一緒に働きたくなるほど素敵な場所だった!

 【写真】センターの中でたくさんの人集まっている。明るい光が差しあたたかな空気に包まれている。

9月23日、この「GoodJob!センター香芝」の竣工記念イベントが開かれました! 最寄り駅から歩いていくと、住宅や銀行が並ぶ街並みに、突如ガラスと木を基調とした特徴的な建物が現れます。

中に入ってみると、窓から明るく光が差し込み、とても開放的な雰囲気!室内は、たくさんの壁によって仕切られており、作業や商品管理が出来る広いスペースもあれば、ポケットのような小さな休憩スペースもあります。

この建物は、「一級建築士事務所大西麻貴+百田有希/o+h」によって設計されたもの。障害のある人の働き方を見て、自分にフィットした空間を見つけて働くことが自然なのではないかというインスピレーションを受け、設計されたそうです。

また、館内の至る所に見られるサインやグラフィックは、「UMA/design farm」が担当。障害のある人が書く文字や絵を用いてデザインされています。 洗練されているけれども、全体的に温かみがある空間は、とても居心地が良さそう。私もこんなところで働いてみたい!と思ってしまうほどでした。 【写真】訪れた人が飾られているマグカップや鞄などのプロダクトを手に取り見つめている

「アート×デザイン」で障害者福祉を切り開く「たんぽぽの家」

 

【写真】机の上に張り子の作品が飾られている。

「わたぼうし音楽祭」の様子。

「GoodJob!センター香芝」を設立したのは、社会就労センター「たんぽぽの家」(以下「たんぽぽの家」)を運営してきた「社会福祉法人わたぼうしの会」。奈良県奈良市にある「たんぽぽの家」は、1973年に障害のある子どもを持つ親たちが、自分が亡くなった後にも子どもたちが安心して暮らせる家と地域、そして生きがいを持って生活出来る拠点づくりを目的としてスタート。以来40年にわたり、「アート×デザイン」をキーワードに、障害のある人の社会参加と仕事づくりを進めています。

障害のある人たちがつくった詩にメロディをのせて歌う「わたぼうし音楽祭」や、アートとケアを軸に、スタジオやアトリエを備えた活動拠点「アートセンターHANA」。障害のある人と共に働き方をデザインする活動「GoodJob!プロジェクト」。

また、企業や研究機関とのリサーチや情報発信も積極的に行っており、高齢者や障害のある人などと共に進めるデザインプロセス「インクルーシブ・デザイン」プロジェクトは国内外で注目されています。

障害のある人が自立して生活するためには、所得の向上が大きな課題

これまでの障害者福祉のイメージを拭い去るような、先進的な取り組みを進めてきた「たんぽぽの家」。しかし、障害のある人が自立して生きられる社会を実現するためには、大きな課題が立ちふさがっています。

それは、「所得の向上」です。 現在、全国には約788万人の障害のある人がいると言われています。そのうち18〜64歳の在宅者(無職)は約4割。また、働いている障害がある人の平均月収は約22,000円とされています。これは、一般労働者の平均月収約324,000円と比較すると、非常に少ない金額。年々、平均月収は増えつつありますが、依然として、自立して生活するには程遠い状況が続いています。

こうした現状を受けて「GoodJob!センター香芝」は、障害のある人の仕事づくりを目的としてつくられました。今後、障害のある人が自分の個性や創造性を生かし、自立するための所得を得る仕事の場として、様々な取り組みが展開されていく予定です。 ※1 障害者の平均月収: 平成25年厚生労働省調べ ※2 一般労働者の平均月収:控除前・残業代込み/平成25年厚生労働省調べ

障害のある人の生活や尊厳を保つ働き方

p4 ここでは、実際にどんな仕事や働き方が実践されているのでしょうか?障害のある人の働く様子や、今後作っていきたい仕事など、スタッフの小林大祐さんに伺ってみました!

原田:「GoodJob!センター香芝」では、障害のある人はどのように仕事をしているのですか?

小林:毎日同じことをやってるわけではなく、それぞれがやりたいことを組み合わせて時間割のようなものを作り、仕事をしています。アトリエ活動が好きな人は絵を描いたり、ものを作る時間を長く設けたり、流通に関わる作業が好きな方はそうした作業を多く担当してもらっています。

原田:ここでは商品の「流通」も一つのキーワードになるということですが、具体的にはどのようなことでしょうか?

小林:福祉事業所で作られる商品は、単価が安かったり、生産が安定していなかったりして、既存の流通業者からすると扱いづらい商品が少なくありません。しかし、一点一点見ると、すごく魅力的で、どうしても手に届けたいという気持ちになるくらい、いい商品もあります。福祉作業所の商品を安定して流通させる流通業者がないのであれば、「GoodJob!センター香芝」がその第一号として、商品を一緒に世に伝えていく流通業者の役割を担おうと考えています。

原田:今後はどんな活動を展開していく予定ですか?

小林:キーワードは、「デジタルファブリケーション」と「IoT」です。レーザーカッターや3Dプリンターなどのデジタル工作機械を用いる「デジタルファブリケーション」は、データさえあれば様々なものを作ることが出来ます。人としての表現の幅をすごく広げてくれるものだと考えています。 「IoT」は様々なものがネットワークに繋がり、管理できる社会になるということです。けれど、そのための技術ばかり進むというのはおかしな話ですよね。福祉施設や働き方も変わるべきだと思います。「IoT」が、障害のある人でも働ける仕事づくりというところに活かせるのであれば、社会的にもすごく意義があることだと思います。人としての尊厳、生活、暮らしの中でどう「IoT」を活用できるのかを考えていきたいですね。

また、「たんぽぽの家」では昨年から、障害のある人もない人も楽しめる実験的な表現のスペース「オープンアトリエ」を行っています。その参加者のなかに、「養護学校では授業などで創作活動をしていたけれど、卒業して就職した後自分を表現するということがなくなってしまった」という方がいたんですね。その方は、月に一回だけでも自分を表現する場所があることで、1ヶ月間すごく精神的に安定するとおっしゃっていました。「GoodJob!センター」でも、今後は「オープンアトリエ」を行って、地域の方々と一緒に行う表現活動もやりたいと思っています。

障害のある人の働き方が、世の中の仕事や働き方を変えていく

【写真】明るい光が差すセンター内での参加者の集合写真。笑顔で柔らかい空気が流れているよう。 竣工記念イベントには、障害者福祉、デザイン、クリエイター、製造業、大学など様々な分野の方々が参加していました。まさに分野を超えて新たな価値を社会に生み出していこうとしている「GoodJob!センター香芝」の理念を表現しているかのよう!  

障害のある人の給与や労働環境の向上は、自分の生活にはあまり縁がないと思われる方も多いと思います。障害がある人が働くときには、一人当たりの労働時間を短く設定し、誰かの介助が必要になることもあります。しかし、それは言い換えると、「長時間労働をしない、誰かとシェアをしながら難しい仕事に向き合っていく」ということ。これはきっと、健常者にも求められているし、社会における新しい働き方であると言えるのではないかと思います。

障害のある人の働き方が多様になっていけば、社会全体に様々な仕事や働き方の選択肢が増え、自分の価値を発揮することが出来るようになっていくはず。「GoodJob!センター香芝」が展開する活動に、今後も注目していきたいと思います!

関連情報

GoodJob!センター香芝 http://goodjobcenter.com

GoodJob!プロジェクトでは、障害のある人との協働から生まれた魅力的なしごと・はたらき方を募集しています。 Good Job! Award2016 http://award.goodjobproject.com