【写真】自然の光の中でこちらを見つめる、小さな男の子。

何か辛いことがあったり、悲しくてどうしようもなくなったとき。誰か一人でも、自分のそばに寄り添ってくれる人がいることで心が軽くなるという経験を、これまで私はたくさんしてきました。

そして、苦しい思いをしているのが自分だけではないということ、もっと楽しいことが世の中には存在しているのだということを知ると、固くなっていた心が少しずつ解きほぐされて、温かい思いが体に広がっていくのを感じます。

2011年3月11日に起きた東日本大震災。震災後、家族や友達を失った被災地の子どもたちにとっても、それは変わらないことなのではないでしょうか。

心に傷を負った子どもたちが、安心し、前を向くための“居場所”としてのフリースクールを岩手県陸前高田市につくるプロジェクトが始まっています。

不登校の子どもにとって、“居場所”となるフリースクール

【写真】楽しそうに写る2人の大人の横で、6人の子どもたちも思い思いのポーズをとる。和気あいあいとした空気が漂う。

マザーリンク・ジャパンは、震災によって不登校になってしまった子どもたちや、その親たちの支援を行う団体です。震災後、不登校の子どもたちは急増。彼らにとって家庭の外での居場所をつくりたいという思いから、フリースクール「おひさまの家」を開設しました。現在は、もともと寿司屋の店舗だった場所を利用し、仮の場所で運営しています。

「おひさまの家」では、子ども向けの音楽教室を開催したり、子どもたちとの対話の時間をつくるなど、不登校の子どもやその家庭を支援する幅広い活動を行っています。その結果、相談に来た家庭の子どもたち全員が再登校できるようになっているそうです。

被災地の深刻な状況にあるひとり親家庭を助けたい

マザーリンク・ジャパンを設立したのは、現在代表を務める寝占理絵さんです。震災のとき、寝占さんはいてもたってもいられなくなり、すぐに現地に赴いたのだそう。仮設住宅を一軒一軒訪問し、被災状況や困っていることを訪ね、どんな支援が必要なのか探る日々が続きました。活動の二年目からは、自身も陸前高田の仮設住宅に滞在。徐々に、ひとり親家庭の現状が見えてきたといいます。

寝占さん:被災地のシングルマザーは津波で実家や職場が流されたりと、複雑な問題を抱えています。被災地でも『子どもの貧困=母子家庭の貧困』であり、その状況はより顕著で、事態は想像以上に深刻な状況でした。

寝占さん自身、これまでウェブ制作会社を経営しながら、ひとり親家庭で子どもを育ててきました。自分が周りのひとにしてもらったように、手を差し伸べたい。そう思った寝占さんは、被災地のひとり親家庭を支援する活動を始めました。

母子家庭の母親には、パソコンのスキルを教える「被災地のシングルマザーが子どもと生き抜く為の教育プログラム」を実施。母親自身が家庭でお金を稼ぐ手段を提供することによって、震災で環境が変化し自信を無くしていた母親たちを勇気づけてきました。

【写真】ねじめさんたちの活動の様子。ひとり親の元を訪れて明るく声をかけている。

寝占さんたちが、ひとり親家庭の元を訪れ、サポートする活動の様子。

また、ひとり親家庭に不登校の子どもたちが多かったことから、「被災地のひとり親家庭の子どものホームステイプログラム」を行いました。夏休みの間、東京在住の外国人家庭のもとに滞在した子どもたちは、異文化の中に身を置くことで、自己肯定感が高まっていったといいます。

【写真】被災地の一人親家庭の子どものホームステイプログラムの様子。どの言えばも和やかな雰囲気が流れている。

被災地のひとり親家庭の子どものホームステイプログラムの様子。

どんな子どもでも安心できる“居場所”づくり

これまでマザーリンク・ジャパンは、対話や支援プログラムを提供することで、ひとり親家庭の母親や子どもたちを支えてきました。

震災で不登校になった子どもたちには、PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)のような、深い心の傷を負っている子も少なくないといいます。しかし、現在の「おひさまの家」はスペースに限りがあり、相談内容が他の人に聞こえてしまったりとプライバシーを十分に守ることが難しい空間。お母さんたちからの相談に乗るにも、車の中で話したりと不便な状況が続いています。さらに、子どもたちの心のケアをするには、より厳しい状態です。

深刻な状況にある子どもたちのサポートに求められているのは、皆と過ごしたい時には皆で過ごし、1人でこもりたい時には籠ることができる場所。寝占さんたちは、今回のクラウドファンディングによって、新しい場所により広いフリースクールを創ることを目指しています。新たなフリースクールは、学習室の他に、子ども達の心のケアを目的としたアート活動ができる美術室や音楽室や、相談室を備えた場所にしたいのだそう。プライバシーが守られ、いつでも子どもが安心して過ごすことができる、そんな場所を実現しようと、寝占さんたちは東京と陸前高田を奔走しています。

【イラスト】完成後のフリースクールの図面。温かみのある柔らかい線で描かれている。

完成後のフリースクールの図面。(イメージ)まずは音楽室づくりから着手していくそうです。

一歩外に出れば、「人生は素晴らしい」ことに気づくことができる

寝占さんは、新しいフリースクールに託す思いを、次のように語ります。

寝占さん:“外に出られたら“、その子どもには素晴らしい人生があるに違いありません。人生はいろいろあります。悲しいことも嬉しいことも。そういったことも含めて、人生は素晴らしいと知って欲しい。”生きる“とは寝て起きて、ご飯を食べて、というだけではありません。社会に出て、迷惑を掛けたり掛けられたり、助けられたり助けたり、人の輪の中で生きることにあるはずです。

そういった子どもたちに伝えたいのは“生きることの素晴らしさ”です。
“いろいろあっても、人生は素晴らしい”と知って欲しい。

家の外に出て、誰かとつながる。そうすれば、外の世界に存在する様々な可能性に気づくことが出来ます。それは、子どもたちのきつく閉ざされた心の扉を、少しずつ開くきっかけになるかもしれません。

子どもたちが、このフリースクールをベースにより広い世界に飛び立っていくことを、私も応援したいと思います。

クラウドファンディングは、第一弾が6/9(金)まで実施されます。すでに一つ目のゴールを達成し、現在はネクストゴールへ挑戦中。その後第二弾、第三弾と続く予定で、最終的には数千万円が必要だそうです。ぜひ多くの人たちに、寝占さんたちの思いが届いたら嬉しいです。

関連情報:
マザーリンク・ジャパンが取り組むクラウドファンディングはこちら https://readyfor.jp/projects/koodomotatino31
特定非営利法人マザーリンク・ジャパン http://www.motherlink-japan.org/index.html

「PTSD」に関する表記はこちらを参考に致しました。http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_ptsd.html