【写真】カナエールプロジェクトTシャツを着た2人の女性が楽しそうに笑う。穏やかな雰囲気が流れている。 どんな環境に生まれ育ったとしても、すべての子どもたちが可能性を諦めず、希望を持って生きていくことができる。そんな社会を実現するため、私に何ができるのだろう? 仕事柄、様々な状況にある子どもたちと接する私にたびたびよぎるこの問いに、大きなヒントを与えてくれた取り組みがあります。 それが児童養護施設に暮らす子どもたちの進学を「資金」と「意欲」の両面から、長期的にサポートする「カナエール」プロジェクトです。

児童養護施設から社会へ巣立つ子どもたち

日本には児童養護施設で育つ子どもたちが約3万人。そのうち、大学等へ進学するのは23%(全国平均は77%)注1。たとえ進学できたとしても学業とアルバイトの両立は厳しく、経済的理由等により中退してしまう割合は25%と、全国平均の3倍近くにもなります 注2。

NPO法人ブリッジフォースマイルHPより

NPO法人ブリッジフォースマイルは、児童養護施設から巣立つ子どもたちを支援する団体です。「主体的に自らの幸せな人生を選択できること」を目指し、様々な自立支援プログラムを提供。個別相談や交流会、一人暮らし準備セミナーや職業体験など、様々な取り組みを行っています。

施設退所後、進学する子どもたちを卒業までサポートする「カナエール」プロジェクト

今回ご紹介する「カナエール」は、ブリッジフォースマイルカナエール実行委員会と共に運営しています。

こちらは、児童養護施設を退所した後、専門学校や大学等へ進学する子どもたちを卒業までサポートする、奨学金支援プログラム。夢や進学への思いを語る「カナエール 夢スピーチコンテスト」への出場を条件に、参加者全員30万円の一時金と、卒業まで毎月3万円の、返済不要の奨学金を受け取ることができます。

奨学資金を支えるのは、たくさんの人々のコンテスト入場料やプロジェクトへの寄付金です。2017年も、東京・横浜・福岡の3会場にてスピーチコンテストの開催が決まっています!

【写真】スピーチコンテストの様子。舞台の上でマイクの前に立ち、スポットライトを浴びながら堂々と話す女性。過去のスピーチコンテストの様子

コンテストを通して、子どもたちの成長をサポート!

【写真】カナエールのTシャツを着た人たち一緒に、カメラに向かってポーズをする女の子。

ここで、スピーチコンテストに参加する子どもたちの「意欲」をサポートする、様々な仕組みをご紹介します。

コンテスト本番までの120日間、出場者(奨学生)はそれぞれ、3人の社会人ボランティアとともにチームを結成。チームメンバーは協力し合って、当日に向けてスケジュール調整をし、準備を進めます。

【写真】ビデオカメラで撮影をする3人。それぞれの顔には笑みが溢れている。

子どもたちは本番に向け、プロからスピーチトレーニングを受けることもできます。また、サポーターは当日スピーチとともに上映する映像を撮影・編集するなど、全力で子どもたちを支えます。

そして本番、夢スピーチコンテストの舞台へ!500人から800人もの観客を前に、自分の夢を語ります。子どもたちは大きなチャレンジを経験することで、自己肯定感と進学と夢への意欲を高めていくのだそうです。

コンテストが終わった後も、大人たちによるサポートは途切れません。ボランティアが彼らを卒業まで見守り、彼ら自身が学生生活の近況を報告するイベントなども開催。子どもたちは進学後も、応援してくれる人たちから、夢を叶えるための後押しを受けることができるのです。

【写真】スピーチコンテストの様子。マイクの前で力強く話す男性。

過去のスピーチコンテストに出場した奨学生

施設と社会の間の架け橋となる「カナエール」

現在、児童養護施設は18歳で退所しなければならないため、子どもたちは自立する準備が整わないまま社会に巣立たなければいけない場合があります。でも「カナエール」に出場するプロセスで、子どもたちはサポーターや応援者との交流を通して「手助けしてくれる大人がたくさんいる」と知ることができます。

また、施設に暮らす子どもたちは、がんばって進学しても中退してしまう先輩を見ているので、自分にもどうせ無理だろうと、夢を描けず諦めてしまうのです。だからこそ、「スピーチコンテストに出場し、進学先を卒業、そして社会で生き生きと活躍する」という彼らの生き方そのものが、後輩たちの一つのモデルとなり、励みにもなっていくのではないでしょうか。

2011年から毎年続いてきたスピーチコンテストは、残念ながら今年度で終了となります。今後ブリッジフォースマイルでは、かたちは変わるものの、引き続き子どもたちの自立生活へのサポートやキャリア支援などに取り組んで行く予定です。

 

スピーチ本番に向けた練習会に参加してきました!

【写真】練習会の様子。それぞれのチームで集まり、打ち合わせを行なっており、辺りには真剣な空気が漂っている。

soarでは、5月28日に開催された事前の練習会にお邪魔しました!この日は、東京大会に出場予定の10組の子どもと大人のグループが集まっていました。

子どもたちが数ヶ月間かけて準備してきたスピーチを、本番同様の緊張感のなか、みんなの前で披露する機会。どの子どもたちも今出せる精一杯の力でスピーチに挑んでいました。

その後は本番に向けてさらにスピーチをよりよいものにしていくため、グループ同士でディスカッションする時間です。

私たちは、今回チャレンジする高校3年生のごんちゃんチームの練習を拝見させていただきました!このチームは、かなっちゃん、オバさん、ベンさんの3人がサポーターとしてごんちゃんを応援しています。

サポーターのみなさんは暖かな眼差しでごんちゃんを見守りつつ、厳しい意見も交えながら、スピーチをブラッシュアップしていきます。

【写真】ごんちゃんを見守る3人のサポータ。笑顔も出しつつ、真剣な眼差しが注がれる。

オバさん:児童養護施設で育った子どもたちは、ひとりひとりがいろいろな経験をしてきています。その経験を力に変えて夢を語る姿が、進路に悩んでいる仲間や今もつらい境遇のなかにいる子どもたちへのパワーになると思うんです。私たち大人も、すごくパワーをもらっていますね。

かなっちゃん:スピーチコンテストに来ると元気をもらえます、間違いなく。応援しにきているつもりで、応援されちゃいます。だから、ちょっとでも気になる人にはぜひ来てほしいですね。

最初は自分の夢に自信のなかったごんちゃんですが、周囲の大人たちのサポートによりこの数ヶ月間で大きく成長し、一ヶ月後に控えたコンテストに挑みます。

【写真】スクリーンを見つめるごんちゃん。表情は見えないが、その後ろ姿は強い思いが伝わってくる。

ごんちゃん:カナエールに関わってるみなさんが、私の話をなんでも受けとめてくれるので、スピーチ練習を始めてから夢への思いがもっと強くなりました。私自身、児童養護施設に入っていながらも、この「カナエール」というプロジェクトを最初全然知らなくて。だから、大人のみなさんも知らないひとが多いと思うんですよ。もちろんコンテストを見に来てもらいたいし、そうじゃないとしても、ちょっとでも興味を持ってくれると嬉しいなって思っています。

ごんちゃんは、はにかんだ笑顔を見せながらもちょっとだけ緊張した表情。でも、本番に向けてのワクワクが伝わってくるような、きらきらとした目で語ってくれました。

soarでは、コンテスト当日もごんちゃんのチャレンジを取材する予定です!ごんちゃんがここからどんな成長を見せるのかがとても楽しみです。

子どもたちが夢をかなえるために、私たちにできること

【写真】カナエールのTシャツを着たメンバーが、喜びを表現している。抱きしめ合う人や、感極まって目頭を抑える人。

私は「カナエール」に出会い、彼らをサポートする仕組みを知ったことで、「子どもたちの将来を応援する方法がこんなにたくさんあるんだ!」と気付くことができました。

「カナエール夢スピーチコンテスト」のチケットを買い、当日会場で彼らの夢を受け取ることは、子どもたちへの何よりの”応援”となります。

目指すは、どんな環境で生まれ育っても教育や進学の機会が平等にある社会。多くの子どもたちが、未来に勇気と希望を持つことができるよう、ぜひ応援をお願いします!

チケット情報:

【カナエール2017 夢スピーチコンテスト 横浜会場】
日時:2017年7月1日(土曜日)13時00分~16時30分
会場:鶴見公会堂(神奈川県横浜市鶴見区豊岡町2丁目1番地)
横浜会場 チケット購入はこちら

【カナエール2017 夢スピーチコンテスト 東京会場】
日時:2017年7月8日(土曜日)13時00分~16時30分
会場:ニッショーホール(東京都港区虎ノ門2丁目9番地16号)
東京会場 チケット購入はこちら

【カナエール2017 夢スピーチコンテスト 福岡会場】
日時:2017年7月9日(日曜日) 13時00分 〜17時00分
会場:北九州黒崎ひびしんホール(福岡県北九州市八幡西区岸の浦2丁目1番地1号)
福岡会場 チケット購入はこちら

公式サイト:

カナエール ホームページ
ブリッジフォースマイル ホームページ

注1 厚生労働省「社会的養護の現状について」2015年調べ
注2 NPO法人ブリッジフォースマイル2016年調べ

(写真/岡野あや)