【写真】腕時計をつけている様子。大きな文字盤はシンプルで洗練されたデザイン。

腕時計は、私にとって毎日つける身体の一部のようなもの。とびきりのお気に入りを選んで、肌身離さず着けておきたい。身につける物のなかでも、こだわりたい物のひとつです。

なにこれ!?かっこいい!

初めて「さわる時計 Bradley」を見たとき、そう思いました。

この腕時計、どうやって私たちに時間を伝えてくれると思いますか?

普段、私たちは腕時計を「見て」、「時間を読む」というふうに使っています。でもBradleyは「触って」、「時間を知る」ことができる時計。目が見えない方はもちろん、障害の有無に関わらず、どんな人でも日常的に使うことができるユニバーサルデザインのプロダクトです。

スタイリッシュなデザインに加え、色や質感のバリエーションはさまざま。

【写真】色や質感の異なるブラッドリーがずらりと並んでいる。

デザインはこの他にも。気分を変えることができるバンドの種類も豊富

スーツ等のフォーマルな装い、ジーンズとTシャツのカジュアルなスタイルなど、自分好みのスタイルに合わせて、お気に入りの一本を選ぶことができます。

時間を告げる二つのボールを触ることで時間が分かる

【写真】ブラッドリーの使い方について説明している。
【写真】ブラッドリーの大きさを説明している。長さや厚さについての情報が書かれている。

Bradleyの面と側面には、2つのボールがついています。面が分を表し、側面が時間を表していて、触ってボールがどこの位置にあるかで時間を確かめることができます。ボールは内部の磁石の力で動き、時間を知らせてくれるのです。

ボールが落ちてしまうのでは、と写真だけでは心配になりますが、無理やり引き出すようなことをしなければ、ボールが落ちてしまうことはありません。また強い力で押すとずれることはありますが、磁石の力ですぐに元の場所に戻るのだそうです。

立体的なデザインが特徴のBradley。面の3時、6時、9時、12時を表す目盛りはそれぞれ異なる形です。その他の時間を表す目盛りも、この4つとは大きさが違うので、触れば簡単に区別することができます。

目の見えない人も、見える人も、全ての人が使える時計

【写真】机の上に2つ並べられたBradley。他の家具とも雰囲気があっている。

これまで、視覚障害者の人向けの時計としては、大きく2つの選択肢がありました。1つは、「読み上げ機能付きの時計」です。

時刻を読み上げてくれる時計は、静かなお店の中や会議中、授業中には使えません。反対に電車の中など、賑やかな公共の場所では時刻が聞き取りにくかったりと、けっして「いつでも、どこでも」使えるものではありませんでした。

2つめが「触覚を利用したアナログ時計」です。開くように設計された時計の風防をそっと開けて、さらに針が動かないように細心の注意を払って針に触れます。こちらは、触ることでズレが生じてしまったり、修理が大変などの不便さがありました。

時間がきちんと分かる、すごくいいアイディアだと思います。

読み上げ機能付きの時計はまわりに『私は今時間を確認しています』と知られてしまいますが、これは触るだけで時間が分かってすごく便利。

実際にBradley を使った視覚障害者の方々からは、このような声が届いているそう。

また、目が見える人にとっても、「時計を見る」ということができない場面があるはずです。たとえば、映画館などの暗い場所、会議や面接など。それにデート中なんかも、チラチラ時計を見るのは避けたいですよね。そんなときに、こっそりと時間を確認することができるのも、Bradley だからこそ。

誰にとっても“かっこいい”ものを作りたい

【写真】笑顔でインタビューに答えるキム・ヒョンス氏。

Bradleyを開発したのは、eone(イーワン)代表のキム・ヒョンス氏。この製品が生まれたきっかけは、学生時代の友達とのやりとりでした。

アメリカの大学で、隣に座った視覚障害者の友達から、授業中何度も時刻を聞かれることが不思議でした。彼の腕にも時計があったからです。その後理由を聞いたら、読み上げ機能付きの時計は、授業中には迷惑になるから使えないということでした。

視覚障害者がどんな場面でも使える時計を作ろう、そう決意したキム氏。まずは、当事者のさまざまな要望を探りました。「どんな色の時計を作るの?明るい色がいいんだけど」「ムーブメントが大きいかっこいい時計を持ちたい」などの声が集まり、デザインへのこだわりが強いということが分かったのです。

【写真】アイディアスケッチ。さまざまなタイプの腕時計が描かれている。

キム氏は、デザイナーや視覚障害者を含めたチームを作り、開発を進めました。アイディアスケッチを重ね、レゴブロックでサンプルを作ったこともあったそう。どんな形だったら触って時刻を理解しやすいのか、何度もテストを重ねました。

開発にあたり、たくさんの視覚障害者の方の話を聞きました。視覚障害者だからといって、特別なものは買いたくない。それが話を聞いた方の大多数の意見だったんです。どうせ持つなら、かっこいいデザインのものを持ちたいですよね。それは誰でも同じことです。

そうして、障害の有無や年齢、言葉などに関わらず、誰もが使うことができるスタイリッシュなBradleyが誕生しました。

ネーミングは、アメリカのスポーツヒーローBradley Snyderから

【写真】メダルを手にカメラに写るブラッドリー・スナイダーさん。立ち姿からは力強さを感じる。

Bradleyは、アメリカの水泳選手であるBradley Snyder(ブラッドリー・スナイダー)から名付けられました。彼は2012年のロンドンパラリンピックで2つの金メダルと銀メダル1つを獲得。

そんなスナイダー氏が視力を失ったのは、ロンドンパラリンピックのたった1年前のことでした。アメリカの海兵軍人としてアフガニスタンにて爆弾除去作業をしている最中、事故で視力を失ったのです。

視力が戻らないと宣告されたときは、このまま永遠に何も見えないという現実が怖かったといいます。

もちろん最初はそうでした。でもだからと言って、何もしないで震えてばかりいるようなことはしません。病院で今後について話し合っているときに『パラリンピックに出たい』と宣言しました。

海軍士官学校へ入ること、その後、爆弾削除組に入ることなど、決めた目標は努力して必ず叶えてきたスナイダー氏。パラリンピックを目指して、幼い頃から続けてきた水泳を再開しました。

パラリンピックへの出場はもちろん自分のためでもありましたが、それ以上に周りで支えてくれる家族や友人たちに『視覚障害者になったからって不幸なわけじゃない』と証明したかったんです。

身長が高いわけでも、特別な能力があるわけでもない、人一倍努力することだけが水泳での成功の道だったとスナイダー氏は話します。ロンドンパラリンピックで金メダルを獲得したのは、事故からたった1年後のことでした。

アメリカでスポーツヒーローとなったスナイダー氏は、多くの人に勇気を届けました。それに感銘を受けたBradleyの開発者キム氏がこの時計に彼の名を付けたのです。スナイダー氏は名前を貸すだけではなく、商品開発の段階で、さまざまなアドバイスやアイディアを提案し、商品に取り入れられています。

日本限定モデルも登場。ブラインドサッカー選手、加藤健人さんとコラボレーション

【写真】日本限定モデルのブラッドリー。他のブラッドリーよりもカジュアルな印象を受ける。

この度、クラウドファンディングのプロジェクトから日本限定モデル「BRADLEY × KATOKEN」が誕生しました!

【写真】街頭に佇むかとうけんとさん。その姿からは力強さが伝わってくる。

KATOKENとは、ブラインドサッカーの選手である、加藤健人さんのこと。加藤選手は、小学校3年生からサッカーを始め、「将来の夢はJリーガー」というサッカー少年でした。

そんな加藤選手の視力が徐々に落ち始めたのは高校3年生の頃。遺伝性の病気が原因でした。

視力を徐々に失っていくなかで、これから先何もできなくなるのではという不安を抱きました。そんな時に出会い、人生を変えてくれたのがブラインドサッカーです。ブラインドサッカーは、私に『自分が動かなければ、何も始まらない』ということを教えてくれました。

ブラインドサッカーとは、アイマスクをして、音が鳴るボールでプレーする5人制のサッカー。パラリンピックの正式種目でもあります。加藤選手は、2007年に日本代表として選出されてから、主力選手として活躍を続けています。

かつての自分と同じような状況にいる子どもたちに「諦めないで」と伝えたい。

そんな思いを強く抱いている加藤選手とBradleyのコラボレーションが実現。「BRADLEY × KATOKEN」の収益の一部は、加藤選手の地元、福島で「ブラインドサッカー」を広めるための資金に充てられます。「BRADLEY × KATOKEN」は、柔らかなレザーが心地良いスタイリッシュなデザイン。興味のある方はぜひ、クラウドファンディングのページをご覧ください。

今まで、他のどこにもなかった“さわる時計”。誰の腕でも、きらりと光る存在感を放ち、時を伝えてくれるはず。とびきりのお気に入りの一本としてあなたの腕にも迎えてみませんか?

多くの方に“時間にさわる”という新しい感覚を楽しんでいただければ嬉しいです。

関連情報

eone(イーワン)ホームページ

さわる時計 Bradley クラウドファンディングページ

※視覚障害者の方は通常価格より20%の割引が適用されます。その際、障害者手帳や障害を証明できる書類のコピーをご用意ください。