【写真】点字が記される2種類のマスキングテープ

貼ってはがせる、便利なマスキングテープ。日常で使えるだけでなく、デザインもかわいいので、文房具好きにとってはついつい何個も集めたくなります。

今回ご紹介するのは、点字ブロックや点字で書かれたメッセージをデザインしたマスキングテープです。

街を歩いているときや電車に乗るときに、何気なく目に入る点字ブロック。

目の見える人にとって、点字ブロックを意識しながら道を歩くことは少ないかもしれません。しかし、視覚障害のある方にとっては、安心して街を歩き、移動するための大切な道しるべなのです。

「もっとたくさんの人に点字ブロックを身近に感じてもらいたい」という思いから作られたマスキングテープ。斬新でかわいいデザインと、プロダクト込められた温かな想いが、今話題を呼んでいます!

点字モチーフのマスキングテープ

点字モチーフのマスキングテープには、点字ブロックのデザインのものと、点字でメッセージが書かれたデザインの2種類があります。

【写真】表面につばさの会と印字された点字ブロックと点字の2種類のマスキングテープ

点字ブロックのマスキングテープは、少し立体感を出し、実物の点字ブロックを意識してもらえるようなデザインに。

【写真】ノートにはられた点字ブロックのマスキングテープ

一方、点字メッセージのマスキングテープには、点字で「ありがとう」「こんにちは」のメッセージが書かれています。

【写真】ノートにはられた「ありがとう」「こんにちは」と記載された点字のマスキングテープ

私も購入し、メモを貼るときや、封筒の封を閉じるときに使用しているのですが、友達から「このマスキングテープ、どこで買ったの?」「可愛いね!」などの声をもらい、とても好評です。

「可愛い」「面白そう」という思いで、気軽に点字について知ってもらえたら。仕事のメモやちょっとしたプレゼントのラッピングなど、ふとした場面で点字マスキングテープを目にすることで、点字について何となく意識してもらえたら。そんな思いが込められたデザインのマスキングテープです。

視覚障害についての情報を共有するグループ「つばさの会」

このマスキングテープの企画とデザインを手掛けたのは、神奈川県にある「つばさの会」というグループです。視覚障害のある子どもとその親で活動しています。

「つばさの会」に所属している子どもたちの中には、盲学校に通う子もいれば普通学校に通う子もいます。普通学校に通う子どもたちは、同じように視覚障害のある子と交流する場面が少なく、親も視覚障害者にまつわる情報を手に入れにくいのだそう。

そこで、みんなで情報を共有できる場所を設けたいと思い、平成23年から「つばさの会」の活動が始まりました。

【写真】スキー場で集合写真を撮るつばさの会メンバー

「つばさの会」には視覚障害の子どもがいる30家族ほどが集まっており、視覚障害に関する勉強会はもちろん、子どもたちのための水泳教室やクライミング教室、スキー教室、夏祭り、キャンプなどさまざまなイベントを行っています。

【写真】つばさの会のイベントの一つである、ロッククライミング教室でクライミングをする女の子

視覚障害のある子どもたちに、楽しんでできることを習わせたい

つばさの会の代表を務めるのは亥埜理絵(いの りえ)さん。亥埜さんには生まれつき全盲のお子さんがいます。

【写真】屋外で点字ブロックの上を歩くお子さんを見守るいのりえさん

お子さんが小学校へ上がるタイミングで、これまでまわりにいたお友達は、習いごとを始めるように。「娘にも学校の勉強以外で夢中になれることをやらせてあげたい」と考えた亥埜さんは、「水泳なら目が見えなくてもできるのではないか」と思いつき、スイミングスクールを探し始めます。しかし、なかなか視覚障害の子どもを受け入れてくれるスクールが見つかりません。

通えるスクールがないので、目の見えない子どもたちでグループを作って、教えてくれる先生を探したほうがいいのかなと思い始めて。それが「つばさの会」を立ち上げたきっかけでした。

今では水泳はもちろん、スキーをしたり、キャンプに行ったり。これまでできないと思っていたことも、みんなでチャレンジすることで、少しずつできることを増やしています。

たとえば、日常生活では目の見える人が何でもしてくれて、目の見えない子は単純作業しかしないという場合があります。もちろん、そのほうが作業は早く終わり、効率が良いこともありますよね。  

だけど、本当は一から全部できたほうが子供の成長につながると思うんです。つばさの会が、視覚障害のある子どもたちにとって、日常生活ではなかなか体験できないことを学ぶ場となればいいなと考えています。

【写真】エプロンと三角巾をつけて、調理室で洗い物をする男の子

視覚障害のある子どもたちが、学校以外でも友達をつくり、好きなことを見つけたり、さまざまな経験を通じて学んだりしてほしい。そんな思いで「つばさの会」は活動しています。

点字ブロックの大切さを知ってもらいたい

亥埜さんが点字マスキングテープを作ろうと思いついたのにも、お子さんの存在があります。

お子さんは、普段は点字ブロックと杖を頼りに道を進んでいます。しかし、亥埜さんはその光景を見ていて心配になることがあったといいます。

例えば、点字ブロックの上に荷物が置かれていたり、立ち止まっている方がいたりすると、娘が方向を見失ったり、ぶつかってしまうこともあります。

もちろん、娘のことも心配ですが、私たち親はそれ以上に相手に怪我をさせてしまわないかということも常に心配しているんです。

例えば、自転車を倒してしまい、近くにいた人が巻き込まれてしまったら。高齢の方にぶつかってしまい、転倒させてしまったら…。

点字ブロックは視覚障害の方にとっての道しるべとなるだけではありません。視覚障害のある方が他の人にぶつかったり、転んだりする危険性を低くすることで、周りの人が巻き込まれてしまう危険性を減らす役割もあるのです。

「障害があるので助けてください、点字ブロックについて理解してほしいんです」と、ただお願いするだけということに違和感があったんです。安心して歩くために必要不可欠な点字ブロックの大切さを、押しつけがましくないかたちで多くの人に知ってもらう方法はないだろうかと考えました。

つばさの会の仲間どうしで、普段使いのできる可愛い文房具や、いくつ持っていても邪魔にならないものがいいのではないかと話し合ったそうです。そうして思いついたのが、マスキングテープでした。

マスキングテープが架け橋になるように

マスキングテープのデザインには、「いつも街中で助けてくれる多くの人々に対して、もっと感謝の気持ちを表現したい」という気持ちから、「ありがとう」のメッセージも込めました。

発売後には、多くの反響があったそうです。

これまで点字ブロックのことを知らなかった方にも手に取っていただけて、「点字ブロックの意味を初めて知った」「点字が面白そうだから、私も勉強してみようかな」といった声も寄せられています。点字について、少しでも興味を持っていただけたなら本当に嬉しいです。

【写真】マスキングテープ

マスキングテープをきっかけに、点字や視覚障害について自然に知ってもらいたい。そして、多くの人に感謝の気持ちを伝えたい。マスキングテープを見ていると、亥埜さんをはじめ、つばさの会のみなさんの優しい気持ちが伝わってくるようです。

視覚障害のある人も、そうでない方も、もっと安心して道を歩けるように。点字マスキングテープはみんなの「安心」を作り出すための第一歩かもしれません。

マスキングテープは、つばさの会のホームページはもちろん、「社会福祉法人日本点字図書館」が運営する「わくわく用具ショップ」からも購入することができます。

つばさの会HPから購入するセット商品には、子どもたちが点字で書いたメッセージ入り!

温かな気持ちのこもったマスキングテープが、視覚障害のある人とこれまで点字に触れたことがなかった人を繋ぐ架け橋になればいいなと思います。

関連情報:

つばさの会 ホームページ
つばさの会点字マスキングテープ 購入ページ
社会福祉法人日本点字図書館 ホームページ
わくわく用具ショップ点字マスキングテープ 購入ページ