【写真】穏やかな表情でこちらを見ている桜林さん

将来の夢は何ですか?

子どもの頃、誰もが一度は聞かれたことのある質問。無邪気に答えられていたのは、いつ頃までだっただろうか。

周りに私よりできる人がたくさんいる、夢なんて追うのは現実的じゃない。そう言い聞かせて自分から夢を遠ざけるくせに、追いかけている人のことを眩しく感じてしまう。

やりたいことは何ですか?

大人に近づくと、夢という単語は出てこなくなる代わりに、こう聞かれることが多くなる。

その度に、うーんと悩んでしまう。そう聞かれること自体が、苦痛になってきたりもする。

やりたいことって、ないといけないんだろうか。

好きなこと、やりたいことを、胸を張って答えられない私は、ダメなんだろうか――。

ここまで読んで「ああ、なんかわかるな」と思ったあなたに届けたくて、この記事を書きました。私も、夢など聞かれると、わりかし困ってしまう人間です。

夢も、やりたいことも、他人から押し付けられるものではありません。

「やりたいことがある」状態が肯定されるのと同じように、「やりたいことがない」状態だって、その人らしさとして肯定されていいんじゃないかと思います。

けれども、その「やりたいことがない」という言葉は、本当に本心なのでしょうか。もしかしたら「私に“やりたいこと”なんてできっこない、してはいけない」と、思い込んでいるだけかもしれません。

夢を持てないことは、欠損だと思っていた。

夢を持てない、やりたいことが見つからなくて悩む人たちに、鋭くてやさしい問いを投げかけてくれる本があります。

タイトルは『世界は夢組と叶え組でできている』。著者はクッキー屋「SAC about cookies」を経営しながら、クリエイター発信サービス「note」でたくさんのエッセイを発表している、“サクちゃん”こと桜林直子さんです。

桜林さんは20代前半で子どもを産み、その後ほどなくしてシングルマザーに。仕事をしながらひとりで子育てをする、お金や時間の制約がある生活のなかで「自分はどんな生き方ができるのか、望んでいるのか」ということに、真剣に向き合ってきました。

そこで「やりたいことがない」との悩みにぶつかりながらも、考えに考え抜いたすえに、自分なりの答えをすくい上げ、自ら歩む道を選んできた人です。

彼女はいま、過去の自分と同じように「やりたいことがない」と悩む人に向けて、言葉を紡ぐ活動をしています。それに多くの人たちが、勇気づけられています。

やりたいことがある「夢組」と、やりたいことがない「叶え組」の話。 やりたいことってなに?どうやって見つけるの?ないとダメなの?様々な方向から考えていきます。

(noteマガジン「夢組と叶え組の話」の説明文より)

桜林さんは、クリエイターと読者をつなぐサービス「note」で『夢組と叶え組の話』というテーマで、これまでに50本以上のエッセイを書き連ねてきました。彼女の文章には、“語りにくい生きづらさ”を解きほぐすメッセージが、たくさん詰まっています。それは、自分の力や可能性を信じることを、どこかでためらってしまうような、私やあなたへのエールだと感じます。

今回は、そんな桜林さんをお呼びして、たっぷりとお話を聞かせてもらいました。

テーマは「やりたいことがない“叶え組”は、どう生きていけばいいのか」……と言っても、「ああするべき、こうするべき」と押し付けるような話ではないので、安心してくださいね。

馴染みの喫茶店で、近くの席から聞こえてくる雑談に耳を傾けるような気持ちで、ゆったりと、少しドキドキしながら読んでもらえたら幸いです。

「夢組、叶え組」という言葉が生まれた背景

【写真】真剣な表情で話をする桜林さんとライターの西山

聞き手・西山武志(以下、西山):桜林さん、今日はよろしくお願いします! まずは「夢組と叶え組」という言葉が生まれた背景について、お話を聞かせてください。

「やりたいことがない人=“叶え組”」「叶え組は、やりたいことを持つ“夢組”と一緒にチームを組んで、一緒にその夢を叶えることができる」と位置付けられたことが、とてもユニークだと感じています。この「叶え組」というのは、桜林さんも「最近そういう人が多いな」と感じられていたところから、生まれたものでしょうか。

桜林直子さん(以下、桜林さん): 周りに多いというよりも、私自身が「叶え組」なんですよ。昔から「自分には夢がない、やりたいことがない」って思ってたから。

西山:えっ、そうなんですか?

桜林さん:そうなんです。自分でクッキー屋さんを経営しているから、周りからは「やりたいことやってるじゃん!」って言われることが多くて。でも、私としては「生きていくために、そうせざるを得なかった」から、起業という手段を選んだんですよね。

もちろん、自分が無理なくできることの範囲のなかで「何をしたらお客さんに喜ばれて、商売として成り立つのか」と考えた上での決断なので、イヤイヤやっていたわけではないんですけど。

西山:「そうせざるを得なかった」という言葉の背景について、もう少し詳しく聞かせてもらってもいいですか。

桜林さん:私は製菓の専門学校を卒業した後に、洋菓子屋さんで会社員を10年ほどやって、それから独立しました。その間、23歳のときに結婚して子どもを生んで、それから1年ほどで離婚をして、シングルマザーになっています。

当時の私にとって「シングルマザーでも、共働き世帯と同じくらいの生活費を稼ぐこと」と、子どもと過ごす時間をつくるために「時間を自由に使えること」が、何よりも優先順位が高かった。

それらを叶えるためには、端的に言うと「労働時間を半分にして、現状の2倍稼ぐこと」が必要だった。その状態を実現するにはどうしたらいいか数年ずっと考えて、たどり着いた答えが「起業する」だったんですよ。根っこにあったのは「これをしたい」ではなくて、「不足を埋める」という考え方だったんです。

西山:なるほど。時間とお金の不足を埋めるために、手段として起業を選んだのですね。

桜林さん:そうそう。その時には「やりたいこと」とか「楽しいこと」なんていうのは、圏外にあったんです。困っていること、不足や不満を解消するので精いっぱいだったから。

けれども、いくら説明しても周りからは「そうは言っても、自分の店なんてやりたくなきゃできないでしょ?」と、話が通じないことが多くてモヤモヤしてた。それで「どういう伝え方をしたら信じてくれるかな」って考えつつ、自分のなかで整理したり言語化したりするために、noteで記事を書き始めました。

「夢組と叶え組」の話も、もともとはいくつか書いている記事のうちのひとつでしかなかった。それを出してみたら、「私もやりたいことが見つからなくて困ってる」とか、「名前をつけてくれてありがとうございます!」って感想がどんどん出てきて、とても嬉しくて。私も書きながら「そっか、自分は叶え組だったんだね」と納得できて、人にもすごく話しやすくなったんですよね。

西山:その後もしばらくこのテーマで書き続けていって、『世界は夢組と叶え組でできている』という一冊の本にまとまったと。

桜林さん:そうですね。「やりたいことが明確にある人=夢組」に向けた本は世の中にたくさんあるけど、叶え組に向けたものって、あんまりないんじゃないかなって思って。「叶え組の人たちのサポートをする」という意味では、この本を書けたことも、誰かの助けになることが得意な“叶え組”の私らしさなんだろうな、と感じています。

夢がなくてもいいじゃないか

【写真】インタビューにこたえる桜林さん

西山:「叶え組」って言葉に、安心感を覚える人は多いだろうなと思います。今は「好きなことで生きていく」といったメッセージが、なんとなく昔より推奨されている空気感がありますよね。そういう人たちが、メディアで目立ちやすいからかもしれません。

桜林さん:たしかに最近は夢を持って頑張ってる人がSNSとかでぜんぶ見えちゃうから、叶え組の人たちは「やりたいことがない私って……」と余計に焦ったり、落ち込んだりしちゃうんだと思う。

西山:ロールモデルとして表に出てくる人たちは、みんな夢組っぽいですもんね。子どもの頃から「夢は何?」と繰り返し聞かれてきた影響もあって、「ないよりはあったほうがいい」と思っている人が、大多数だと思います。

桜林さん:私は中学2年生の時、進路の話のなかで「あなたの夢は? 将来何がしたいですか?」って先生に聞かれて、「えっ、そんなの知らないし」って思った(笑)。だって、どんな選択肢があるのか知らないし、ぜんぜん教わってなかったから。「何も目安を教えてくれないのに、なんでいきなりそんなこと聞くんだろう?」って。

生徒が夢を話すと、先生たちも「それはいいね!」とか、人の夢を評価することもありますよね。正直に言ったら言ったで「それはちょっと難しいかも」なんて返されたりする。結局は先の進路に繋がることを話さないといけない。

大人の期待に添って、なおかつ自分の能力に見合うものを言わないとダメだったりするから、「本当に思ってないことを言わせるのよくないよ!」みたいなことをね、当時から考えてたんです。

西山:たしかに、小さいときに聞かれる「将来やりたいこと」と、中高生くらいのときに聞かれる「将来やりたいこと」って、結構ニュアンスが違いますね。言いやすい夢と、言いにくい夢があるって、あらためて考えると、ちょっとモヤっとするな。

桜林さん:それくらいの頃から「夢を持とう」みたいな話、常に疑ってたんですよ(笑)。そういう人がいることも分かるけど、私はちょっと違うなって。「夢を持て、夢はあったほうがいい」っていうの、それ自体は真実かもしれないけど、なんか言い方は変えたほうがいいなって、ずっと思っていました。

私は夢組じゃないけど、私なりの考え方とやり方で、起業してお店つくりました。それが細々とだけど、10年近く続けられたので、そろそろ物申してもいいかなと思ったんです。「夢がすべてじゃないよ」って。

嫌なことを「ガマン」せず、抜け出すために「苦労」しよう

【写真】真剣な表情で話をする桜林さん

西山:「夢がすべてじゃない」という言葉について、ここからもう少し掘り下げていけたらと思います。桜林さんはご自身のnoteで「夢とかやりたいことを、持ちたくても持てない状況があるから、現状確認が大事」といったことも書かれていましたよね。いきなり「夢、やりたいことがない」状態から、それらを持とうとする前に、目を向けたほうがいいものがあると。

桜林さん:そうなんです。夢の話をする前に、まず「安心して生活できる足場があること」が大切だって前提は、もっと語られてもいい気がするんですよね。足場がしっかりしてないと、やりたいことを見つけても「コレとコレとコレがあるから、私には無理だよね」って思っちゃうから。

たとえば私の場合だと「お金と時間がない」ってなると、それを無視して「好きなことをする」がなかなか選べない。だからまずは「いくら必要なんだっけ?」「何ができたら平気なんだっけ?」っていうのを把握して、そこを解消していった。それができると、やるべきことが見えてくるかなって。

西山:だから、やりたいことじゃなくても、クッキー屋を続けてこれたんですよね。目的があって、そのために自分で選び取った苦労だから。いま、お話しながら思い出したんですけど、僕、本のなかにすごく好きな一節があって。

「こう考えたらいいよ」と言うと、「それができれば苦労しないですよ」と言われるけど、苦労しようよ、と思う。ガマンじゃなくて苦労ならしようと。その苦労の先には、ちゃんといいことが待っているから。

(『世界は夢組と叶え組でできている』p108)

西山:基本的にやさしい文体なんですけど、時折こういう鋭いナイフが潜んでいる部分があって、ゾクッとしました(笑)

桜林さん:ここ、けっこう厳しいですよね(笑)。「ガマン」は嫌なことに対して起こる反応なんです。それを続けるより、その我慢してる状態から抜け出すための「苦労」をしようって。そういう意味で、私はお店をやるための苦労を引き受けたんですよね。当時はそこまで自覚的ではなくて、最近振り返ってみて初めてわかったことなんですけど。

もちろん選択肢として「子どもは預けて昼も夜も働き続けて、なんとかお金を稼ぐ」みたいなやり方もありました。ただ、私はそれは嫌だなと思った。やりたいことはないけど、せめて「やりたくないこと」をやらなくてすむように、頑張ろうって。その気持ちはとても強く持っていましたね。

西山:嫌なことをガマンしない。そのガマンに割くエネルギーがあるなら、せめて「やりたくないこと」をやらないための苦労に使っていこう。これらは叶え組にとって、大きな指標に言葉じゃないかなと思います。

桜林さん:ガマンって、けっこう“美徳”みたいに語られることがあるじゃないですか。私はそういうの、一つひとつ疑っていかないと気が済まないんですよ。子どもの頃からずっと、「ホントにそれで委員会」の委員だから。

西山:ホントにそれでいいんかい!(笑)

桜林さん:「こうするべき、こうあるべき」って言われていることを疑うのが、もう性分で。だから、「シングルマザーはいっぱい働くしかない、子どもにも我慢させないといけない」という定型の語りも疑った。もちろん、状況によっては本当にその選択肢しか取れない場合もあるとわかっているけど、私はできる限り違う道を探したかった。

毎日ヘトヘトになるまで働くのも嫌だし、子どもに大きくなってから「親がシングルマザーだったからこれが出来なかった」って言われるのも、絶対に嫌だったんです。「子どもに“親のせいで”って言わせない」っていうルールは明確にあって、そのために頑張ろうと思えた。「○○したくない」は、私の大きな原動力なんです。

叶え組こそ「過去と向き合う力」を持っている

【写真】質問の説明をするライターの西山

西山:ガマンをしない、すなわち「何にガマンをしているのか見つける」ということは、「やりたいこと」を見つけていく上で、大きなヒントになる気がします。この「何にガマンをしているかを見つける」ためには、どうしたらいいのでしょうか。

桜林さん:ガマンっていうのは、自分の欲にフタをしている状態。このフタの正体に気付くことが、とっても大切です。

私はよく「何がやりたいかわからない」という叶え組の人たちには、フタの正体を探るための方法として「できない条件を考えずに、やりたいことを100個書き出してみて」って薦めています。

ここで言う“やりたいこと”っていうのは、夢とか大きいものじゃなくて、「○○に行きたい」「○○さんに会いたい」「○○を食べたい」とか、身近な行動や状態レベルの話。それを「お金がないから」「時間がないから」とか、現実的な制限を無視して書き出してもらうんです。

西山:寝たいとか、やせたいとかも?

桜林さん:そうそう。それで、これをやってもらうと、全然書けない人が結構いるんですよ。そういう人は「制限は無視して」と言っても、無意識下に制限をかけてしまっている。「じゃあ、なんで書けないんだろう?」って考えていくと、素直に欲を表現できない理由、フタの正体が見えてきます。

西山:そのフタって、たとえばどういうものなんでしょう。

桜林さん:いろいろ種類はあるんだけど、ただの自分の思い込みだったり、過去に誰かに言われた言葉だったりすることが多いかな。そういうフタは、取っちゃったほうがいいと思っていて。それを取り除かない限り、自分の欲を抑えつけて、うっかり「やりたくないこと、ちょっと嫌なこと」ばかりを選びがちになっちゃうんですよ。

いろんな人の話を聞いてきたけど、「仕事はガマンをするもの、それでお金をもらえている」「ほかの人が嫌がることをガマンしてやってるから、私は役に立てている」って思い込んでいる人、結構多くて。

西山:「ガマンをしているから認められる」というある種の成功体験が積み重ねていくと、無意識に自分から、その行動パターンにはまっていってしまうと。

桜林さん:そうなんです。たとえば、前の仕事が嫌になって辞めたのに「3年間やってきたし」「私にできるのはこれくらいだから」という理由で、転職先でもまた似たような業務に就いてしまったりしてね。

そういう人たちは「自分がどういう欲を持っているのか」「その欲にどんなフタが被さっているのか」を知ると、もっと幸せになれる道を選べるようになるはず。そこで必要になってくるのが、「過去と向き合うこと」なんですよね。よりよい未来を想像できないときって、大体の場合、邪魔をしているのは過去だから。

西山:過去と向き合う。それは「夢組よりもむしろ、叶え組のほうが得意なはず」ということを、本にも書かれていましたよね。「なるほど、そういう見方ができるのか!」と、すごく印象的でした。

桜林さん:夢組は未来を考えるのが得意な一方で、叶え組は過去のことを考えるのが得意だから。その力の使い方を、少し変えてあげればいいと思んです。

西山:それは「過去の見方を変えていくこと」に、ですよね。

過去を見る(見てしまう)能力や、過去の出来事はそのままでも、引っ張られすぎることなく未来を見据えるためには、過去の見え方を変えるために、メガネをとり替える必要がある。

過去も自分も変わらないけど、メガネはなんどでもとり替えることができるし、どんどんいいものに更新することができる。

(『世界は夢組と叶え組でできている』p92)

桜林さん:そうですね。過去を振り返る力を、フタを一個ずつはがしていくことに使っていこうよって。これを頭のなかだけで考えるのは難しいから、書くとか喋るとかもしながら、過去の意味づけを捉え直していくことが大切です。向き合うのは簡単なことじゃないけど、現状の行動パターンを変えていくには、そこから始める必要があるんですよね。

「不幸な自分」設定に甘んじてない?

【写真】インタビューに応える桜林さん

桜林さん:「過去の出来事は変わらないけど、その解釈は自分次第で変えてもいいんだ」って知ることが、私は大きな希望だと思っているんです。それをわかっていれば、嫌だったことやショックだったことに、引きずられすぎずに済むから。

けれども、ネガティブな過去に引きずられている人は、結構多いなと思います。苦手な人に言われた一言に囚われ過ぎていて、ほかの人のポジティブな言葉が入ってこなかったりね。気持ちはわかりつつも「あなたが傷つけられたその言葉、そんなに大事にする必要ある?」って感じることも多くて。

西山:そっか。自分で自分を縛りつけちゃってるんですね、それって。

桜林さん:ほかにも、他人に「あなたはこういう人間だよね」と言われたことを真に受けて、そう思い込んでしまっているパターンもあったりする。「他人からそう言われた」という事実は変えられません。けれども、それをどこまで本気にするか、採用するかどうかは、自分次第でいくらでも調整できます。

過去に言われたことが欲のフタになっていると気付けたら「じゃあ、その言葉がなかったら、本来のあなたはどうしたいの?」って考えられるといいですね。いろんな角度から「私の考え、本心って何なの?」と、自分に問いかけていく。

西山:その問いかけって、みんな避けがちだったりするのかもしれません。答えがないもので、考え抜くのは難しくて、大変なことだから。けれども、いつまで避けていてもしょうがない。本のなかで「自分で考えず、他責思考にしていたほうが楽だ」という言及もありましたよね。あれも個人的に、すごく刺さりました。

じつは、自分は不幸だという設定のほうが、人のせいにできて楽でもある。社会が悪いだけで、自分は悪くないと思えるからだ。

(『世界は夢組と叶え組でできている』p133)

桜林さん:ここも、けっこう厳しいよね(笑)。ただ、事実なんです。親のせい、環境のせいにして「だから私はああいう世界にはいけない」「あんなことはできない」って決めつけちゃったほうが、ある意味で楽なんですよね。

けれども、「ああいう世界にはいけない」って思っている時点で、それはもう、他人のことを羨やんでいる。現状から抜け出したいと思っている自分がいるんです。そこから一歩進むためには、自分で何かを決めて、行動していかなくちゃならない。

もちろん「私は“不幸の物語の主人公”になる」といった決意があるのだったらいいのだけど、みんな大抵そういうわけじゃないんです。幸せになりたいはずなのに、その欲にフタをして、“不幸の物語”に留まり続けている。「その物語は自分でいつでも書き換えられるし、他人が書いた物語に乗ってもどこかでズレるからやめたほうがいいよ」ってこと、私は伝えていきたいんですよね。

西山:他人が書いた物語に乗ってしまっていること、それに気付けていないケースは、結構多いのかなと感じます。

桜林さん:「よかれと思って」と親に言われ続けたことを、自分の心からの希望だと思いこんじゃっていたりしてね。人の期待を自分の希望と錯覚してしまうのは、特に叶え組が落ちやすい沼だと思います。必要とされたり、喜ばれたりすることは、心地よいものだから。ただ、それを追い求めすぎると、そのうち「自分はどうしたいんだっけ?」というのがわからなくなってしまう。

「何がしたいか」という自分の意思決定を、完全に人に委ねるようになると、その先あんまりいい結果にはなりません。そういう状況、誰も悪くないことが多いんですけどね。周りの人たちも、心からよかれと思って「あなたはこうするべきだよ」と言ってたりするから。でもね、やっぱり自分の決定権を、手放しちゃいけないんです。あなたの幸せは、あなたにしかわからないことだから。

今を諦めないために必要な、長い時間軸で捉える意識

【写真】話しながら笑っている桜林さん

西山:その人が何を幸せとするかは、その人にしかわからない。その人が何をやりたいのかも、その人にしかわからない。言葉にすると当たり前ですが、大事にしたいメッセージだなと感じました。このことを踏まえて、桜林さんがいま「やりたいことがない」と悩んでいる叶え組の人たちに対してアドバイスするとしたら、どんなことが言えそうでしょうか。

桜林さん:私が叶え組の人たちに投げかけられる言葉って、シンプルに言えばひとつだけなんです。今までガマンに費やしてきた労力を、「自分を知る」「フタを取っていく」ための苦労に当てていくこと。これに尽きるのかなって。

西山:ガマンも苦労も、どっちも大変なんですよね、結局。それならせめて、前向きに苦労を迎え入れていく決意を持って、“楽しい地獄”を選んでいきたいです(笑)。

桜林さん:そうだよね、“楽しい地獄”だ。何をやるにしても楽なことはない、ってね。

西山:そういう、いい意味での諦めは持てていると心が楽になりますよね。

桜林さん:やりたいことを見つけている人たちは、キラキラしていて楽しげに見えるかもだけど、彼らもすっごい大変だしめちゃくちゃ苦労しているんですよ。何者かになったら楽だなんてことはなくて、むしろなってからのほうが、ものすごい努力をしていたりするし、やってみたら違ったってこともある。

それも、この本を書きながらたくさんの人としゃべって、あらためて感じたことでした。ふんわりとした憧れだけでは、到底たどり着けないんだなって。

一人ひとり、やりたくないこと、やりたいことは違う。だから「こうしたら絶対に大丈夫だよ」なんてことは言えない。言ってくれる人もいるけど、それはあくまでその人にとっての成功体験でしかないから、鵜呑みにしちゃいけないんですよね。

西山:それを理解した上で、取り入れないとですね。言ってくれたことを丸々信じて従ったら、失敗したときに、その人のせいにしてしまいがちになる。

桜林さん:私もべらべら偉そうに語ってるけど「これが絶対の正解ではないし、他の人は知らないよ」って散々言ってるし(笑)。それでも「私はこうしたらできたよ」っていうことは、希望として伝えたいなって思ってるんです。

いま私は40代だから「あっ、30代からでも変われるんだ、40代でもできるんだ」ってことが伝わったら、それは大きな希望だなって。20代や30代で悩んでても「まだできる、まだ変われるんだ」って思ってもらえたら、とてもうれしいですね。

西山:そもそも、20代の早いうちに、本当にやりたいことが見つかるって、結構レアなケースなんじゃないかなと感じています。多くの人は、それまで学校という狭いコミュニティに留まっていて、実際の社会を見れていないから。

桜林さん:そうなんですよね。その状態で、未来の選択肢なんて具体的に考えられるわけがないんだよね。社会に出て、いろいろな経験をして初めて気付けることも、たくさんあるから。

選択肢を知らないから決められない期間って、もどかしくてしんどいんだけど、そこで無理やり道を決め込んで、ずっとそこに固執するようになってもダメで。若い人たちに向けては、不安も当然あるものとして引き受けつつ、先がわからないなりにできることを増やしていくと、30歳くらいになってきっと何か見つかるかも……くらいしか言えないんです(笑)。

西山:そうですよね、それがとても誠実な言い方だなと思います。

桜林さん:だから、先が見えない時期は「いいから目の前のことに全力を尽くそう」と言いたい。「何か違うかも」って諦めながらやっちゃうと、身につくものも少なくなって、結果的に先の選択肢が増えていかなくなるから。もちろん、それがガマンになっていないか、というチェックも大事ですけどね。

「いま・ここ」の時間軸だけで考えていると、ツラさにばかり目がいってしまうこともあるから、そういう時は長い時間軸で「今はスキルアップの修行期間だ」と捉え直せるといいかもしれないなと思います。

西山:いまを諦めないために、いまへの執着を捨てて、長い目でみると。相反して見えるような考え方が根っこで繋がっているのは、とても面白いなあ。

自分の想像上に相手に傷つかないで、素直に話そう

【写真】道路を歩く桜林さん

西山:先ほども語られていましたが「いかに自分の思い込みから抜け出すか」ということの大事さ、難しさを、お話ししながらあらためて感じています。もうひとつ、桜林さんの本のなかで、痛烈に響いたところがあって。

他人の考えや気持ちは、自分のことではないので正確にわかるはずがない。雑に言うとすべて「思い込み」で、まだ現実には起こっていない想像に傷ついている状態だ。すこし厳しい見方をすると、他人の目が気になるといいつつ、実際には自分の頭の中だけで展開されていて、他人のことなどすこしも見えていない状態だとも言える。

(『世界は夢組と叶え組でできている』p109)

桜林さん:これ、ホントにそうなんですよ。「人の目を気にしちゃって」とか「どう思われるか怖くて」っていう人は、実は自分のことしか考えられていないのかも、ってね。

西山:いろいろと思いあたる節があって、耳が痛い……。

桜林さん:人の気持ちを慮るのは、大切な想像力なんですけどね。ただ、まだ何も起こっていないことについて「これをやったら皆にこう思われるかもしれない、嫌われるかもしれない」と考えすぎちゃうと、自己否定ばかりが先行する。そうなると、思考も行動も負のループに落ちていっちゃうから。

だから、「素直に何でも言うこと」が大事なんだと思います。普通に考えていることを言ってくれたら、相手も普通の反応ができる。相手の気持ちとか反応とかを想像して、いろいろ気を遣った上で発言すると、相手もそのいろいろを汲んで返さないといけなくなるから、お互いどんどん正直じゃなくなっちゃうんです。

相手の考えていることや正直な気持ちを理解したいのなら、まずはこっちが先に正直に、普通に伝えること。「こう思うんですよね」「これが嫌なんですよね」って、忖度せずにただ言うことができると、相手との関係性そのものが、素直になっていくと思います。

西山:正直に「こう思う、これは嫌だ」って言えないこと、いろいろ心当たるなあ。そういうときって「自分が正直に何か言うことで、相手の迷惑になったり、傷つけたりしてしまうかもしれない」と思っている人は、多そうだなと感じます。

桜林さん:私もそう思う。今までいろんな人たちの話を聞いてきた上での所感でしかないけど、「自分なんて大したことない」って自己肯定感の低い人ほど、「自分の言葉が強く相手に影響すること」を前提に考えている傾向があるなと感じていて。「本音を言ったら嫌われる、傷つける」って思い込みもそうですよね。

西山:ああ、たしかにそうかもしれません。

桜林さん:私も自己肯定感は低いほうなんだけど、だからこそ正直にものを言えている部分はあるんです。「別に私が何を言ったところで影響なんてないだろうし、相手も何かあったら言ってくれるだろう」って思っているから。

もちろん「嫌われてもいい」なんて思っていないけど、嫌うかどうかは相手が決めることで、そこを気にしすぎてもしょうがない。だから、「嫌われるかもしれない」って理由で、自分が言いたいことをガマンすることは、しないようにしているんです。

西山:嫌われないためにガマンして、それで結局コミュニケーションが噛み合わなくなって嫌われたり、そういう自分のこと自体が嫌いになったりしたら、本末転倒ですもんね。

桜林さん:そうなんですよね。正直にものを伝えた結果、ケンカになったり、離れてしまったりする人もいるかもしれない。でも、それはガマンし続ける関係性になってしまうよりも、お互いにとってずっと健全だと思います。

正直に話していないことって、相手にも大体伝わっているんですよね。たとえそれが相手のためを思っての行為だとしても、相手には「ああ、何か隠してるな」「心を開いてもらえていないな」って受け取られて、距離が空いてしまう。いろいろ踏まえても、やっぱり「いつでも素直に話すこと」が一番だと感じます、私は。

欲のフタを見つけるための、4つのチェックリスト

【写真】穏やかな表情の桜林さんに陽の光が差している

西山:桜林さんも言ってくれていたように「自分の過去と向き合いながら、欲を抑えつけているフタを取っていく」というのが、今日のお話の最も大きなポイントだなと感じています。

ただ、今まで向き合うことを避けていた自分の欲や、そこに被さっているフタの存在に気付いていくことって、何か取っかかりがないと、慣れていない人にとっては難しいことなのかな……とも思います。フタに気付いて、それをはがしていくためのコツって、何かあったりしますか。

桜林さん:フタを見つけるための方法として、手軽で簡単なのは「自分の欲、やりたいことを書き出してみること」だと思ってます。それで、最近そのためのチェックリストをつくってみたんですよね。

西山:チェックリスト?

桜林さん:そうそう。といっても、「欲」「性格と性質」「できること」「時間とお金」の4つの項目に分けて、可能な限りたくさん書き出してみるっていう、ホントにシンプルなものなんだけど。

参考画像(soar編集部作成)

参考画像(soar編集部作成)

西山:それぞれの項目について、詳しく聞かせてもらえますか。

桜林さん:1つ目の「欲」は、制限なく無責任に「やりたいこと」「自分がよろこぶこと」を書く欄です。さっきも話したけど「誰かに会いたい、どこかに行きたい」とか、そういう日々の些細なことも対象にします。

2つ目の「性格と性質」は、自分が把握している自分の特徴を書いてみる。せっかちとか、おせっかいとか、満員電車は無理とか、しょうもないものや後ろ向きなものも全部合わせて。

3つ目の「できること」は、得意じゃなくても、特別なことじゃなくてもいいから、思いついたものを何でも書いてみる。むしろ「靴ひもを結べる」くらいのレベルから、「こんなのみんなできて当然でしょ」というものでもOKで。書き終えたら、それを「できるけど嫌なこと」と「できるし別にやってもいいこと」に分けられると、より整理できますね。

4つ目の「 時間とお金」は、まず現状の生活で「何にどれくらいの時間とお金を使っているのか」を書き出してみる。それから、「本当は何にどれくらいの時間とお金を使いたいのか」も、合わせて書いてみると。

西山:なるほど。

桜林さん:この4つの項目が、お互いに関係し合ってくるんです。「やりたいことを書いて」と頼んでまったく書けない人でも、ほかの項目については書けたりして、そこから「あ、自分ってこういうことは嫌なんだ」と気付けたりする。その嫌なことを避けられるようになると、気持ちに余裕ができて「やりたいこと」が少しずつ書けるようになったりするので。

西山:4つの項目のバランスがとてもいいなと思いました。このリストを埋めていけると「この仕事って“できるし別にやっていいこと”だけど、性格には合わないし時間もすごく取られてるんだ」とか、「今はお金不足が深刻だから、あまり気乗りしないけど短期で稼げる“できるけど嫌なこと”をやるのもアリかな」などと、現状を俯瞰した上で行動の選択ができるようになりますね。

桜林さん:そうそう、そこが結構オススメなんですよ。「時間があったらしたいこと」「お金があったらしたいこと」とか、「この性質があるからできること」「できるけどやりたくないこと」など、4つの要素がつながって循環して見えてくるところが。

私自身が独立するときは、「時間とお金」を最優先に、そのなかで「できること」「性格と性質」をかけ合わせて、クッキー屋さんの開業を選びました。その結果、能力や適性は合ったからうまくいったし、時間とお金を確保するという目的も達成できました。

けれども、1つ目の「欲」をガン無視してたから、正直に言うと、やっていて「すごく楽しい!」というわけでははなくて(笑)。これも、最近やっと自分で過去を振り返るなかで、整理がついたことなんですけどね。やってるときは必死で、「楽しいとか、やりたいかどうかなんて言ってらんない!」って思ってたから。

西山:子育てのこともあって「時間とお金」の優先度が高かったから、きっと当時は自分の「欲」を差し置いてでも、できることに注力する必要があったと。

桜林さん:時にはどこかの要素を最優先にする必要もあるから、4つのどれかを無視することが丸ごとダメってわけではない。ただ、やっぱりどれかを無視して続けると、いつかしんどくなってくるから、なるべく4つをトータルで満たせる状態を目指すのがいいと思います。

まずは書いてみよう、書けない自分とも向き合おう

【写真】笑い合うライターの西山と桜林さん

西山:このチェックリストは、継続的に書き続けられるとよさそうですね。最初はうまく書けなくても、「4つの項目で考えればいいんだ」ってことが頭に定着してくると、だんだん書けることが増えていきそうです。

桜林さん:1回書き込んで終わりじゃなくて、日々このリストと向き合って、自分の変化を感じてもらえたらうれしいですね。その視点自体が習慣になってくると、日常での気づきも増えてくるはず。「これってもしかしたら自分の性質かな」「あ、やりたいこと見つけた!」とかね。チェックリストとの向き合いを通して、きっと世界を見る視野が広がる気がする。

そして、書けることが増えた時には、「なんで今までこれは書けなかったんだろう?」と考えてみてほしいんです。するとそこから、自分の思い込みやフタの正体も見えてくるから。正体がわかれば、具体的にどうしたら不安がなくなるか、解消の糸口が少しずつ掴めてくるはず。

西山:これ、自分でチェックリストの専用ノートをつくって、時間を決めて毎日書いてみるといいかもしれませんね。

桜林さん:そうですね。専用ノート、わたし作ろうかな。「叶え組ノート」とかタイトル付けたら売れるかな?

西山:それ、出たら買います!(笑)

桜林さん:ありがとう(笑)。でもね、今こんな風に「4つの項目で考えな!」とか偉そうに言えてるけど、これは私が何年もかけて試行錯誤しながらぐるぐる思考して、やっと見えてきたことなんですよ。昔の私がこのやり方を知ってたら、もっと楽できただろうなって。だから、みんなはこれを使って、どんどんショートカットしてほしいなと願ってます。

チェックリスト、最初は書けないところも多いと思う。「欲」の項目とかは、今までそこにフタをしてきた人たちは、とくに出てこないはず。でも、書こうとして「書けない」って気付くことが、とても大切だから。

……どんなに些細なことでもいいから「やりたいこと」を書き出してみると、何かが引っかかって書けないことに気がつく。恥だったり、いつかの誰かの評価や言葉がジャマをする。それは、書いてみて手が止まって初めて気がつく。

(『世界は夢組と叶え組でできている』p87)

桜林さん:みんな、意外と自分のことを知らないんです。むしろ、自分のことほど、わかってないことが多いかもしれない。普段わざわざ「自分について考えよう!」なんて習慣を持っている人って、きっと少ないでしょう。

だからこそ、具体的に自分と向き合う時間をつくることが重要だと思うんです。ただ「はい、自分と向き合って!」と急に言われても、何をしたらいいかわからないですよね。嫌な部分ばかり見つめてしまったりもするし。でも、その向き合いのきっかけに、こういうチェックリストがあって「とりあえず書けばいいんだ」って具体の行動がはっきりしていると、やりやすいんじゃないかな。

西山:思っているだけじゃ、人はなかなか変わらないから、具体の行動を小さく変えていくと。その意識、めちゃくちゃ大事だなあ。それに「このリストを書いてみて」だったら、誰でも今すぐにできますね。

桜林さん:そう、ペンとノートがあれば誰でもできる。この記事を読んだ人には、まず「ノートを買う」ところから、ぜひ始めてみてください。人間って、急に大きく変われないものだから、まずは小さく小さく、行動を変えていきましょう。

西山:いきなり大きな壁をよじ登ろうとするんじゃなくて、登れるサイズまで小さくした階段を、一段一段しっかりと上がっていけるといいんですよね。「ノートを買う」「一日一個以上書き込む」とか、それくらい簡単なことでもいいから。

桜林さん:ホントそう思います。みんな、最初は平地からのゼロスタートなんですよね。すごい人、目立っている人を見て、焦ってもしょうがない。もしそこに近づきたかったら、少しずつステップアップしていくしかない。その人たちも同じように、ゼロから上がっていったんだから。

そして、上がるペースも人によって違うから、他人と比較してもしょうがない。地道に自分と向き合う時間をつくって、自分が自分を幸せにしてあげられるように、少しずつ行動を変えていけたらいいですよね。

西山:桜林さん、今日は本当にたくさんお話を聞かせてくれて、ありがとうございました!

服や靴を選ぶように、自分の考え方はいつだって変えられる

ここまで読んでもらえた皆さんに、この取材を終えてからの出来事として、ぜひ合わせてお伝えしたいことがあります。

2020年6月、桜林さんは自身の経営する「SAC about cookies」の店舗を、閉じる決断をされました。その経緯について打ち明けるnoteには、「コロナによる経済的な打撃は確かにあったけど、それが閉店の直接的な原因ではない」「生活するための手段としてはじめたお店と、自分自身の間には、大きな距離があるとわかった」と綴られています。

こうした気付きを得て、「元に戻ること=店舗を続けること」が自分にとっても、スタッフさんやお客さんたちとっても、正解ではないと思い至った桜林さん。ただ、「SACのブランドや商品(クッキー)はわたしも大好きで、よろんでくれるお客さんがたくさんいる」から、「元に戻るのではなく、あたらしいやり方でお届けできれば」とも語られていました。

自分の本心と向き合って、9年間も続けてきたできること、うまくいっていることを、手放すという決断。それは、誰もが簡単にできることではないと思います。取材の中で桜林さんは「40代の私が変われたら、それは20代、30代の人たちの希望になるでしょう?」と話していました。彼女が経験則からシェアしてくれる率直な言葉や考え方は、たしかに希望だなと感じます。

…みんながそれぞれ好きな服を着るように、お気に入りの靴を履くように、好きな考え方を選ぶお手伝いができるとうれしい。お気に入りの考え方を採用するのは、誰でも、タダで、今すぐにできる。失敗してもなんどもとり替えていいし、そのやり方があったかとどんどん新しく足していけるし、いいよね。

(『世界は夢組と叶え組でできている』p155)

皆さんはここまでこの記事を読んで、「いいなあ」と思う考え方、何かあったでしょうか。ひとつでも見つかったら、ぜひそれを眺めるだけでなく、好きな服を着るように、身につけてみてほしいのです。

その身に着け方のヒントも、今回は語られていました。私もありがたく、桜林さんにもらった考え方のいくつかを、お気に入りのTシャツのように、デイリーで愛用させてもらっています。

明日のあなたは、どんな考え方を選んで過ごしますか?

迷ったとき、困ったとき、何か変えたいとき、立ち止まって落ち着きたいとき、いつでもここに戻ってきてください。 そんな安心できる休息所、次に向かうために息を整える場所として、この記事のことを覚えていてくれたら、思い出してくれたら、とても嬉しいです。

【写真】笑顔でこちらを見ているライターの西山と桜林さん

関連情報:
桜林直子さん note Twitter 

(編集/工藤瑞穂、写真/中里虎鉄、企画・進行/松本綾香、協力/三谷奈津子,一本麻衣)