【写真】笑顔でこちらを見ているもりやまさん

10代の子どもたちのなかには、身近に悩みや問題を相談できる人がいない子がたくさんいる。

そんな現状があることを聞いて、私はとても驚きました。

私が10代の頃は、スマホはもちろんインターネットもまだ一般的ではありませんでした。親や友達との関係も、きっと今よりずっとシンプルだったはずです。

でも今は誰もがスマホを持ち、SNSなどを通じて新しいコミュニティもたくさん生まれています。こんなにコミュニケーションツールが発達しているのに、相談できる人が身近にいない子どもが多い。それはどうしてなんだろう。

もし、私が10代の頃に悩みを抱えたまま誰にも相談できなかったとしたら。たとえ些細な悩みだったとしても、どんどん大きな渦になって太刀打ちできなくなっていたかもしれません。

そんなことを考えていたときに、現代の子どもたちの「身近に悩みを相談できる人がいない」という問題を、インターネットで解決する取り組みがあることを知りました。それが10代の子どもたち向けwebサイト「Mex(ミークス)」です。

Mexは、子どもたちにさまざまな情報を提供するほか、必要があれば子どもと支援団体を結びつける役割も担うwebサイト。運営しているのは、森山誉恵(もりやまたかえ)さんが代表理事を務める「特定非営利活動法人3keys」です。

今回は、森山さんご自身がこの事業をはじめたきっかけ、またMexを通じて見えてきた10代の子どもたちが抱える悩みや、それらに対するwebサイト上でのサポート方法。そして、私たち大人は子どもたちに何ができるのかを伺いました。

異文化を体感した子ども時代。大学生でボランティアサークル「3keys」を立ち上げ

【写真】自分のことを話すもりやまさん

3keysの創業者である森山さんは日本で生まれ、親の仕事の都合で3歳の頃に韓国へ。幼稚園から小学校、中学校にあがり、14歳になるまでを韓国で過ごしました。

当時の韓国は軍事政権から民主主義に移行していた時期。歴史的な背景から日本にネガティブなイメージを持っていた人も多く、日本人というだけでいじめの対象になったこともあったそうです。

そして、日本に帰国してからは韓国と日本の文化の違いに戸惑ったこともありました。その後、高校時代にはアメリカ留学を経験。3つの国の違いを肌で感じながら育ったのです。

ある場所でのあたり前が、別の場所ではタブーになることがあると身を持って知りました。だから「あたり前」を疑うようになったのかもしれません。子ども時代、学生時代の海外での経験があったからこそ、物事を素通りせずに「これは課題だ」と考え、解決する方法はないかと探すようになった気がします。

そんな森山さんが3keysを立ち上げたのは大学生のときでした。ビジネスサークルなど、さまざまな経験を経て教育や福祉に興味を持った森山さんは、自宅近くの児童養護施設で学習支援のボランティアを開始。実際の福祉の現場を肌で感じたいという思いがありました。

びっくりしたのが学習支援に来てすぐに寝始める子や、自傷行為の痕が腕にくっきりと残っている子がいたことです。これまで整った学習環境を与えられていなかった子どもたちは、ボランティアが突然きて「勉強しよう」と言っても、「今更何を」という感じでした。「どうせできないし」という言葉も何度も言われましたね。

虐待や家庭の問題が子どもたちの教育にも大きな影響を及ぼすことを感じました。子どもたちが困ったときにもっと早くからサポートと結びつけたい、勉強が嫌になる前に楽しさを伝えたいと考えたんです。自分一人、しかも週一回のボランティアではできることにも限りがあると感じて、2009年に大学生の仲間を募ってボランティア学生サークル「3keys」を設立しました。

【写真】スリーキーズのロゴマークの下には、「きっかけ・きづき・きぼう」と書かれている

児童養護施設がさまざまな問題を抱えていると実感したことで、もっと手伝えることはないかと考え始めた森山さん。児童養護施設内で担いきれない学習支援を受託することから3keysはスタートしました。

この子がもうちょっと早い段階で支援に結びついていれば。

児童養護施設の子どもたちへの学習支援を行うなかで、そう思うことも多かったといいます。

子どもたちが苦しいと感じたときに一番身近な存在であるはずの親に頼れない場合や、ほかの頼り先がどこにもない場合、その傷はさらに深くなってしまいます。時間が経ってから支援にたどり着けたとしても、心の回復に時間がかかったり、支援者側も対応に難しさを感じるいう現実もありました。

学習支援事業に取り組むなかであぶりだされた、必要な子どもたちに必要な支援が届きにくいという課題を少しでも解決しようと、3keysでは新たな事業を開始しました。それが、10代のための相談窓口まとめサイト「Mex(ミークス)」です。

必要としている子どもたちに必要な情報を届けるために立ち上げたwebサイト「Mex」

Mexは2016年に、まずは東京版としてオープンしました。1年間のサイト訪問者数は5万人以上。その後2017年には全国版に拡大し、2019年度のサイト訪問者数はおよそ100万人と、より多くの子どもたちがサイトに訪れるようになりました

Mexを立ち上げたときには、これまで対面での学習支援事業が活動のメインだったため、周囲から「学習支援事業からインターネット事業!?」と驚かれることも多かったといいます。でも、3keysがMexを始めた理由は学習支援事業の延長線上にありました。

実際に児童養護施設の子どもたちと接するなかで「大人よりもインターネットを信頼している」と感じることが多かったのです。総務省の調査でも、何かを調べる手段として「インターネットを活用する」という回答がどの年代でも多数を占めています。

一人一台スマホを持つようになった今、「誰かに聞くよりもスマホで検索する」のは子ども、大人にかかわらず時代の流れなのかもしれません。

子どもの相談を受け付けているNPOや支援機関がたくさんあるのに、児童養護施設に来た子からそういった支援機関を利用したことがあるという声を聞いたことがなかったのです。

子どもは「名前を言わなきゃ相談できない」とか、「相談すると親に連絡に行く」などと誤解をしていることがあるんですよね。必ずしもそうではないのに、そういった誤解でなかなか支援に結びつかないのは問題だなと思いました。

支援を必要としている子どもたちは、大人に対して良い印象を持っていないことが多く、「インターネットを介したほうが悩みを抱える子どもたちに届きやすい」と森山さんは考えたのです。

学習支援は、児童養護施設に入所している子どもたちに向けての事業でした。でも本当なら施設にいてもおかしくない状況で暮らしている子や、今まさに助けが必要な子は、近くに頼れる人がいないことが多いです。

頼れる人がいない子どもたちと支援をつなげるには、webサイトで情報を届けることが唯一の手段だと思いました。きちんと支援が必要な子どもたちに届かなければ、私たち大人の自己満足になってしまいます。そういう議論を重ねて誕生したのがMexなんです。

人には言えない「困ったかも」を手助け

Mexを開き、「サイトについて」をクリックするとまずこんな言葉が出てきます。

Mex(ミークス)とは、家族や友達・からだ・勉強など、人には言えない「困ったかも」を手助けする10代のためのwebサイトです。

そして、その下には「子どもの権利条約」の記載があります。子どもの権利条約とは、18歳未満の子どもの権利を定める国際条約です。

「生きる権利」「守られる権利」「育つ権利」「参加する権利」の4つは世界中のすべての子どもたちが持っている権利。Mexでは、この権利を少しやさしく説明しています。

そもそも「このサイトについて」なんてページを見る子どもは稀だと思います。でも、「子どもの権利条約」については、子どもたち全員に知ってほしいことなので、サイトにどうしても載せたかったんです。「あなたたちより、大人の方に改善しなければいけないことが多いのだから、自分を責めずに相談してね」ということを伝えたい。

そのために一番根拠がある「子どもの権利条約」を記載してあるんです。今後は動画を制作して、より多くの子どもたちに自分が持っている権利について伝えていきたいと思っています。

【写真】ライターと向かい合って話をするもりやまさん

探す・読む・見るなど、さまざまな使い方ができるwebサイト

ここからは、Mexのサイトをご紹介していきます。

Mexは、大きく3つ、「相談先を探す」「よみもの」「動画」で構成されたwebサイトです。

自分に合った相談先を探すことができるのが「相談先を探す」。自分の悩みに当てはまる項目と「電話したい」「メールしたい」「来てほしい」などのこだわりをチェックし、最後に居住している都道府県を選ぶだけで、条件に合った支援団体やその連絡先などを知ることができるのです。1年間で1万人ほどの子どもたちがMexを通じて、支援団体と繋がっています。

「よみもの」と「動画」も、基本的にシステムは「相談先を探す」と同じ。自分の悩みを選択することで、それらを解決したり、寄り添うようなよみものや動画にたどり着くことができるのです。よみものは、家庭や学校、友達や恋人、そして性のことなどの悩みを解決するだけではなく、コンビニで売っているものだけで作ることができる料理のレシピなど、多岐にわたる情報を掲載しています。

たとえば、「親に相談したくない・・私は変ですか?」というよみものは、親だからこそ相談できないケースがあること、成長するにつれて親と距離ができるのは自然なことなどを伝えています。

また、よみものの中には、精神科のお医者さんが書いた記事も。「『死にたい』『気分が憂鬱』病院に行った方がいい?」や「リストカット・自傷行為が止まらない。病院に行った方がいい?」などがその一例です。真摯になってくれる精神科の医師と子どもをつなぐにはその人数に制限がありますが、記事にすることで多くの子どもたちに医師の思いを届けることができるのです。

子どもの視点に立って、子どもが使いやすいように。さまざまな工夫はリアルな10代との触れ合いがあるからこそ

【写真】インタビューに応えるもりやまさん

Mexを閲覧してみると、10代の子どもに合わせたさまざまな工夫がされていることがよく分かります。たとえば、「相談先を探す」で必要な動作は、クリックだけ。「よみもの」や「動画」も簡潔にまとめられていて、短い時間で情報が得られるものばかりです。

YouTubeやインスタライブなどをはじめとして、いろいろなコンテンツがどんどん動画になっていますよね。特に10代はあらゆる情報を動画から得るのが日常的になっています。

また学習支援をするなかで、虐待などの問題を抱える家庭で育った子どもたちは、絵本を読んでもらったり、文章に触れた経験があまりなく、高学年になっても長文が読めないケースが少なくないと気付きました。

どんな家庭で育った子どもたちにも必ず知ってほしい情報は、動画で届けるようにしています。そういった背景から「よみもの」もできるだけわかりやすくしています。

動画は、アナリティクスなどで分析すると1分以内の動画が見られやすいという結果がでているそう。すべての子どもたちが見やすいものにすべく50秒くらいを目安に作成しています。

また、動画には出てくる登場人物を動物のキャラクターにしているのは、どんな年齢・性別の子どもでも「自分は関係ない」と思わないような工夫です。虐待やいじめなど自身の体験がフラッシュバックしてしまうケースもあるので、人間にはせず動物のキャラクターにすることで、自分の経験と動画の内容を重ねすぎないような配慮もしています。

また、サイトの目立つところ(PCだと右横、スマホだと最上部)には、ONにするとすべての漢字にふりがながつく「ふりがな機能」も。これは最初からふりがなをつけておくと「バカにされている」や「読みづらい」と離れてしまう子どもが多い半面、どうしても必要な子どもがいる状況の両方に配慮して作られた機能なのだそう。

またサイトを閲覧しているだけでは分からない工夫もあります。

その1つが「裏タグ」の存在です。裏タグとは、記事の中に文章として入っていなくても、検索で記事がヒットするように記事の“裏”に仕込まれたタグのこと。たとえば、性の悩みに関する記事の裏タグを「中出し」としておくことで、記事としては書きづらい言葉で検索をする子どもたちが、Mexの記事にたどり着けるようになるのです。

裏タグについては、実際に学習支援の事業で、生身の10代と触れ合ってきたからこそ思いついたことです。実際に裏タグは学習支援を受けている子が考えてくれることもあります。

そして「気持ちを吐き出す」という機能は、ただ子どもたちが自分の思いを吐露するためのもの。どこかに掲載されたり、他人に閲覧されたりすることはありません。

「気持ちを吐き出す」に寄せられた声に対しては、私たちから働きかけをすることもありません。けれど、そういった声から「よみもの」や「動画」を作成することはあります。

SNSを吐き出す用途で使っている子どもたちもいるとは思うのですが、匿名であっても誰かの目に触れる可能性を心配する子もいるのではないでしょうか。誰の目にも触れないことに子どもたちがプラスな意味を見出してくれているのかなと感じます。

Mexに散りばめられたさまざまな工夫は、森山さんがリアルな10代と触れ合う学習支援事業を並行しているからこそできたこと。そこでの感覚を活かしながらサイトの管理を行っているのです。

高いハードルを設けたのは、子どもたちが支援先につながった後のことまで考えているから

【写真】こちらをみて微笑むもりやまさん

取材時(2020年2月)にMexに掲載されていた支援先は、全国でおよそ200窓口。東京版として運営していた頃は60窓口だったので、数は3倍以上に増えているものの、まだ十分ではないと森山さんは話します。

子どもたちはどんどんサイトに来てくれているのですが、それに比べて対応できる支援機関が少ないのがMexの抱えるひとつの課題です。実はMexに情報を載せることに関して、私たちはあえてハードルを高く設定しています。

Mexに支援機関の情報を掲載するためには、さまざまな情報を提出するなど、手間も時間もかかる申請をしなければいけません。忙しい支援機関の方は時間を割くことが難しいことも多いです。結果的にMexに掲載できる支援機関が少なくなってしまいますが、多くの子どもからMexを通じて相談が来る可能性があるので、対応できる余裕のある支援機関を掲載することにこだわっています。

子どもたちからたくさんの相談が舞い込んできたときに、支援機関がきちんと対応することが一番重要なこと。森山さんは、子どもたちが支援機関につながったさらにその先まで考えているのです。

支援機関の皆さんと信頼関係を築くために、まずはMexや運営する3keysについて知ってもらう必要があると感じています。「IT企業がやっているサービスなんでしょ?」とか「掲載してもらったら費用が発生するんでしょ?」などと勘違いされることも多いので、地方でのセミナー開催も始めました。さまざまな工夫をしながら、少しずつMexに掲載できる支援機関を増やしていきたいと思います。

「死にたい」「家にいたくない」、苦しむ10代の子どもたち

子どもたちがサイトにたどり着いたときの検索ワード、よく読まれている記事、「吐き出したい」で子どもが吐き出す多くの言葉…。Mexは、現代の10代の子どもたちが抱える悩みや問題をあぶりだしています。

若者のつながりや人間関係を研究している筑波大学の土井隆義先生が行ったアンケートで、親と友達のどちらを頼りやすいかについて、今の10代の多くが親と回答したそうなんです。

私が子どもだった頃は「相談する相手や頼り先は友達や先輩」という風潮だったので、その統計にびっくりしました。そんな背景がある今、家庭に居場所がない子は、より苦しい思いを強いられているのではないかと思います。

またSNSなどで簡単に自分と友達を比べられてしまう環境があることも、子どもたちの悩みを大きくしているのではないかと森山さんは推測します。

【写真】真剣な表情で話をするもりやまさん

Mexにたどり着く子どもたちの多くが、キーワード検索によるもの。検索から読まれている記事のなかで一番多いのが、性の悩みに関するよみものなのだそう。また、そのほかに多く読まれているのが「死にたい」や「自殺したい」「家にいたくない」などに関連する記事だといいます。

Mexを利用してくれている子どもには2タイプいるのではないかなと考えています。親とは健全な関係だけれど、恋愛や性・セクシュアリティなど一部のテーマについては相談できない子、もう1パターンがテーマに関わらず相談できる相手がいない子です。

「気持ちを吐き出す」のスペースにも、「死にたい」と書く子がとても多いのだそう。ただ、子どもたちは自分の経験や感情を認識して言語化することが難しいだけで、その「死にたい」気持ちは本来、もっと細分化できるはずだと森山さんは考えています。

だからこそ、よみものとして「虐待されている親から逃げるために死にたい」「いじめが苦しくて死にたい」「繰り返される暴力が辛くて死にたい」などの子どもたちの感情を代弁するような選択肢を用意しました。「よみもの」は、自分の状況が辛いものなんだと、子どもたちが客観的に理解する手助けにもなっているのです。

Mexへとある子どもから「記事を読んでいたら、自分は心理的虐待を受けていると知りました」というメッセージが寄せられたことがあるんです。おそらくその子は自分がひかれる記事を読む過程で自分の環境を客観視でき、それまで知らなかった情報を得たことで、自身が心理的虐待を受けていることに気づいたのではないかと思います。“気づくこと”は、自分を責めないことや助けを求めることにもつながる、とても大切な一歩なんです。

記事を読んだり動画を見ることで、自分の状況を理解し、虐待やいじめから逃れたいと思ったときには、支援先や相談先を探すこともできるMex。自分を助けてくれる支援団体があるということを、子どもたちにもっと知ってほしいと森山さんは話します。

また、「生活保護世帯で病院に行くには?」や「保険証を使うと病院に行ったことが親にばれる?」などの国や行政が提供する制度利用についての記事も閲覧数が多いそう。置かれた状況によって違うさまざまな悩みの解決法を、多様な切り口で子どもたちに伝えることをMexでは大切にしています。

ある意味現代は豊かで、環境が整っていて、完成されているように感じられますよね。だからこそ、自分が持っていないものや不足しているものに目がいきがちなのだと思います。自分の存在が肯定されていると実感できる場が子どもたちにとって少なくなっている気がするんです。Mexは、そんな彼らにとって「今の自分を助けてくれる人がいる」と思えるような、自分を肯定できる場所でありたいと思っています。

子どもと大人の間にある深い溝を解消するために

【写真】考えながら質問に応えるもりやまさん

さまざまな悩みを抱える子どもたちがより良く生きるために、サポートする大人側がこれから取り組んでいかなければいけない課題もあります。

公的支援の多くは、その地域に住んでいる人のみを対象にしていることが多いです。子どもたちが相談しようと支援先を見つけたとしても、自分の住んでいる都道府県の機関でないために相談できないこともあります。

Mexではそれを解消すべく、自分の住まいを選択して、そこで利用できるものだけを表示できるようにしているんです。でも、都心部にいいサービスが多くて、本当は全国の子どもたちが同じように使えるようになって欲しいな…とか、地域間格差が大きいな…と感じることがたびたびあります。

子どもたちがより相談しやすく、スムーズに支援を受られるようになるには、支援をする大人側が変化を受け入れる必要があります。

たとえば、10代の子どもの連絡手段はLINEが主ですが、相談をLINEで受け付けている支援機関や相談機関はまだほとんどありません。

これからLINEでの相談を受け付ける支援機関が増えてきたら、Mexの「相談先を探す」にも、絞り込み機能に「LINEで相談する」を入れたいと思っています。

相談できる時間帯についても、同じことが言えます。子どもたちが「相談したい」「今なら相談できる」と思うのは21時から0時頃。でも、その時間に相談を受け付けている機関はごくわずか。

親を信頼できずに相談できない子が、LINEで気持ちを吐き出したい思ったり、自分の部屋で一人になった夜の時間帯に相談したいと思う気持ちはよく分かります。

もちろん、深夜でも電話相談の受付が可能な体制を整えるのは、難しい側面もあるでしょう。でも助けを求める子どもたちのために、電話や対面の対応が難しかったとしても、メールやLINEで受付だけでも行うことができるかもしれません。

子どもと大人の乖離を解消するために、森山さんは支援機関や行政にさまざまな働きかけをしながら、協力体制を作っているところです。

どんな環境に生まれても、子どもが不幸だったと思わない社会をつくりたい

【写真】笑顔でこちらを見ているもりやまさん

Mexがオープンしてから間もなく4年。森山さんは今後のMexの展望をこんなふうに語ります。

現段階でMexに訪れて支援機関への相談につながっているのは1~5%です。それをポジティブにとらえるか、ネガティブにとらえるかは難しいところ。よみものや動画で解決している子がいるのも事実なんです。

今は全員をつないだら支援機関もパンクしてしまう現状もあります。支援機関の環境をよくしていくために働きかけつつ、今全国にいる10代の子どもたち1000万人が何かを悩んだときに頼れるような存在にMexを育てていくのが今の目標です。

3keysを立ち上げた森山さんの根底には「どんな環境に生まれても、子どもがそれによって不幸だったと思わない社会をつくりたい」という思いがあります。

今の日本には、親や先生は完璧でなければいけない風潮があるような気がします。しかし、どんな大人でも常に完璧でいることはできません。それに開き直って、子どもを傷つけるのはもちろん許されませんが、親や先生が完璧でない前提で社会の仕組みを作らなくてはいけないと思います。

今は、親や先生が完璧な前提なので、そこに頼れない子どもは何も得られないという格差が生じているのです。

そのためにも、子どもが親以外に頼れる相談機関や支援機関などと繋がれるのインフラ整備をMexを通してやっていきたいと森山さんは考えています。

しなければいけないのは、大人としての責任を果たすこと

【写真】インタビューに応えるもりやまさん

私たち大人には課されている責任があると思っています。それは、子どもたちが困ったときの頼り先に一人ひとりがなることではないでしょうか。そのためには、私たち一人ひとりが子どもたちとの向き合い方を勉強すること。

そして、子どもたちには「困ったときには頼っていいんだよ」と伝え続けることが必要だと思います。

子どもたちのあたり前と、私たちのあたり前は全然違う。その分距離があるし、特に傷ついている子どもたちは「助けて」と声を上げる気力もないこともあります。だから大人が子供の目線に合わせて、寄り添っていく必要があると思うんです。

森山さんのお話のなかで印象に残ったのが、私たち大人一人ひとりに責任があるということ。

これまで私が“10代の子どもたちのなかには、身近に悩みや問題を相談できる人がいない子がたくさんいる”ことを知らなかったのは、10代の子どもたちに対して無関心だったからだと思うのです。それは大人としての責任を放棄していたことなのかもしれません。

私たちは、親や環境、まわりの大人たちのせいで苦しい思いをしている子どもたちの存在を心のどこかに留めておく必要があるのではないでしょうか。

親でも、友達でも、身近にいる大人でも、支援先の誰かでも、すべての子どもたちに頼り先がある社会になることを願ってやみません。

そんな社会を実現するために奮闘する森山さんを、私はこれからも応援していきたいです。そして、子どもとの関わり方を少しずつ勉強していきたいと思います。それが、大人としての責任を果たすことにつながっていくはずだから。

【写真】笑顔でこちらを見ているライターのあきさだともりやまさん

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(編集/徳瑠里香、写真/川島彩水、企画進行/佐藤みちたけ・松本綾香、協力/高村由佳)