【写真】黄色と黒の二色でデザインされたCOGYの車椅子

「あきらめない人の車いす」

ふと開いたSNSで、このコピーと一緒に目に飛び込んできた車いすの動画を見て思わず、「素敵!!」と大興奮してしまいました。それは「COGY」という名の、世界初の足でこぐ車いす。

「動かなくなった足が、もう一度動くとしたら?」

鮮やかなイエローのボディに、自転車のようにペダルが付いたスタイリッシュなデザインの車いす。動画のなかでは、下半身麻痺やパーキンソン病などの理由で歩行が困難な人たちが、自らの足でペダルを漕いで車いすに乗っていました。

最初はおそるおそるCOGYに乗り、不安そうな顔をしていた人も、少しずつ足を動かし前に進めるようになっていきます。歩くことをあきらめていたかもしれないみなさんが笑顔で喜ぶ姿を見て、私も涙がこぼれそうなほど感動しました。

COGYとはいったいどんな車いすなのか、ぜひみなさんにご紹介したいと思います!

足でこいで動かすことができる車いす

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COGYは、2008年より展開されていた足こぎ車いす「Profhand(プロファンド)」の名前とブランドをよりわかりやすくリニューアルしたもの。東北大学大学院医学系研究科客員教授の半田康延博士のグループによって研究開発され、宮城県仙台市に本社を置く株式会社TESSが販売をしています。

COGYは、麻痺などの障害で歩行が困難な方でも、少しでも足を動かすことができるなら自分の両足でこげる可能性があります。しかもスピードは、早足で歩く程度まで出すことが可能。

では、なぜ足が動かない人でもこぐことができるのでしょうか。

通常、人が歩行するときは、脳からの信号が脊髄を介し足を動かしていますが、足が不自由な方は、脳からの指令がうまく足に伝わりません。それでもCOGYに乗った方の足が動くのは脳からの指令ではなく、「右足を動かしたあとは左足が動く」という反射的な指令が、脊髄の「原始的歩行中枢」からでていると考えられるのだそうです。

販売開始して以来、COGYは医療施設でのリハビリを中心に導入され、足を動かすことをあきらめていたたくさんの人々をエンパワーメントしてきた画期的な車いすなのです。

みんなが「乗ってみたい!」と思えるデザインを

【写真】笑顔で立っているすずきけんじさん

株式会社TESSの代表をつとめる鈴木堅之さんに、COGYへの思いを伺いました。鈴木さんは、実は会社を始める前は、もともと学校の先生をしていたそう。

鈴木:クラスに車椅子に乗っている子どもがいたのですが、お父さんお母さんは普通学級に通わせることができて嬉しい気持ちでいても、子どもにとってはみんなと一緒にできないことが多くてつらそうだったんです。運動会に出れなかったり、階段を駆け上ることができなかったり、みんなと遊ぶことがきなかったりして。それを見て、なんとかできないかとずっと思っていたんですよね。

そんな鈴木さんの転機となったのは、たまたまテレビで半田博士のグループが開発した足こぎ車椅子を見たことでした。

鈴木:足こぎ車椅子に乗ったおばあちゃんの顔がぱあっと明るくなるのを見ているうちに、これは素晴らしい!と思いはじめて、東北大学に連絡して見せていただきました。実物を見て感動して、「これをなんとかして世の中の人に広めたい!」と思い、そのために会社をつくったんです。

そして2006年に株式会社TESSを設立し、鈴木さんは足こぎ車椅子の改良を進めていきます。

鈴木:リハビリが目的で作られているので、どうしても機能重視で見た目には気を使われていませんでしたし、やっぱり福祉機器には一般的に地味なイメージがあると思うんですよ。だから他の人に乗っているところを見られたくないという人も多いと思います。だから、「すごい、乗ってみたい!」と周りの人が思うようなかっこいいデザインにするっていうのはすごく大事なのではないかと考えました。

改良を重ね軽量化し、色も気持ちが明るくなるようなイエローやレッドに変え、デザインもとてもスタイリッシュになったCOGY!先日公開された使用した方の喜びの声を伝える動画はSNS上で話題になり、なんと公開されてから145万回以上再生されています。

デザインにも機能性にも優れたCOGY

【写真】赤と黒のCOGYと黄色と黒のCOGY
「これは私もぜひ乗ってみたい!」と思い、実際にCOGYを試乗させていただきました!

COGYのカラーバリエーションは、黄色(SOLID YELLOW)と赤(ITALIAN RED)の2色。今回は動画でも使用されているイエローのCOGYの乗せてもらいました。

実物はとってもスタイリッシュでシンプルで、でも心が躍るようなかっこいいデザイン!まずは車いすに座り、ベルトでペダルに足を固定。ブレーキの付いたハンドルをにぎって、足を動かしこぎ始めます。

最初はコツがつかめずのろのろとしか走れませんでしたが、徐々に慣れて足を速く動かせるようになると、スーッとCOGYが進み始めました。

ハンドルを左右に動かすと角をまがれるし、ペダルをこぎながらハンドルを後ろにぐっと引くと、その場でくるくると回転できます!これで狭いスペースの中でも、簡単に方向転換をすることが可能です。

何よりも乗り心地がよく、とても楽しい!フットペダルが少し前にあるので、身を預けて安心してこぐことができるし、遊園地のアトラクションのような気分になりました。デザインも素晴らしいので、乗っているだけでテンションが上がります!

乗る人の可能性を広げる車いす

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これまで鈴木さんがたくさんの方にCOGYを届けていくなかで、こんな嬉しいエピソードもあったそうです。

鈴木:事故に遭われて奥さんが下半身不随になってしまったご夫婦がいるのですが、もともとフランスで出会って、定年退職されたらまた二人でフランスに行こうねと話されていたそうなんです。働きながら旦那さんがずっと介護をされてたんですが、奥様も家からほとんど出なくなってしまっていて、結局フランスにも行けてなかったようで。最初そのご夫婦のところにCOGYを持っていったときは、私は無理だからと言っていたんですが、こいで動かせるようになってからは奥様がだんだん外に出られるようになって、立って歩くこともできるようになったんです。

なんとCOGYに乗って山登りもされたんですよ!山頂で2人で撮ったお写真が送られてきたときはすごく嬉しかったですね。その後はCOGYと一緒にフランスの旅行にも行かれて、かつて二人が出会った下宿のまえで撮った写真も送ってくださって。COGYは行動範囲ややれることの可能性が広がる車いすだと改めて思いました。

COGYはもともとリハビリを目的に開発されましたが、現在では行動範囲を広げるために日常的に使用される人も増えているのだそう。末期のがん患者さんが、亡くなられるまでCOGYに乗って買い物に出かけていたというエピソードもあり、今ではホスピスや緩和ケア病棟にもCOGYが置かれるなど、用途の幅は広がっています。

個人差はありますが、足のリハビリに効果が表れて行動範囲が増える方もいらっしゃるので、そのぶん人とのコミュニケーションも増え、元気が出てくるという精神的な面の効果も現れてくるのだといいます。病気や障害がある場合、そのご家族も介護で疲れきってしまっていることもありますが、COGYが届くことによって、本人もその家庭も明るい空気になることも多いのだそうです。

COGYは身長が140cm以上であれば乗ることができますが、身長が足りない子どもにも使用できるよう、現在SサイズのCOGYも開発中なのだそう。

リニューアルに合わせて、VR(バーチャルリアリティ)を活用したリハビリ支援システム「COGY VRシステム」と、センサーを埋め込んだペダルと連動することによって、リハビリの状況をリアルタイム測定してくれる「COGY+」もリリースされ、どんどん可能性の幅を広げています。

あきらめない心を持ったひとたちのために

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移動する目的であれば、今使用する人も増えてきた電動車椅子でも大丈夫ですが、COGYは自分が本来持つ力をつかって動かすことができるのが特徴です。

鈴木:「自分で動かせる」というのがみなさんにとってはすごく嬉しいみたいなんです。「まだ自分の足を動かすことをあきらめなくていいんだ!」という気持ちになってくださいます。

ただ、必ず誰でもCOGYをこぐことが可能なわけではなく、もしかしたら人によっては難しい方もいるかもしれません。

でも、誰かに押してもらってCOGYに乗ると、自然にペダルが回転し、固定した足を自然に動かすことができます。これによって足の血流をよくすることもできるし、「足を動かす」という行為そのものがポジティブな影響を与えるのではないでしょうか。

「私が乗っても、動かせないかもしれない」という不安がある方も、乗ってみたい気持ちがあるとしたらぜひチャレンジしてほしいと鈴木さんはいいます。COGYは、試乗やレンタルも随時受け付けているそうなので、もしもチャレンジしてみたいという気持ちをお持ちの方は、一度試していただきたいです。

今後他大学とも連携し様々な技術を取り入れて、よりたくさんの方に乗ってもらえるものにしていきたいと鈴木さんは意気込んでらっしゃいました。

COGYはきっと、「あきらめない人の車いす」というコピーの通り、たくさんの「あきらめたくない」と願う人たちの力になってくれるはず。たくさんの方の元にCOGYが届き、気持ちが高揚する瞬間や笑顔をつくってくれることを、心から願います。

関連情報:
COGY 公式ホームページ

株式会社TESS ホームページ

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