__「成人式」

風が冷たく肌にかかる1月の第二月曜日。毎年20歳を迎えた新成人の多くは、門出を祝う式典へ参加します。

20歳を迎えることを「成人」と認識し、自分の中で「大人になること」について意識するようになった節目の日。

去年、成人式に出席したとき、大学生であることには変わりないけれど、1人の大人になったような不安と期待、気が引き締まるような感じがしました。

しかし、大人になるということは、20歳という年齢に達することなのでしょうか。気持ちの変化に伴い、大人の定義は人それぞれなのではないのでしょうか。

そんなことを考えているときに、「成人」の概念について新しい視点をくれるイベントに出会いました。今回ご紹介したいのは、「成りたい人になる(=成人)」ため、決意の一歩を踏み出すことを祝福するイベント「LGBT成人式」です!

ありのままの自分を誇り、成りたい自分への第一歩を踏み出す日

LGBT成人式は、「ありのままの自分」を誇り、「成りたい自分」への第一歩めを踏み出すためのイベントです。トークショーやワークショップを通して参加者が交流を行い、自分のありたい姿で式典に参加し、祝福されることを目的としています。

イベントの最大の魅力は、年齢・セクシュアリティなどに縛られず誰もが参加できること。「LGBT」という言葉がイベント名に付いているものの、LGBTの人でなくても参加ができます。また、参加者の年齢層も1歳〜80代までと、とても幅広いのです。

参加者は、みんな自分の好きな服装で式典に参加します。LGBT成人式には、「ありのままの自分」で出席し、門出を祝福される経験を持つことによって、自分自身を肯定的にとらえてほしい。そうして、「成りたい人になる」ことへの背中を押したいという思いが込められています。

LGBT成人式は、2011年から全国16地域で計51回開催されてきました。昨年、東京会場には約180名が参加しています。

LGBTの人もありのままの自分でオトナになれるようにと、3つのプロジェクトを展開する「ReBit」

LGBT成人式を主催するNPO法人ReBitは、「LGBTもありのままでオトナになれる社会へ」という未来を目指し、さまざまなプロジェクトを展開している団体です。「ReBit」という名前には、「少しずつ(Bit)」を「何度でも(Re)」繰り返し、社会を前進させたいという願いが込められています。団体のメンバーは約400名で、LGBTの人もそうでない人もいるそうです。

ReBitが展開しているプロジェクトは大きく3つあります。

教育機関で生徒/教職員向けに、LGBTの方による出張授業を行う「LGBT教育」。LGBTの子どもたちが抱えやすいとされる悩みをまとめた、多様な性について教えるための教材キット「LGBT教材」。

LGBTの学生や就活生に、LGBTやダイバーシティ施策に取り組む企業を知ってもらい、就職活動や働き方について意見交換ができるイベントを開催する「LGBT就活」。

そして、今回の「LGBT成人式」です。

すべてのプロジェクトは、「LGBTを含めた全ての子どもが、ありのままの自分でオトナになれる社会」を目指して行われています。

無理して来なくてもいい。けれど、あなたを待っている場所があることを知ってほしい

佐々木さん:大学1年生の冬、初めてLGBT成人式に参加しました。そこでの経験は心を揺さぶられるもので、気づいたら終始涙を流してしまっていたんです。

佐々木さんは、それまで自分がLGBTであるとカミングアウトをしたことがありませんでした。「言いたいけど一生言えない、言ってはいけないことなんだ。」と、家族にも話せず心に秘めていたのです。

3年前に、勇気を出して参加したLGBT成人式。これを機会に、佐々木さんには心の変化が生まれます。

佐々木さん:当時の緊張と感動は、昨日のことように覚えています。親にも内緒でたったひとり、真冬なのに汗をかきながら参加しました。

LGBT成人式に参加しても、親や友達にもカミングアウトはしていないけれど、自分自身のことをちゃんと考えたり認めれるようになりました。勇気を出して参加して良かったと、あのときの自分を褒めたいと思います。

佐々木さんにとっては、イベントへの参加そのものが、とても大きな第一歩。そして、一歩踏み出したその先には、どんな自分も受け入れてくれる温かい空間が広がっていたのです。

これがきっかけで佐々木さんは、「カミングアウトは全員に必ずしも必要なものではない。」と、周りの人やメディアに流されず、自分自身で決定していいことだと考えるようになったのだそうです。

もうひとりの共同代表である下坂さんも、同じようにLGBT成人式への参加が大きな転機となった経験から、多くの人にこの機会を知ってもらいたいと考えています。

下坂さん:参加者の方には、いろんな事情や心の葛藤があると思うので、無理をしてまでイベントに来てもらわなくたっていいんです。けれど、「行きたい」と思ったときに、あなたを待っている場所があるということは知っておいてほしいと思います。

かつてはひとりの参加者として、LGBT成人式で勇気をもらったスタッフたち。「自分が体感した温かさと感動を、生き方に悩んでいる人へ伝えたい。」

そんな思いを持って、イベントを運営しています。

出会えるのは、新たな人生を祝福しあえる仲間たち

LGBT成人式は、「式典の部」と「アフターパーティー」に分かれています。

式典の部では、新成人の辞と、3組のゲストによるトークショーが行われます。トークショーのテーマは「過去、現在、未来の自分について」。幼少期に得たセクシュアリティにおける気づきの話や、理想の自分の姿まで、多方面から自分と向き合う問いについて話します。その後のアフターパーティーでは、参加者同士の交流がメインです。

その他にも、好きな格好で参加できるようにと用意された着替え・撮影ブース、全国各地の開催地を巡る横断幕に寄せ書きができるコーナーもあります。

このイベントのなかで、近い年代のLGBT当事者と初めて交流することができたり、新成人の辞を堂々とした姿で話す登壇者の姿に感銘を受ける人も多いのだそう。参加者からは毎年、多くの喜びの声が届いています。

まずは自分から、ありのままの自分を愛せるように

LGBT成人式には、「ありのままの自分」に誇りを持ち、「自分の人生を歩んでいくこと」を決めた人たちを心から祝福する空気感が広がっています。

私はLGBT成人式に出会い、成人式とは単に大人になることではなく、自分のあり方に向き合う機会でもあるのだと知りました。

もちろん成人式に参加しなくても、大人になることはできます。でも、参加したことで互いの未来を明るく照らし合えるような人々や、知らなかった自分に出会うきっかけが生まれるかもしれません。

今年度のLGBT成人式の開催は、1月13日の土曜日。関心のある方は、ぜひ参加してみてください。

参考情報

2017年度LGBT成人式
日時:2018年1月13日(土曜日)15時00分〜19時40分(開場:14時15分)
   第一部:15時00分〜17時20分
   第二部:17時40分〜19時40分
場所:成城ホール(世田谷区砧区民会館)
最寄駅:成城学園前駅
参加条件:年齢・セクシュアリティ不問。どなたでもお越しください!
ドレスコード:服装自由!ドレスコードは「あなたのしたい格好」です。
参加費:2500円 25歳以未満2000円 (要申込)
    アフターパーティー参加の場合は、別途1000円。
申し込み:https://www.lgbtseijinshiki.org/

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