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soarの誓い

 特定非営利活動法人soar(以下、「soar」という)は、「誰もが自分の可能性を活かして生きる未来をつくる」というビジョンを掲げています。そのビジョンを実現するためには、まずはsoarとその周囲の環境自体が、関わるすべての人の人権(注1)が守られ、安全で対等なパートナーシップを築ける環境であることが必要です。

 そのためには、soarの活動に関わる人が、不合理な差別や偏見を受けることなく、生命や心身の安全が担保されていることは大前提であると考えます。そのうえで、個人の意志や考えを表明する自由があり、それを互いが尊重しあうことによって、それぞれの自己実現や幸福の追求に向けた不断の努力ができることを大切にしたいと考えています。

 そのためsoarでは、直接的・間接的であるかを問わず、相手の言動や自身の置かれた環境によって、安全が脅かされたり、個人の意志や存在そのものが尊重されず、人権が守られていないと感じる状況が生じることを人権の侵害と考え、これが起こらない環境を目指していきます。

(注1)soarでは「人権」を、「人間の固有の尊厳と平等に由来する権利」と定義したうえで、その歴史的背景と具体的内容の詳細に関する理解については、以下参照の整理に準ずるものとします。 参照:外務省 ホームページ「世界人権宣言と国際人権規約

 

パートナーシップポリシーとは

 このパートナーシップポリシー(以下、「本ポリシー」という)は、誰もが選択の内容や自覚の有無に関わらず誰かの権利を侵害する可能性があること、また、自身も権利を侵害される可能性があることを自覚したうえで、互いを尊重しあったコミュニケーションのもと、スタッフ及び関係者における、個々の権利と安全が守られる活動環境をつくるための責務を明確にすることを目的として策定されたものです。

 本ポリシーの運用を通じ、soarが、人権侵害を見過ごすことなく、それぞれの人権が尊重される適正な手続きのもと解決に取り組み、その後の再発防止に向き合う環境、関係づくりの構築を目指します。

 ただ、私たちが暮らすこの社会はもちろんのこと、soarの活動領域においても、人権に対する考え方や携えるべき知識は時代とともに絶えず変化していきます。

 だからこそsoarは、個人の尊厳が守られるとはどういう状態のことを指すか、そういった状態が維持されるための環境はどうすれば実現できるのかを、常に考え、対話し続けることで、私たちの価値観をアップデートし続けていきたいと考えています。

 また、本ポリシーが目指す、人権の尊重や安心安全が担保された環境における人との関わり方を社会全体に広げ、soarのビジョンである「誰もが自分の可能性を活かして生きる未来をつくる」ことを実現していきたいと思います。

 

第1 目的

 以上を踏まえ、改めて本ポリシーの目的は以下のとおりです。

1 soarの活動に関わる全ての人が、人権の尊重という観点から自身の役割や責任を理解し、適切に対応できるよう指針を示します。

2 soarの事業や活動に関わる人々の人権が守られる環境づくりを通じて、人権侵害を予防し、侵害が生じた場合には問題への対応が適切に行えるような仕組みを確立し、維持します。

3 本ポリシーは、自らの実践による教訓や活動に関わる人からの意見、社会の変化などに照らし合わせ、定期的に見直しを実施し、改訂します。

 

第2 言葉の定義と適用範囲

1 言葉の定義

(1)スタッフ  soarの職員、インターン、役員といった、事業の従事者をまとめた総称を指します。それぞれの役割は以下の通りです。

ア 職員  雇用契約にある正職員及びパートタイム職員を指します。

イ インターン  一定期間、soarの特定の業務を委託(有償・無償を問わない)した学生及び社会人を指します。

ウ 役員  特定非営利活動法人の目的達成のため法人の経営・運営・事務の執行を委任した役員を指します。

(2)関係者  soarの事業や活動に関わる以下のメンバーが該当します。

ア ボランティアスタッフ  soarのイベント運営などの活動に、自主的に無報酬で関わるメンバーを指します。

イ 業務委託者  soarの事業において個別契約を結び業務を遂行する個人または法人を指します。

ウ クライアント・連携機関  soarと協働事業を遂行する法人・団体を指します。

2 適用範囲

 本ポリシーは、soarの活動に関わるスタッフ及び関係者に適用されます。

 

第3 基本原則

1 ポリシーの定期的な見直し

 本ポリシーは、法令や社会状況だけでなく、スタッフや関係者からの意見や、メディアの読者や寄付者からの意見を参考に、その内容を定期的に見直していきます。

2 個々人の責任

 soarは、スタッフ及び関係者に対し、本ポリシーの目指すものと自らの役割や責任を理解し、ポリシーに沿った言動を求めます。また、自身及び他者において、本ポリシーに反する行為、またはその発生が予見される事案があった場合には、速やかに上司または後述の相談窓口へ申告・相談、共有など、適時適切に対応することを求めます。

3 組織の責任

(1)soarは、事業活動のあらゆる段階において、関わる人が互いを尊重したコミュニケーションができるよう、組織全体で本ポリシーに基づく取り組みを推進します。

(2)スタッフ及び関係者は、活動開始時に本ポリシーについて説明を受け、これを理解し遵守する旨の署名を行います。当該署名を受けた書類等は適切に保管します。

(3)soarは、スタッフ及び関係者が本ポリシーに関する役割や責任について理解し取り組めるようにするための周知・研修の実施、すべての事業活動における人権侵害の予防を行います。また、定期的なモニタリングや評価を行うほか、申告や相談のための相談窓口の設置と運用をします。

(4)soarは、本ポリシーに反する行為、またはその発生が予見される事案があった場合には、すみやかに適切な対応を行い、被侵害者または侵害される恐れがある方の保護と支援、問題の解決と予防に取り組みます。また、意思決定プロセスの明確化等に関して定期的に見直しを行い、体制を整えます。

(5)本ポリシーに反する行為、またはその発生が予見される事案があった場合の対応に関する判断は、パートナーシップポリシー担当理事が行います。パートナーシップポリシー担当理事は2年の任期制とし、事業遂行に係る職責のある理事が兼任しません。なお、任命については、理事会決議で行います。

4 クライアント、連携機関との協働における責任

 soarは、メディアや研修・イベントといった事業を、他の組織と連携または委託等の契約関係を結んで実施する場合には、互いの責任を理解し、契約書に本ポリシーを遵守することを明記したうえで、本ポリシーに則った活動ができるよう協力し合います。

5 オープンな議論と透明性

 soarは、本ポリシーに反する行為、またはその発生が予見される事案があった場合には、必要に応じてスタッフやその事案の関係者に対して対応・予防に必要な事項を明らかにし、オープンに議論できる環境づくりに努めます。その場合、組織における立場や役割によって得ることができる情報に差異があり、その結果としてやむを得ず関係者間でも情報の非対称性が生じ得ることを自覚し、可能な限りそれに配慮したコミュニケーションを行います。

 また、必要に応じて、その問題への対応と予防に関する取り組みの過程も、可能な限り関係者もしくは対外的に明らかにするなど、情報の透明性を大切にします。

6 予防と再発防止

 soarは、本ポリシーに基づく取り組みの強化・改善を継続的に行うことによって、信頼される組織作りを目指します。 また、本ポリシーに反する行為があった場合には、以下(1)〜(3)の事項に配慮しながら、その問題への対応と再発防止策を実施します。

(1)守秘義務の遵守

 soarは、本ポリシーに反する行為、またはその発生が予見される事案があった場合の報告や相談、調査を通じて取得した情報は、調査対象者の処遇や再発防止策の策定に係る判断に必要な範囲内の関係者に共有されるものとし、プライバシーポリシーに沿って守秘義務を遵守するものとします。

(2)本ポリシーに反する行為への対応

ア 本ポリシーに反する行為があった場合には、関係各法令や契約関係に基づく各種の調査、処遇の決定などの必要な手続きが行われるほか、法的措置の実施や外部機関への調査の付託が選択される可能性があります。また、説明責任を果たすために必要な範囲で、その詳細を公開する可能性もあります。

イ 本ポリシーに反する行為やその懸念が申告されたものの、調査の結果、違反を認定できない場合であっても、申告者や相談者に対しては、いかなる差別的な待遇もなされることはありません。しかし、当該申告が虚偽であったり悪意を持って行われた場合等には、関係各法令に従ってしかるべき対応を検討します。

ウ 本ポリシーに反する行為によって人権侵害を受けた人がいた場合、本人の希望を聞いたうえで、必要に応じて専門家と連携してカウンセリングなどの適切なケアを行います。また、組織内での報告、対応に携わる職員と関係者に対しても、必要に応じて専門家によるカウンセリングを実施するなど、サポート体制を整備し、十分にケアを行います。

(3)本ポリシーに反する行為に係る当事者間の利害調整  本ポリシーに反する行為(主として、特定の他者の権利利益の侵害を伴うもの)があった場合における当事者間の利害調整においては、その前提として、soar内部において、当該事案への対応に必要とされる知識を学んだり、互いの考えを共有し対話する機会を設けるなど、関わる人の心理的安全性と再発防止に資する環境作りに努めます。

 そのうえで(またはそれと併行して)、本ポリシーに反する行為をした当事者に対しては、関係各法令やCoC、本ポリシーに基づいてしかるべき対応・処遇を行ったうえで、仮に同人が今後もsoarの活動に参加したい、関わりたいとの意思を有している場合には、当該違反行為の性質や違法性の軽重を考慮し、権利利益の侵害を受けた当事者の心理的安全性の確保に反しない限度で、本ポリシーを理解するための研修の受講を義務付けるなど、専門家と連携して認知・行動の変容に必要なサポートを実施します。また、本ポリシーに反する行為に係る当事者及びその関係者の利害調整に必要な環境の段階的な調整を、継続的に行います。

 

第4 行動指針

 soarの活動に関わるスタッフ及び関係者は、 soarの活動において下記の事項を遵守します。

(1)人権に関わる法令を遵守し、人権侵害を防ぐ環境の醸成・維持に努め、本ポリシーの遂行を推し進めます。

(2)互いの人権を尊重しあったコミュニケーションを行い、安全で対等なパートナーシップを築くよう努めます。

(3)不合理な差別行為(本人の努力によって変えがたい事実等による不合理な区別等)や偏見に基づいた言動など、個人の尊厳を傷つける行為を一切行いません。

(4)暴力や性的嫌がらせ、その他身体的・心理的に相手の権利を侵害する行為を一切行いません。

(5)威迫による業務の強制など、相手の意思に沿わない行動を要求しません。

(6)活動上の発言・提案・アドバイス等のコミュニケーションの際に、威圧的な言葉遣いをしたり、攻撃的・抑圧的な態度をとりません。

(7)活動に関わる一人ひとりの個人の意志や希望を尊重することを心がけ、その人の資質や能力が活かされるような関わりを心がけます。また、一人ひとりの事情(障害や病気、家庭の都合等に限らない)や個人の特性などに応じて、可能な限り個別の配慮ができるよう努めます。

(8)活動に関わるすべての人が、その立場や肩書きに関わらず、あらゆる懸念や問題を提起し、話し合えるようオープンな雰囲気を作り、その声に耳を傾け誠実に対応します。

(9)許可を得ずに相手を撮影したり、その写真や動画及び個人の特定につながるような個人情報をウェブサイトやソーシャルメディアなどに掲載しません。

(10)当団体やスタッフ及び関係者に対する誹謗中傷、差別、名誉毀損またはその他権利侵害となるような情報発信は行いません。

(11)活動に関わる個人情報や機密情報は適切に管理し、目的外には使用しません。

(12)活動に関わるすべての人の生命・身体・財産に関する危険な状況やその潜在的リスクを意識し、リスクを軽減、除去すること等を通して、人権の侵害を防ぐよう取り組みます。

(13)人権侵害やそれに準ずる不適切な行為など本ポリシーに反する事案が発生、または予見した場合には、それを見過ごさず、適切な手順にそってすみやかにパートナーシップポリシー担当理事に報告します。 また、調査に最大限協力し、当該調査等のために必要な書類や情報を提供します。

(14)本ポリシーで大切にしている人権を尊重するあり方を、自分の所属するコミュニティ、社会においても意識し、それを実践することによって、本ポリシーの目的が実現するよう心がけます。また、その実践過程においては、他者との関係性の中で常に生じ得る、意識的・無意識的問わず自身に生じている権威性や権力性を自覚し、そのような性質が孕む加害性が顕在化しないよう心がけます。

 

第5 本ポリシー違反やその発生が予見された場合の対応

 soarの活動に関わるスタッフ及び関係者は、soarの活動において本ポリシー違反やその発生が予見された場合(以下、「本ポリシー違反等」といいます。)には、以下のフローで対応を行います。

1 違反発見の端緒(申告の受付等)

 以下(1)から(3)のいずれかの経路により本ポリシー違反等の申告があった場合、パートナーシップポリシー担当理事は、監事と協議のうえ、当該申告の対象事案が本ポリシーに抵触する可能性があるか否かの判断を行います。

 抵触する可能性があると判断した場合は、当該申告を正式に受理し、その後の対応の要否や内容について、監事と協議します。他方、抵触しないと判断した場合には、その旨及び判断理由の概要を申告者に報告し、対応履歴については記録に残すこととします。

 なお、いずれの場合も申告者や当該事案の関係者には、パートナーシップポリシー担当理事より対応フローや進捗状況については、適宜伝えるものとします。

(1)スタッフまたは関係者が、本ポリシーに反する行為を発見した場合 3営業日以内に上司またはパートナーシップポリシー担当理事へ共有します。

(2)スタッフまたは関係者が、本ポリシーに反する行為に関する相談をスタッフまたは関係者から受けた場合 相談を受けた者は、3営業日以内に相談内容を、上司を通じて、もしくは直接パートナーシップポリシー担当理事へ共有します。

(3)スタッフまたは関係者、もしくは第三者が、本ポリシーに反する行為について相談窓口へ申告、相談を行った場合 相談窓口チームで協議のうえ、内容に応じてパートナーシップポリシー担当理事へ共有します。

2 対応協議

 パートナーシップポリシー担当理事は、正式に受理した当該申告事案に係る対応の要否や内容について、監事と協議し、調査チームを組成のうえ、調査の開始を決定します。調査チームには、必要に応じてスタッフや外部関係者の参加を依頼します。

3 調査の実施

 調査チームは、事実認定に必要な限度での調査を実施します。その場合、必要に応じて、以下の外部関係先と連携して調査を行います。

(1)連携機関 (2)弁護士 (3)警察 (4)医療機関

 ただし、当該事案が刑事事件や行政事件に該当、またはその可能性がある場合は、調査チームは、一次的には申告者の意思を最大限尊重しながら、必要かつ可能な限度で、内部調査を開始する前またはそれと併行して関係当局に相談し、通報の要否を含め、法の趣旨を損ねることのないよう、関係当局と協議を行うこととします。

 また、調査においては以下を厳守します。

(1)個人情報の保護  申告者及び調査対象者に係る情報の秘匿性は保護され、個人情報は、調査等に必要な限度で調査権限を有する関係者間でのみ共有します。

(2)記録の保存  調査履歴はすべて、今後の判断基準となるよう、体系的に整理のうえ、厳重に保管します。

(3)安全な活動環境と調査の正当性の担保

ア 調査対象がスタッフかつ役員の場合、調査中は役職や業務の一時停止を行い、調査や対応決定の一切に関わらないこととします。

イ 団体の機関設計や要職の権限分掌などが調査対象となる場合は、外部専門家や関係団体と協議のうえ、外部調査を依頼する等、事案の内容に応じて調査方法や担当者の検討を都度行います。

4 処遇決定

 調査チームは、調査報告を元に対応を決定します。決定内容によっては対外的な説明が必要な場合もあるため、すべてのポリシー違反に係る対応決定の内容は理事会が必ず把握を行います。

(1)処遇対象者がスタッフの場合  CoCや就業規則に基づき、人事担当者が人事的対応の要否と内容に係る協議を行います。

 ただし、処遇対象者が役員の場合、臨時理事会にて処遇の決定を行い、臨時総会で承認を諮り、最終決定を行います。

(2)処遇対象者が関係者の場合  事案の性質に応じて、改善策の調整、活動の停止措置を実施します。処遇対象者がパートナー機関の場合は、改善策の調整や、状況によっては契約の続行可否に係る協議などを検討します。

 なお、処遇対象者の種別に限らず、違反の程度が極めて悪質(各種刑法犯等も含まれる)と判断できる事案の処遇の決定・対応については、法人の定款に則り臨時理事会において以下の手順で決定します。

ア 調査チームは調査報告をパートナーシップポリシー担当理事、監事に提出し、それ に基づきパートナーシップポリシー担当理事または監事は臨時理事会の招集を行います。

イ 臨時理事会において、パートナーシップポリシー担当理事、または監事より協議内 容を共有し、公表の有無も含めた処遇の決定を行います。

ウ 理事会で決定した処遇について、臨時総会で承認を諮り、最終決定を行います。

エ 最終決定を踏まえ、パートナーシップポリシー担当理事及び監事は調査チームとともに事後対応を行います。

5 事後対応

 調査チームは、以下の事後対応を行います。

(1)処遇対象者への通知

(2)申告者への報告

(3)申告者への必要な支援の検討、実施

(4)調査の協力者、関係者への報告

(5)本ポリシー「第5の1〜5」までの記録の作成・保管

(6)組織や関係者間での改善に向けた事案の振り返りの実施

(7)ポリシー運用をはじめとした活動体制の見直し、再発防止のための改善策の策定・実践

6 対応フロー図

 

 

2021年12月22日 策定