こんにちは!soar編集部の馬場です。 いつもはフォトグラファーとしてsoarの取材に関わっている私ですが、今回はみなさんにどうしても知ってほしいことがあり、この記事を書いています。

突然ですが、今少しの時間を使って想像してほしいです。

今送っている生活が、突然、もしくは徐々に失われてしまって、生きるためには、どこか別の場所に逃げなくちゃいけない状況になったとしたら・・・

私だったら家族や友人と離れどこか遠くへ突然行ってしまうなんて、とてもつらいです。

今、世界には住み慣れた土地を離れて暮らさなければいけない「難民」が約6000万人いると言われています。

毎年6月20日は「世界難民の日」。

難民と聞いても、すぐに身近に感じることは難しいと思います。そこで、難民や難民支援に関するイベントを紹介したくて、書かせていただいております。写真、映画、スポーツ好きな方には、特にお勧めのイベントばかりです!

難民ってどんな人たち?

英語で「難民」は”refugee”。”refuge”は「避難」という意味、”refugee”は「避難をしている人々」を指します。

人種や、宗教、政治的活動、セクシュアリティなどを理由に、命の危険を感じたり、紛争によって生活の場が奪われてしまった・・・そういった状況から逃れ、生きるために「難民」とならざるをえなかった人々が世界に約6000万人います。日本の人口の約半分ですね。

中東やヨーロッパでの難民に関するニュースを目にした方は多いと思います。「難民」と聞くと、遠い存在と感じるかもしれませんが、ここ、日本にも難民となってしまった方が暮らしています。

昨年2015年には、日本で7586人が難民申請をし、認定されたのは27人。難民とは認められなかったけれど、「人道的な配慮」から在留資格を得た人は79人いました。

日本にたどり着いた経緯はそれぞれですが、みんなに共通しているのは、「生き続けるため」に難民となったということです。

「世界難民の日」に合わせた注目イベント!

毎年、「世界難民の日」に合わせて、シンポジウムなど様々なイベントが開催されます。

その中でも、注目なのが表参道駅で開催される日本に住む難民の方のポートレート写真展です。

「Portraits of Refugees in Japan‐難民はここにいます。」 日本に暮らす難民 28 人のポートレート写真展

【写真】寄り添う二組の難民の親子と二人の青年

日本で難民支援を行なっているNPO法人難民支援協会は、関心のある人に届けるだけではなく、関心を持ってくれる層を広げるために、「日常の中で偶然出会って気に留めてもらえる機会となるようなプロジェクト」を企画しようとしていました。

そんな中、フォトグラファーの宮本直孝さんが、難民をテーマにした写真を撮りたいと昨年末に難民支援協会に連絡を取ったところからこの企画は動き始めました。 宮本さんは「わざわざ写真展に足を運んでもらうのではなく、通りすがりの人の心を動かせるような展示がしたい」という希望があり、表参道駅での展示を実現することになりました。

来日直後の難民の方は、自らの身や、故郷に残る家族の身に危険が及ぶ可能性があるため、公の場で顔を出すことはできません。 ある程度の年数が経ったり、日本で暮らすことが法的に認められている難民の方々の協力によって、撮影が進みました。中には、「日本での難民のイメージを覆したい!」と、参加を決めてくれた方もいらっしゃるそう。
【写真】インドシナ難民二世の方をカメラマンが撮影している様子
(撮影風景。インドシナ難民二世の方。)

【写真】パソコンの画面に撮影した難民の方の写真が並んでいる。

ウェブサイトでは、6月20日に、それぞれのストーリーが公開される予定です。 しかし!やはり、soarの写真担当としては、写真は写真展で大きく見ることをみなさんにおすすめしたいです。展示期間は「世界難民の日」の6月20日から6日間。

「難民」と聞いたら、皆さんそれぞれイメージを抱くと思いますが、まず、写真に写る一人ひとりの眼差しを見つめてください。

【写真】難民の青年二人がスーツを着てまっすぐにカメラを見つめている。
(メディの息子:パキスタン 父メディの家族呼び寄せが叶い、2015年来日。11年ぶりに再会した。兄20歳、弟18歳。兄は地域の日本語クラスで勉強しながら、父の会社を手伝う。弟はアルバイトをしながら日本語を勉強。)

ニュースの中や数の後ろでなかなか見えづらい、それぞれが送ってきた人生が気になってきませんか?

「『悲惨さ』や『大変さ』ではなく、より身近な存在として捉えて、日本に住んでいる難民の方、一人ひとりの顔を見て、それぞれの物語を想像してもらえるきっかけになれば。」と難民支援協会広報の田中志穂さんは語ります。

【写真】頭にスカーフを巻いた母と子供。母は子供の肩に優しく手を置いている。    
(ファルハ・息子:シリア 夫が日本に逃れた時は、息子を妊娠中。その後、ISの台頭により故郷を離れ、娘とともにイラクの難民キャンプへ身を寄せる。日本で家族が再会するまでにかかった時間は2年半。)

難民の方一人ひとりに寄り添う難民支援協会の活動

難民支援協会は、来日して間もない難民への緊急的な支援や、難民申請のための法的支援、就労支援や起業支援など一人ひとりに寄り添った直接支援の他、政策提言、情報発信も行っています。 難民の中には、情報が十分に得られず、持ち金が尽きてホームレス状態になってしまう方もいるそう。そういった方に一時避難所を提供したり、医療制度につなげる活動をし、生活を支えています。

就労許可を得た難民の方たちが自立した生活を送るためには、仕事が必要です。そこで、企業とのマッチングなど就労支援を行ったり、起業を目指す方には、「難民起業サポートファンド」を通じて挑戦をサポートしています。難民の方は、それまでのビジネス経験や、言語力を生かし活躍しています。

難民となる前は、それぞれに暮らしがあり、家族があり、仕事もあり、日常がありました。日本にたどり着くまでに、失ったものは多かったかもしれません。しかし、ここ日本で新たな生活を築くチャンスを作ることもできるし、それを支える方もいます。

「考えてみてください 国籍がないことを -世界の無国籍者たち」

ここで、もう一つおすすめしたい写真展があります! 難民支援を行う国連機関UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)主催の写真展が横浜JICAで開催されています。

グレッグ・コンスタンティン写真展
NOWHERE PEOPLE: THE WORLD’S STATELESS
考えてみてください 国籍がないことを -世界の無国籍者たち

【写真】座っているカメラを見つめる3人の男性。

世界におよそ1000万人いるとされる「無国籍者」を写した写真展です。

おそらくこの記事を読んでくださっている多くの方が、自然と「私は〇〇人」という意識を持っているかと思います。

地域の学校に通ったり、通わないで家で勉強するという選択ができます。医療サービスを受けることができ、不便なことがあれば簡単ではないですが制度を変える働きかけをすることができます。一緒に生活を共にしたい人が出来たら、法律婚を選ぶことも、届け出を出さず共に暮らす選択が出来ます(日本は同性婚の場合制度上の壁がありますが)。パスポートを申請する人もしない人もいますが、もし申請するときは、国籍に関して疑問に思うこともほとんどなく、世界中様々なところへ行ける方が多いと思います。

しかし、なんらかの理由で国籍がなく、いろいろな選択肢を選ぶことをさえも出来ない状況にいる人々が、世界に、そして日本にもいます。 無国籍になってしまう要因は様々あります。その中で難民に関連する例は、生まれた国では少数民族であるため、国から国民として認められない無国籍者の方が、なんとか日本に来ます。もし、難民である方に子供が生まれたとしたら、その子供たちも無国籍者となってしまいます。

日本は、難民条約に加盟していますが、無国籍の方を保護する条約には加盟していません。

「生き続けるため」に、生まれた場所から遠く離れ、何かのご縁でたどり着いた日本、ここでも「生き続けるため」の選択肢が狭められてしまったり、保障を得られないことが起きてしまっています。

法律や制度を変える道のりは簡単なものではありません。

しかし、「世界難民の日」をきっかけに、二つの写真展で難民と無国籍の方々の状況、そして彼らを支援している活動を知ることが出来ます。理解が深まることによって、社会が少しずつ変わっていくきっかけとなります。

UNHCR主催のシンポジウムや映画祭も!

【写真】青年に抱きかかえられた女の子。二人とも笑顔を浮かべ楽しそうな表情をしている。
「世界難民の日」特設ウェブサイト、世界中の難民のストーリーが紹介されています。(C)UNHCR/A.Sakkab)

UNHCRは、「世界難民の日」6月20日に国連大学でシリア難民への支援のあり方についてのシンポジウムを開催します。パネルディスカッションでは、難民の方や、難民支援に携わる学生団体J-Funユース、ジャーナリストの土井敏邦さん、CSR活動で難民支援を行なっている株式会社ファーストリテイリングの方たちが登壇します。

また、毎年開催されている難民映画祭もぜひチェックしていただきたいです。ドキュメンタリー作品やドラマを通して、難民それぞれの人生を知ることが出来ます。今年は大学でも上映イベントが多く行われているようなので、映画好きな方はUNHCRのfacebookページを要チェックです!

【写真】満員のイベント会場。参加者は真剣に話を聞いている。
((C)UNHCR  第10回UNHCR難民映画祭の札幌の会場)

今年8月開催のリオ五輪には難民選手団が出場!

写真や映画などインドア派ではない方もいるかと思います。

スポーツ好きな方にも難民を身近に感じてもらえるとっておきのイベントがあるので紹介させてください。 スポーツ好きな方の中には、今年のリオ五輪が楽しみな方が多くいらっしゃると思います。そこに、五輪の歴史で初めて結成された難民選手団が出場します。他の難民の方を勇気付けるため、十人のアスリートたちが勝負に挑みます。

【写真】柔道着を着て腕を組み真剣な表情でカメラを見つめる男性。
柔道 ポポル・ミセンガ選手 コンゴ民主共和国出身

故郷コンゴ民主共和国で戦闘が起こって避難した時、彼はまだ9歳でした。逃れる際に家族と離ればなれになり、たった1人で1週間以上森の中で身を潜めました。その後施設で避難生活を送りましたが、そこで出会ったのが柔道でした。

「幼い頃は色々なことを教えてくれる家族が必要です。でも私には家族がいなかった。その代わりに柔道がありました。平常心や規律、そして何かに熱中するということ・・大切なこと全てを柔道から学びました。」 ポポルは今ブラジルでオリンピックに向けてトレーニングを続けています。「難民に希望を与える、オリンピック出場をそんな機会にしたい。メダルをとって全ての難民に捧げたいです。」(UNHCR facebookページより引用)

【写真】穏やかな表情でたたずむ女性。
水泳 ユスラ・マルディニ選手、シリア出身

ユスラはシリア紛争から逃れ、トルコからボートでギリシャのレスボス島へと渡りましたが、途中ボートのエンジンが故障。唯一泳ぐことが出来たユスラと姉の2人が海に飛び込み、3時間半かけてボートを沿岸まで導きました。乗っていた人は全員無事だったそうです。

「どんな困難も、嵐のような辛い日々も、いつかは落ち着く日が来る。難民になっても、夢や、やりたいと願っていたことをあきらめないで欲しいと伝えたいです。夢を追い続ければチャンスが舞い込んで来ることもあるし、自分自身でチャンスを作り出すことも出来るんです」(UNHCR facebookページより引用)

活躍が楽しみですね!オリンピックを観戦する方は是非難民アスリートの皆さんも応援してください。

同じ時代に、あなたの街に暮らしている難民がいる

難民が生まれてしまう現状をいますぐ変えることは難しいですし、難民となってしまった方が生まれた場所に帰る日がいつになるか答えることは出来ません。

日本に来た難民が、不法滞在で逮捕され、入管施設に収容されてしまうケースも少なくありません。危険や迫害から逃れてきた先でまた迫害を受けてしまう、危険を及ぼす存在だとみなされてしまう、支援にたどり着かず危険な状況にさらされてしまう・・・とても悲しいことが、世界中で、日本で起きています。

直接的に何かをすぐ変えるためにできることは限られています。でも、身近なところから、知ること、できることはたくさんあります。

日本が、難民の方を、新たな仲間、隣人として迎え入れる社会になるために、まずは、「世界難民の日」をきっかけに、難民について、難民支援について、少しでも多くの方が身近に感じることから何か変わるはず。

この記事の始めに、「今送っている普段の生活が、突然、もしくは徐々に失われてしまって、生きるためには、どこか別の場所に逃げなくちゃいけない状況になったとしたら。」 と想像してくださいと書きましたが、あまりにも突然すぎて想像しきれないかもしれません。

でも、写真展や日本での難民支援の活動を知ることを通して、同じ時代に、あなたの街に暮らしている難民の方がいることを、少し想像しやすくなるはず。

映画や難民選手団のお話を通して、なぜ難民となったか、どうやって日本に来たか、それぞれのストーリーを想像しやすくなるはず。

何かのご縁で日本にやってきた難民の方が、日本に来たから可能性が失われてしまうのではなく、可能性をさらに広げられる社会になれるように。

関連情報:

NPO法人 難民支援協会 ウェブサイト / facebookページ
難民についてもっと知る⇨ 難民にまつわる8のよくある質問 

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所) ウェブサイト / facebookページ
「世界難民の日」特設ウェブサイト

写真展:

フォトグラファー宮本直孝 × 難民支援協会 共同企画 「Portraits of Refugees in Japan‐難民はここにいます。」 日本に暮らす難民 28 人のポートレート写真展
期間 2016年6月20(月)~26(日) 
場所 東京メトロ表参道駅 B1 出口付近 ウェブサイト

グレッグ・コンスタンティン写真展 NOWHERE PEOPLE: THE WORLD’S STATELESS
考えてみてください 国籍がないことを -世界の無国籍者たち
期間 2016年6月1日(水)~ 7月29日(金) 10:00~18:00 
場所 JICA横浜 3階展示スペース ウェブサイト

(写真提供:NPO法人難民支援協会、UNHCR)

(イラスト/ますぶちみなこ)