「今晩のご飯はボク1人なんだ」
「お母さんがお仕事の日はお弁当を買って食べるの」
そんなとき、こどもが1人でも入れるのが“こども食堂”です。
栄養満点の温かいごはんをつくって待っているのは、
近所のおじちゃん、おばちゃん、お姉さん、お兄さんたち。

こどもが一人でも安心して入ることができて、地域のみんなと美味しいごはんをわいわいしながら食べられる。そんな場所を地域に生み出す「こども食堂」という取り組みが、日本全国に広まりつつあります。

私は小さいころ、両親が共働きだったため、おじいちゃんおばあちゃんだけでなく、地域の様々なひとにかわいがってもらって育ちました。親だけで子どもを育てていくのは大変なことだし、きっと地域のおじいちゃんおばあちゃんにとっても、生きがいになるようなつながりだったと今になって思います。

地域によっては、ご近所同士のつながりや多世代の関わりが生まれにくい地域もあります。人とのつながりを持てず、孤立してしまう人もたくさんいて、新たな課題を生み出す要因にもなっているように思います。

こども食堂は、とてもシンプルでみんなにとって嬉しい「美味しいごはんを食べる」ということを通じて、地域のつながりを生み出しているのです。

だれでも気軽に集まり美味しいごはんを食べられる「こども食堂」

【写真】コロッケ定食。小鉢がふたつとあたたかい味噌汁もセット。

東京都の大田区や豊島区などから広がったこども食堂は、もともとは「1日の食事が給食だけ」「うちに帰ってもひとりでごはんを食べる」というこどもたちがいることを知り、こどもだけでも安くてあったかいものをフラッと食べに来ることができる食堂を作ろうと始められたものだそう。

地域の人々がボランティアで協力し合い、寄付で食材などを募って美味しくて栄養満点のごはんをつくる。作ったごはんを、無料または300円などの安い値段で、みんなでごはんを食べる場所を提供しています。

訪れる人は、乳児から小・中学生、親子から、仕事帰りの女性や地域の高齢者などさまざま。けっしてこどものためだけの場所ではなく、気軽に誰でも来ることができる場となっています。

現在、どんどん輪が広がり、首都圏を中心とした様々な地域で、こども食堂が開かれています。

1月に豊島区でこども食堂サミットが開催

【写真】笑顔で集まるこども食堂サミット2016に参加したメンバー

先日、1月11日には「こども食堂サミット2016」が、豊島区、NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワークこども食堂ネットワークの共催で豊島区にて開催されました。サミットが開催されるのは、これで2回目。

当日は、全国からこども食堂を主宰している団体やこれから始めたいという人など、たくさんの人が参加。会場の活気溢れる様子からも、こども食堂への関心の高さが伺えます。

【写真】満席の会場。参加者は真剣に話を聞いている。

会場では首都圏にあるこども食堂20カ所の活動の様子を展示。大阪の釜ヶ崎で、35年近く子どもたちに居場所づくりに取り組んでいるNPO法人「子どもの里」理事長である荘保共子さんのお話や、2015年にこども食堂を始めたみなさんによるパネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションでは、お寺や定食屋で開催された事例や、学生が主体となった事例など、様々な立場の人が「こども食堂」を立ち上げている様子が報告されたそうです。

東京都練馬区には、すでに「こども食堂」が6カ所に存在しており、ネットワークを組んで食材の融通をしあったり、区の市民農園の野菜を寄付してもらっているんだとか。

地域での協力関係が生まれつながりができている一方で、より厳しい環境に置かれた子どもたちに来てもらうにはどうアプローチすれば良いのかという課題も。

こども食堂ネットワークで広がる輪

【写真】こども食堂ネットワークウェブサイトのトップページ。こども食堂を手伝いたい人、食べに行きたい人がここから繋がることができる。

首都圏を中心に「こども食堂」の活動をされている方々が、情報や食材の相互提供を目的として集まった連絡会として、「こども食堂ネットワーク」が生まれました。

サイトには、各地のこども食堂の住所や開催日などが一覧で掲載されています。今までは、こども食堂への関心が高まったとしても、自分の住む地域で開催されているのかはわかりませんでした。このサイトがあれば、簡単に情報を手に入れ、参加することができるようになっています。

【写真】こども食堂ネットワークウェブサイトのこども食堂の一覧が掲載されているページ。関東圏を中心としたこども食堂の詳細を知ることができる。

現在は、要町あさやけ子ども食堂(豊島区)、きまぐれ八百屋 だんだんこども食堂(大田区)、ねりまこども食堂(練馬区)など東京都だけでなく、神奈川県や埼玉県、千葉県などの関東圏を中心とした33団体がネットワークに参加。定期的な連絡会を開催し情報交換をしているそうです。

これまで、テレビや新聞記事でこども食堂のことを知った近所の方や食材の生産者さんから、「何かお手伝いできることはありませんか?」「食材を送ってもいいですか」という問合せが多く寄せられていたことから、それぞれの食堂で何が足りていないのかをわかりやすく記載しています。

お米、肉、魚、野菜、ボランティアスタッフなど様々な項目があり、「こども食堂を応援したい」と考えている人が参加しやすい仕組みをつくりました。

こども食堂ネットワークでは現在、「自分の地域でもこども食堂を開きたい」という方に向けて、立ち上げ準備や運営方法について、先輩の子ども食堂から始め方や体験談をきくことができる「こども食堂のつくり方講座」を2~3ヵ月に1回程度開催しています。

2015年後半は3回開催され、なんと14つのこども食堂が誕生したそう。こども食堂サミット以降は、なんと100人を超える人々からつくり方講座への参加希望があり、急遽インターネット上でのライブ配信や映像のアーカイブ化も始めました。

これまでそれぞれの地域で活動したいたこども食堂と、今後始めたいひとが協力をしてネットワークを組み、各所での小さな動きだったこども食堂が大きなひろがりを見せています。

地域全体が大きな家族になるような、地域のつながりを

こども食堂ネットワーク事務局の方は、こう語ります。

こども食堂ネットワークとしては、今後、全国のこども食堂の方々と積極的につながっていきたいと考えています。こども食堂の輪が全国に広がって、ご飯を食べられない子どもや孤食の子どもを地域で支えることが当たり前になるといいですね。

もちろん、地域にはこども食堂だけでは解決されない課題もたくさんあり、共助と同時に公的な支援がなければいけないと思います。ですが、こども食堂は、家庭の貧困や子どもの虐待などの問題をキャッチし、次の支援へとつなげる可能性も持っています。

地域の幅広い世代のしなやかなつながりを生み出し、共助の関係を築いていくことは、こどもだけでなく様々な人々にとって暮らしやすい地域をつくるはず。

こども食堂は、単に美味しいご飯を食べられる場所ではなく、地域の課題を解決し地域の人と人との関係づくりのきっかけになる場所として、その輪を広げています。

地域の人々の思いやりで成り立つこども食堂が増えていくことが、日本中に小さな灯りをともし、もっと暖かな未来を築いてくれるような気がしてしょうがないのです。地域全体が、まるで大きな家族のような関係になっていくことを、心から願います。

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