【写真】E's CAFEの店頭の風景。煉瓦造りの壁が海外を感じさせる。 訂正:記事掲載時に該当箇所の場所を「川崎」と記載しておりましたが、正しくは多摩市の誤りでした。訂正してお詫びいたします(soar編集部) テレビで野球観戦をしたり、休日にフットサルを楽しんだり。スポーツは私たちにとってとても身近で、プレイするのも見るのも、老若男女関係なく楽しめるものです。

私自身、運動神経は良くありませんが子どもの頃からスポーツが好きでした。

それは、スポーツを一緒にする中で友達と仲良くなれた経験や、FIFAワールドカップを大勢で観戦して日本の勝利に湧いた瞬間があったからだと思います。 

今回ご紹介したいのは、人の心を自然と近づけるスポーツの力を信じ、障がいのある方をサポートしている一般社団法人パラSCエスペランサです。 

障がいの有無に関係なく誰もが働き交流できる環境を作りたい

パラSCエスペランサの事業のひとつは、障がいのある子どもたちのための放課後支援教室。ここで子どもたちは、サッカーやかけっこをしながら、友達と交流することができます。

目指しているのは、パラスポーツ(障がい者スポーツ)を通じて、子どもたちの体力、コミュニケーション能力、協調性、チャレンジ精神を養うこと。これらが、障がいのある子どもたちの、将来的な自立を助ける力となるからです。

また、パラSCエスペランサの代表理事である神一世子さんは、NPO法人CPサッカー&ライフエスペランサで、CPサッカーサークルの運営もしています。「CP」(=Cerebral Palsy)とは、脳の損傷によって引き起こされる、運動機能障害であり脳性まひのこと。CPサッカーは、比較的軽度なCPの方向けに生まれた7人制のサッカー競技で、パラリンピックの正式種目にもなっています。

【写真】微笑みながら子供達にサッカーを教える、うすきみささん。

子どもたちにサッカーを教えている一般社団法人パラSCエスペランサの臼杵美砂さん

「自分たちでサッカーコートを持ち、障がい者も健常者も一緒に働き、サッカーをする環境、そして交流する環境を作り出したい」という最終目標を持って活動を続けている神さん。

 さらに目標へと近付くために、この春、新しいチャレンジを始めました!

日本初の障がい者就労支援を行うスポーツカフェバー「E’s CAFE(イーズカフェ)」をオープン

パラSCエスペランサは、2017年3月1日、東京都多摩市に『E’s CAFE(イ一ズカフェ)』という飲食店をオープンしました。こちらは日本初の、障がい者就労支援を行うカフェバーで、飲食ができるだけでなくスポーツ観戦も楽しめるお店。なんとフットサルコートも併設されています! 【写真】ユニフォームに身を包んで、ポーズを決める3名。 「スポーツを通して、障がいのある人たちの自立と社会参加の後押しをしたい」という思いから生まれたこのスポーツカフェバー。大きなきっかけとなったのは神さんのとある経験の中にありました。

2013年の春にオランダへ行った際に、神さんはある光景を見かけます。それは、街角のカフェで、障がいを持つスタッフの方が生き生きと働いている姿でした。笑顔を絶やさず、自信に満ちた表情で働く彼らを見て、神さんには夢が生まれます。

【写真】柔らかな表情でインタビューに答える、じんさん。

一般社団法人パラSCエスペランサの代表理事である神一世子さん

神さん:日本でも同じような光景を生み出したいと思いました。飲食は、人にとってとても身近なものであり、交流する空間をつくることができるもの。サッカーコートに隣接した、スポーツを楽しめるカフェバーを作って、サッカーや障がい者スポーツについて知って、見て、触れてもらえる機会を作りたいと思ったのです。

目指すのは障がい者雇用の新しいモデルケース作り

神さんが、カフェバーをつくる夢を持ち始めたのには他にも理由がありました。

運営している放課後支援教室「エスペランサNEXT」に通う子どもたちの、高校卒業後の職業選択の幅が、軽作業やパッキング業務、掃除、生産業務といったものにまだまだ限られていることです。

また、平成28年12月に厚生労働省から発表されたデータによると、障がいを持ち、雇用契約に基づいて継続的に就業が可能な「就労継続支援a型」の方の平均賃金(月額)は66,412円。神さんは、この状況を変えなくてはいけないと語ります。

神さん:この賃金では、障がい者年金と組み合わせてやっと生活ができる状態です。必要なものを手に入れることさえ簡単ではない状況なので、好きなものを買ったりすることはなかなか叶いません。『E’s CAFE』で楽しく働いてくださる障がい者の方を増やして、障がい者雇用の新しいモデルケースを作るここと、十分な利益を確保して、働いてくださる方に月額10万円以上のお給料を渡すことを目指しています。

「ここで働きたい!」と憧れられる環境が目標だから内装やお料理にもこだわる

かっこよく、誰もが憧れるような働く環境づくりを目指しているため、『E’s cafe』は内装や料理にも力を入れています。

海外のスポーツクラブハウスをイメージした内装は、とてもおしゃれ!

【写真】木でできた机と椅子、煉瓦造りの壁からは落ち着いた雰囲気が漂う。

席と席の幅も広く、ゆったりくつろぐことができる。

とっても美味しそうなお料理は、良心的なお値段です。そのため、スポーツ観戦に夢中になっているうちに、ついついお酒やお食事が進んでしまっても心配いりません。

【写真】お皿に丁寧に盛られたパスタが、とても美味しそう。

日替わりでいろんな味が楽しめるパスタメニュー。

【写真】鉄板の上に並ぶ赤身のお肉が、食欲をそそる。

ルーミート。実はこれ、カンガルーのお肉なんです。

 女性やスポーツ前後のアスリートにおすすめの、ヘルシーで栄養たっぷりのメニューも用意されています。

【写真】ボリューム満点のタコライスが、丁寧に盛り付けられている。

「ひじきと鶏ひき肉のアスリートタコライス」はヘルシーさとボリュームを兼ね備えた一品。

2月末には、オープニングイベントを開催。当日は、CPサッカー選手が併設のフットサルコートでサッカーを行って、『E’s CAFE』のスタートを盛り上げました。

皆でサッカーや食事を楽しむ中で障がい者スポーツのことを知ってもらえたら

オープン後は、さまざまなお客様に立ち寄られ、交流の場になっている『E’s CAFE』。

4年前に夢見た光景を目の前にして、神さんは語ります。

神さん:『E’s CAFE』はサッカーと食事とお酒を楽しみながら、みんなで交流できる場所です。サッカーをする人、応援する人、そのご家族、地域の方などが集う光景の中に、当たり前に障がいのある方も混ざり合っていられたらと思います。そして、ここでの出会いを通じて、障がい者スポーツのことを知ってくれる方が増えれば嬉しいです。

パラSCエスペランサは、現在クラウドファンディングに挑戦中。集まった資金は、スタッフが着用するユニフォームや、店内を装飾する黒板チョークアートなど、『E’s CAFE』をより盛り上げるために必要な、備品の購入に充てられます。

【写真】笑顔でポーズを決める一般社団法人パラSCエスペランサのメンバー5名。

一般社団法人パラSCエスペランサのメンバーのみなさん。

一緒にスポーツを観戦することで、心の距離が縮まることがあります。また、楽しく食事をしながらであれば、いつもは話しづらいことが話せたり、ゆっくり相手の話に耳を傾けられたりしますよね。

『E’s CAFE』は食とスポーツによって、集った方の心をいつもよりオープンにする可能性を秘めています。

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