【写真】サッカーボールを真剣に追う選手たち。

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スポーツ選手が試合で活躍する姿や、その裏で途方に暮れるような努力を続ける姿を見て、「私も頑張ろう」と背中を押されたことが数え切れないほどあります。

初めて知的障害者サッカーの映像を見たとき、「この感動に障害の有無は関係ない」と私は強く思いました。彼らは障害を全く感じさせない、熱いプレーを繰り広げていたからです。

障害や困難と向き合いながらも、「サッカーが好き」という熱い想いで練習を頑張る知的障害者サッカーの選手たち。彼らが世界を舞台に活躍するための資金を募るプロジェクトが、今始まっています。

サッカーを通じて、社会との関係性をつくる

知的障害者がプレーするサッカーは、私たちがテレビなどでよく目にするサッカーの試合と同じルールで行われます。試合の時間は障害の度合いによって30分ハーフになる場合もありますが、国際試合は45分ハーフです。

プレイヤーはなんと日本国内で約5000名。これは、視覚障害や聴覚障害、電動車椅子など知的障害を除く障害者サッカー6競技の合計選手数よりも多い数字です。

知的障害がある方々は、健常者と比べて運動能力が劣るということはありません。そのためプレーは健常者と同じようにとても力強く、テクニックも思わず見入ってしまうほどのものです。

【写真】サッカーの試合の様子。選手たちが集中してピッチに立っている。

激しく当たる場面も少なくありません。(C) JFFID

サッカーを含むスポーツや、音楽、芸術などは、感情や感覚を使って夢中になれる活動です。これは知的障害のある方にとって、社会との関係性構築のための重要なツールともなり得るのだそう。

日本知的障がい者サッカー連盟(JFFID)は、サッカーを通じて人と人とのコミュニケーションを促進させ、知的障害のある方の社会参加が進むことを目指しサポートを行う団体です。日本サッカー協会(JFA)とも連携をとりながら、知的障害者がいつでも、どこでも、身近で、安心・安全にサッカーを楽しめる環境の整備を行うなどの活動をしています。

選手たちの原動力は、「好きなことを続けたい」という思い

【写真】サッカーコートに向かって一列に並び、肩を組む選手たち。

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サッカーに対して熱い思いを持ち、真摯に取り組む知的障害サッカーの選手たち。しかし彼らがサッカーを続けるためには、想像もつかないような様々な困難があります。

選手の中にはただサッカーがしたいだけなのに、障害のことを指摘され、深く傷つきサッカーを辞めかけたという人もいるそうです。

また、知的障害者サッカーは、スポーツとしての知名度が低く、練習を見てくれる指導者も少ないなど、競技環境に恵まれていない状況です。そして健常者よりも、活動面・生活面のサポートが多く必要となるため、資金が多大にかかります。選手の実費でまかなうこともありますが、中には高校生や、社会人でも一般的な給与とはかけ離れた、低い賃金で働いている選手もいるそうです。

それでも、「ただサッカーがしたい、強くなりたい」という想いを胸に、選手たちは困難に立ち向かってきました。選手たちが持っているのは、障害者も健常者も関係なく、誰もが持っている、「好きなことをしたい」という強い思いです。

”もうひとつのW杯”で、世界一の夢を叶えたい。

FIFAワールドカップに対して、「もうひとつのワールドカップ」ともいわれる、知的障害者サッカーにおける世界一を決定する大会があります。国際知的障害者スポーツ連盟(INAS)が主催する、「INAS-FIDサッカー世界選手権大会」です。

【写真】客席には、たくさんのメッセージが掲げられている。

「もうひとつのW杯」ブラジル大会の観客席 (C) JFFID

この「もうひとつのW杯」は、基本的にFIFAワールドカップと同様に4年に1度の開催。W杯直後に、同じ開催国で行われます。2018年大会は例外で、ワールドカップはロシアで開催されますが、「もうひとつのW杯」はスウェーデンで開かれます。

知的障害者サッカー日本代表は、これまでも3回連続出場と努力を積み重ねてきました。前回の2014年ブラジル大会ではついに4位に!

あと一歩というところで叶わなかった、世界一の夢。選手たちは、今度こそ優勝がしたいという強い気持ちで、2018年スウェーデン大会に向けて厳しい練習を続けています。

【写真】ピッチの上で一心不乱にボールを追いかける選手たち。

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しかし、2016年11月。練習を続ける選手の前に、突然の通知が舞い込みます。「『 もうひとつのW杯』へ出場するためには、アジア予選へ出場し、勝ち抜くこと」とされてしまったのです。

実はこれまでも、出場資金の面では困難が続いてきました。前回のブラジル大会でも多くの支援があったものの、選手の自己負担も合わせ、やっとの思いで出場。今回のスウェーデン大会出場のための資金も、時間をかけて集めてきましたが、アジア予選は急遽決まったため、資金調達の目処が全く立ちません。このままでは出場することすら危ぶまれる状況です。

好きなことを追いかけて、生き生きと輝くために

「世界一を目指す」と口にすることは容易いですが、実際には非常に難しいことです。しかし、前回大会4位の結果からしても、本当に優勝を狙える圏内にいるといえるのが、今の知的障害者日本代表チーム。

トップを目指すことのできるチャンスは、そう多くはありません。2018年INAS-FIDサッカー世界選手権大会は、血の滲むようなひたむきな努力を長い間続けた末、彼らがようやく掴んだチャンスなのです。

【写真】ピッチの上で円陣を組む選手たち。真剣な雰囲気が漂う。

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現在日本知的障害者サッカー連盟では、資金調達のためのクラウドファンディングに挑戦しています。

まだ世間での知名度は高くない知的障害者サッカーですが、世界大会で成績を収めることで、多くの人に存在を知ってもらうきっかけとなるかもしれません。

人間誰しも好きなことを追いかけて、生き生きと輝くことを願っているはずです。それはどんな立場や環境にある人でも同じこと。全ての人がそれぞれが好きなことをして、輝ける社会であってほしいと強く思います。

大好きなサッカーで夢を追う選手たちを、一緒に応援しませんか。

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