【写真】Mobile Museum Idohの外観。木で組まれた小さなスペースからは、温かみを感じる。

豊かな色彩感覚で描かれた、このブロッコリーの絵。真っ白な画用紙を前に、胸踊らせながら色鉛筆を握りしめていた幼い頃を思い出しませんか? アートって、もっと自由なものでいいんだ。この絵からは、そんな当たり前の感覚が呼び起こされるような気がします。

【イラスト】明るいタッチで大きく描かれたブロッコリー。

この絵を描かれたANNAさんは、アールブリュット作家です。このアールブリュットとは、伝統的な美術文化の影響や美術教育を受けず自発的に生み出された作品のことで、ANNAさんは自身のセンスを胸にキャンバスと向き合ってきたアーティストです。

ANNAさんは現在、(一般社団法人)障がい者自立推進機構が運営する「パラリンアート」というアート事業団体に所属し、「パラリンアートアーティスト」として活躍しています。彼女はプラダーウィリー症候群という先天性疾患を持ちながらも、ひとりのアーティストとして作品を生み出し続けているんです。

そんなANNAさんの作品を広く知ってもらうためのイベントが、2017年10月1日に開催されます。それが移動式ミュージアム『たった一日のちいさな森の美術館』です。

青空の下でワイン片手に……カジュアルにアートを楽しんでもらいたい

この『たった一日のちいさな森の美術館』は、たった一日限定で開催される移動式ミュージアムです。京王井の頭線の高架下にある「下北沢ケージ」で開催され、青空の下でワインとともにANNAさんのアートを楽しむことができます。

一般的にアートというと、少しハードルが高いものかもしれません。美術館に足を運んで……と考えただけで億劫になってしまう人もいるでしょう。でもこちらのイベントは、誰もが気軽に参加できるようなカジュアルさが魅力なのです。下北沢というアクセスのいい場所で開催され、散歩や買い物のついでにフラッと立ち寄ることができます。

はじまりは「大好きなANNAを知ってもらいたい」という気持ちから

【写真】Mobile Museum Idohの外観。木で組まれた小さなスペースからは、温かみを感じる。
このイベントを立案したのは、エリコさん。アートによるボーダレスな空間を発信する「WONDER MUSEUM」の発起人です。

エリコさんは在籍していた京都造形芸術大学の卒業制作として、障がい者と地域をつなぐ移動式ミュージアム「Mobile Museum Idoh」に取り組みました。これがWONDER MUSEUMの前身。その後、アートの持つ力を信じ、それを広めるべく多方面で活躍されています。また、「パラリンアート」のプロモーション担当としても活動されています。

このイベントを開催しようと思ったきっかけは、冒頭で紹介したANNAさんの絵です。それについて、エリコさんは次のように語ります。

私はこのブロッコリーの作者ANNAのファンです!可愛くてカラフルで見ているだけで何だかワクワクしませんか? 彼女は専門的に美術教育を学ばず自身の感情のまま芸術を生み出しています。そこで、この魅力的な作品を多くの人に知って欲しくこの度「たった一日のちいさな森の美術館」を開催することにしました!

自分が愛するアーティストの作品を、ひとりでも多くの人たちに知ってもらいたい。そんなピュアな想いを胸に、エリコさんはイベントを立ち上げたのです。

「アートで健常者と障がい者をつなぐ」支援者は続々誕生している

そもそも、エリコさんが運営するWONDER MUSEUMは、「社会を構成する人々の多様さを再認識し互いが認め合うことで広がるコミュニケーションと、すべての人が青空の下でカジュアルにアートが楽しめるミュージアム」を活動理念に掲げています。

2016年11月には、パラリンアートの協力のもと、ANNAさんが慣れ親しむ千葉県成田市で同イベントを開催しました。

【写真】Mobile Museum Idohをリアカーに乗せて市内を歩く、アンナさんとご家族。多くの人の目に止まることができそう。

この日は、ANNAさんやそのご家族とともに市内をリアカーで練り歩くという、ミュージアムの新しいカタチを提案。そのかいあって、アートを通じてさまざまな人たちが交流し、心を通わせる一日になりました。

【写真】リアカーの前で写真を撮るアンナさんやそのご家族。楽しそうな雰囲気が漂う。

そんなエリコさんのもとには、その活動に賛同するメンバーが大勢集まっています。年齢、性別、職業、居住地など、そのバックグラウンドはバラバラ。共通しているのは、「アートで障がい者と地域、健常者をつなぎたい」という想いだけ。エリコさんは「こういう願いを持った方がもっと増えればと願っています」と語っています。

クラウドファンディングで支援すれば、あなたもプロジェクトのメンバーに

【写真】机に向かい、集中して絵を描くアンナさん。

『たった一日のちいさな森の美術館』では、アートに多角的に触れるための取り組みを多数企画しています。

目玉となるのは、冒頭で紹介したANNAさんの絵をモチーフとした巨大モニュメント「ブロッコトゥリー」の展示。青空の下、高さ2500mm、横幅3000mmものブロッコリーの木が鎮座します。

また、ANNAさんの創作風景を切り取った写真も複数展示予定。アーティストがどのようにアートを生み出すのか、めったに見られない瞬間を目撃するチャンスかもしれません。

【写真】アンナさんの創作風景。画面いっぱいに大きくブロッコリーが描かれている。

その他、参加型のワークショップや、この日限定のコラボメニューを味わうチャンスも。見て、触って、味わって……。五感をフル活用して楽しめるイベントになりそうです。

ちなみに、エリコさんが企画した本プロジェクトは、現在クラウドファンディングにも参加中。支援すると巨大モニュメント「ブロッコトゥリー」に特別協賛者として名前を明記してもらえます(希望者のみ)。

アートの前では、健常者も障がい者も関係ないはず

エリコさんはアートの在り方について、こう語ります。

本来ならば障がいの有る無しに関わらず鑑賞者にはアートそのものと対峙し感じる気持ちを持って欲しい。

そう、アートの前では障がいの有る無しはもちろん、性別も年齢も国籍も関係ありません。そして、それが自然な姿なのではないでしょうか?

パラリンアートアーティストであるANNAさんの作品を観に行こう。これもこのイベントに参加する、ひとつの純粋な動機です。

けれど、本当はもっとシンプルで良いはず。分け隔てなく、その場にいる人たちとアートを楽しむ。これこそがアートの醍醐味であり、そして、そんなピュアな気持ちがエリコさんの願う「ボーダレスな空間」を創っていくのだと思います。

関連情報

『たった一日のちいさな森の美術館』

開催日:2017年10月1日(日)
時間:11:30am-16:30pm
入館料 : 無料
会場:下北沢ケージ
東京都世田谷区北沢2-6-2 京王井の頭線高架下(京王井の頭線・小田急線下北沢駅南口徒歩3分)

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