【写真】満員のイベント会場。参加者は真剣に話を聞いている。

今回お届けするのは2016年4月7日(木曜日)に開催された「soarオープニングイベント」のレポートです。なんと読者の皆様を中心として60名以上が参加、大盛況のイベントとなりました!

とても印象的だったのは、イベント開始から最後まで、笑顔にあふれていたということ。

「自分たちにできることに目を向けていく」

そんなポジティブな思いが共有できる場となりました。

オープニングイベントにふさわしい楽しい空間

会場のレイアウト・飾りにも一工夫が、とても和やかな雰囲気でイベントは始まりました!

イベント開始の前には、参加者同士の自己紹介タイムも。

【写真】少人数のグループで笑顔で自己紹介をしあう参加者。あたたかい雰囲気に包まれている。

【写真】顔を見合わせながら真剣に、柔らかな表情で話し合う参加者。

自己紹介・会話を通じて、さまざまなバックボーンを持った方と知り合い、親睦を深めていくきっかけに。そして、いよいよイベント本編へ。

全ての人がいきいきと、羽ばたいて生きていける未来をつくる。

【写真】参加者の前でそあーの紹介をする代表のくどう。

まずはsoar代表・編集長である工藤瑞穂さんのオープニングトークからスタート。soarを立ち上げた経緯、そのメディア名に込めた思いなどが語られました。

soar立ち上げのきっかけには、ご自身とおじさんのエピソードがあったといいます。

私の身近なひとが、仕事に耐えて耐えて統合失調症になってしまいました。私は「なぜそういう状況になってしまったんだろう」とすごく思ったんです。

その後、統合失調症について調べていくなかで出会ったのが、北海道にある「べてるの家」という施設。統合失調症など精神的な病いを抱えた方々が共に暮らし、働いている場所。そこは「奇跡のような場所」だといいます。

実際に訪ねてすごく驚いたんですけど、統合失調症の方々が舞台に上がって、自分が見た幻覚・妄想について発表していました。天使の声が聞こえたとか、幻聴にそそのかされて焼き鳥屋さんの赤提灯を壊してしまったとか。みんな笑いながら話していた。「治らないけど幸せ」という生き方がそこにありました。

その時、一緒に行った人が「こんな場所があるって知っていたら、あの人を連れてきていたら、病気がひどい状態にならなかったかもしれないのに」と言いました。工藤さんは初めて「知らない」ということは、社会的なマイノリティの方々にとって生死を分けるような大きな問題だと気づいたそうです。

そこでご自身が得意とするコミュティや場づくりなどを行い、情報発信していくために2015年の12月、soarを立ち上げたといいます。

「soar」は聞き慣れない英単語かもしれませんが、鳥が空高く舞い上がって、羽ばたいていくという意味です。すべての人が大空を飛び回る鳥のように、社会で羽ばたいて生きていけたらいいな、すべての人が自分の可能性を生かしていける社会になってほしい、こういった思いでつけました。

対象としているのは、障害を持った方、LGBT、ホームレス、難病患者さん。広く言えば、高齢者の方、妊娠している女性、育つ環境に格差がある子どもたち、外国人の方など広く捉えているのがsoarの特徴のひとつ。

そのなかで、同じ願いを持つ人たちがつながっていけるようにする。そこで「新しい枠」を設定し、みんなが同じ未来に向かっていける状況を作っていきたい。

「生きづらさ」や「課題」に焦点を当てるのではなく「可能性が広がるその瞬間」や今ある希望に光を当てる、希望に向かっていくメディアにしたいと思っています。

工藤さんのオープニングトークは、こう締めくくられました。

「生きる姿」はどのような人でもきっと誰かを励まし、誰かの心に寄り添っていけるんじゃないか。そう思っています。誰にでも生きている意味と価値が絶対にある。その上でどうに自分の持つ可能性を生かしていけるか。

「生き生き」は「生きて、生きる」と書きます。生きたうえで、より生きる。

「生きててよかった」みんながそう思える社会を、未来をつくりたい。皆さん、私は全力で夢を見ています。一緒に同じ未来を夢見ていただけると、とてもうれしいです。

100人いれば100通りの幸せがある。車椅子が教えてくれた私の幸せ

【写真】車椅子に乗り優しい表情で参加者にむけて話をするおださん。

つづくトークパート、最初のゲストとして登場したのは織田友理子さんです。

織田さんは「遠位型ミオパチー」という難病を抱えている方です。その中でも車椅子で世界中を飛びまわり、障害者と健常者の壁をなくすために遠位型ミオパチー患者会・NPO法人PADMを立ち上げ、代表として活動中。

さらには「車椅子ウォーカー」という動画サイトでも車椅子に関する情報を発信しています。織田さんはどのように病気と向き合い、そこから活動の幅を広げてきたのか、お話いただきました。

はじめに語ってくださったのは、ご自身がどのように育ってきたのかということ。中学・高校と音楽が大好きな女の子として育ってきたという織田さん。大学へと進学し、徐々に体に異変を感じるようになっていったそうです。

大学に入学したくらいから足がもつれるようになりました。階段も手すりがないとしんどいであるとか、みんなと同じペースで歩けないとか。何かおかしいと思いながら、だましだまし生活していたのですが、大学4年生の時に「遠位型ミオパチー」と告げられました。手足の先の筋肉から衰えていきます。治療法も治療薬もありません。世界中に患者は存在するのですが、ほとんど知られていない病気です。

同時にその時にはまだ実感がなかったという織田さん。病気と直面したのは、結婚、そして子育てについて医師より告げられた時だったそうです。

「早くに結婚しないと子どもを産むのが大変になる」とお医者さんから言われて、診察室でわんわん泣いてしまいました。それまで実感がなかったんだなって。当時付き合ってくれた彼に告げるか葛藤しました。結婚をしてしまったら、彼の将来を縛り付けてしまうかもしれないから。

でも…思い切って話をしたら「じゃあ今だね」とすぐに結婚を決断してくれて。本日も来ていますが、彼は私にとって不思議な方です。2005年の9月に結婚して1年後、無事に赤ちゃんが産まれました。

【写真】おださんの隣で参加者にむけて話をするおださんの旦那さんであるよういちさん。おださんは笑顔で旦那さんを見つめている。

織田さんの旦那様・洋一さんもお話ししてくださいました

こうして無事に結婚・出産をした織田さんですが、病気はさらに進行していきます。赤ちゃんを抱っこすることができなくなり、移動もできなっていたそうです。そのなかで「ある決断」をすることに。

実はずっと借り物の車椅子を使っていたという織田さん、その理由は「一時的な骨折」という見え方になるのでは?とごまかしたかったという思いがあったのとか。

どこかで「車いすって恥ずかしい」と思っていたんです。彼に「車椅子を押して歩くのって恥ずかしくない?」と聞いたら「恥ずかしくもなんともないよ」と言われてハッとしたんです。私は障害者に対するネガティブなイメージを自分自身でもっていたんじゃないか、と。こんな気持ちで病気が進行して私は何を求めて、何が幸せで、何を成し遂げていきたいのだろう、と。

やっと自分用の車椅子を作ることに踏ん切りがつきました。電動車椅子に出会い、それが世界を広げてくれたんです。

そこからの織田さんは、新薬開発に向けベンチャー企業を探したり、車椅子の方のための情報発信をしたり、活動の幅を広げていくことに。

障害の問題って深く知るとすごく重たいんです。私もつられて落ち込んでしまうこともあります。でも、何か「困難さ」から解決をしていくために取り組んでいけば、その先の世界はきっと明るくなる。私の人生にとって、この病気が与えたインパクトは計り知れません。同時に病気から学んだこともたくさんあります。

【写真】車椅子に乗る参加者の方と話をするおださんと旦那さんのよういちさん。

トーク終了後に参加者とお話する織田さん

織田さんが語ってくださったのは、できないことを探すのではなく、「この状況、この体でもできることはなんだろう」という見方をすること。そして生き方を変えるということでした。

私は、他の人と比べて幸福を推し量るのではなく、自分の心の中の幸せを見出していくことが大切だと思っています。100人いれば100通りの幸せがある。相対的幸福ではなく、絶対的幸福あるはずだから、そこを見つめてこれからも活動していきたいです。

最後には、参加者を勇気づけるこんなメッセージを贈られました。

必要のない人など、どこにもいません。生きていること自体が奇跡で。本当に与えられている命に感謝しながら私も前に進んでいきたいと思っています。

【写真】笑顔で並ぶおださんと代表のくどう。

どんな境遇に生まれた子どもにも権利と尊厳を

【写真】優しい表情で参加者にむけて話をするおざわさん。

続いてトークをいただいたのは児童精神科医/NPO法人PIECES(登記申請中)代表である小澤いぶきさん。小澤さんが取り組んでいるのは、どんな子どもたちであっても孤立せずに安心・安全にいられる「居場所」づくり。あらゆる子どもたちの権利と尊厳を大切に、その可能性を生かせる環境づくりに向けた活動しています。

小澤さんはもともと子どもの精神科医として勤務してきた経歴の持ち主。現在、NPOである「PIECES」では「誰もが権利や尊厳を持って、平和をつむいでいける社会」を目指して活動しているそうです。

なぜ、小澤さんは医療の現場の外に出てNPOを運営するようになったのか?その背景をこう語ってくれました。

見えない格差により、権利や尊厳がない中で育っている子どもたちもたくさんいます。今日食べるご飯がない子どもや、暴力のなかで育った子、1ヶ月くらい電気もガスも水道も止まった環境で生き抜いている子。命を落としてしまったお子さんもいました。ないがしろにされていい命はないのだけれども、そこに生きている子どものことを知らなかったり、誰かの責任だけにしていることで無意識に社会としてないがしろにしているかもしれない、そんなことを感じました。

同時に、どんな子どもも一人一人の力や魅力、可能性を持っていることも知りました。子どもたちの生き抜いてきた力や、大人と安心と信頼のある関係との出会いにより、可能性が引き出され、成長していく、子どもたちの力や可能性にはいつもハッとさせられます。

家族の孤立により、子どもたちが孤立してしまったり、つながりが断たれてしまったり。そういった子どもの声が社会に反映されづらい現状を目の当たりにしてきた小澤さん。

【写真】笑顔でちから強く優しく目指していきたい未来を伝えるおざわさん。

そこで子どもと子どもを取り巻くコミュニティが健全に機能する状態を作ろうとNPOを立ち上げました。子どもたちの周りに、市民が、「安心で安全な途切れない関わり」をつくっていく活動をはじめたそうです。この関係性を起点に、子どもたちと共にコミュニティを作っています。

私たちのミッションは、子どもが健やかに発達できる社会の生態系を作ることです。これを子どもと共につくっています。子どもに関心を向け、途切れずに関わっていく、子どもに伴走する人とともに、子どもを取り巻く様々なコミュニティが途切れずある事で、市民を主体とした柔軟で多様なセーフティネットができるんじゃないと考えています。子どもと関わりながら、コミュニティを作っていく「コミュニティユースワーカー」の育成も行なっています。

この「コミュニティユースワーカー」がとてもユニークなのは、子どもを支援する対象として関わっていないこと。子どもと同じ方向を見ながら、何か一緒にやるコトやモノ、という手法を通して、子どもたちの願いやニーズ、それぞれの発達段階や、状況に沿ったコミュニティを作っていくことです。何をするかではなく、どんな関係を作るか。中で、子どもたちの可能性や健康的な部分に目を向けていくことです。子どもとの関係性の周りに必ずコミュニティがあります。

たとえば、ご飯を食べる、学ぶ、一緒に遊ぶ…さまざまな「こと」を通じて関係性をつくっていくのだそう。環境で育った男の子の例も。コミュニティユースワーカーと一緒に遊ぶなかで「ひたすら何かを分解する」という特技を通して、現在ではパソコンを自作したり、自分でパソコンを用いてモノをつくったりするのだそうです。

この過程にはデザイナーさんなど、「その道のプロ」や、機会を作っている企業の人、地域の人、学生さんなど様々な人が関わっています。プログラミングを学んで何かを作ったり、作ったもののが社会で何を担っているのかを学ぶなど、新たな学びの場もできています。また、若年妊娠をした女の子が自分の視点を活かして、若年妊娠をして若者のアウトリーチをし、「妊娠期SOS」とも関わっているケースなども紹介されました。

小澤さんは、そんな子どもたちの「可能性」についてこう語ってくれました。

誰かを信じたい、関心を向けてほしい、ちゃんと予測できる明日が来てほしい。子どもたちの表現や感情は、その奥にいろんな願いがあります。そんな願いが引き出される過程で少しずつ変化し、社会とつながっていく。子どもたちの可能性ってすごいっていつも尊敬しているんです。

【写真】満面の笑顔でゲストの話を聞く参加者たち。柔らかい照明に照らされた会場には、優しい空気が流れている。

じつは普段生活をしているだけでは、あまり意識することのない「関係性、コミュニティ」ですが、そこには大きな力がある、良い関係性をつくっていきたいと柔らかく、真っ直ぐに語ってくれた小澤さん。トークはこう締めくくられました。

誰もが明日の社会を作っていく可能性を持っています。その人の可能性を信じて、尊重して、共に関わり合っていく。その先に希望や平和があると信じています。

多様な人が集まったオープニングイベント

【写真】交流の時間に笑顔で集まる代表の工藤と参加者。

イベント最後には交流の時間が設けられ、それぞれの立場や状況をこえて、コミュニケーションも。

【写真】ドリンクを片手に楽しそうに微笑む学生の3人。

【写真】座りながら朗らかに語り合い参加者たち。

【写真】ドリンクを片手に楽しそうに笑顔を向ける参加者二人組

【写真】明るく顔の周りでポーズをとり笑顔を向ける参加者の3人。

【写真】ドリンクを片手に嬉しそうに微笑む参加者の3人。

【写真】ケータリングのフードを片手に満面の笑顔で食事と交流を楽しむ参加者の2人。

今回フードを担当してくれたのは、フードデザイナーのSAYOKO SATOさん!カラフルな羽やsoarのフラッグなど、かわいらしい装飾も!

【写真】美味しそうなケータリングのフードが並んでいる。上にはそあーの小さい旗が刺さっている。

自家製レモネードなどのオリジナルドリンクを提供してくれたのは、フードドリンクユニット『Uchila(ウチラ)』のふたり!soarのテーマカラーである「水色」のドリンクも用意してくれました!

【写真】レモンの輪切りを浮かべた手作りのレモネードが並んでいる。

たくさんの人たちがトーク後にも残り、交流ができた今回のイベント。みんなで同じを思いを持ち、未来へと向かっていく、そんな大切な時間となりました。

これからもsoarは「誰もが自分の可能性を活かして生きていける未来」を目指して活動していきますので、皆様よろしくお願いいたします!

【写真】笑顔で集まるイベントのスタッフとゲスト

織田友理子さん、小澤いぶきさんの活動にぜひご協力を!

最後に、トークにご登場いただいたおふたりの直近の活動、その支援方法についてもご紹介します!

▼織田友理子さんの活動
現在「バリアフリーマップ」という車椅子の方の外出をサポートするマップを開発中。「地球上すべてのバリアフリー情報を検索可能に」というプロジェクトです。車椅子用トイレや段差情報など、どなたでもアップができるようになるそうです。リリース後には投稿などで協力をしていくことができます。

また織田さんよれば、車椅子の方が困っていそうな時のちょっとした気遣いがあるだけでも、車椅子の方は外出がよりしやすくなると言います。たとえばエレベーターのボタンに手が届かない、手動ドアの開閉ができないなど、そういった方を見かけたらサポートなどできることの一つかもしれません。

http://b-free.org/

▼小澤いぶきさんの活動
「PIECES」の子どもたちが企画しているイベントが随時行われています。いぶきさんのお話では、子どもたちはいろいろな職業のいろいろな大人たちと触れ合う機会もとても大切とのこと。あわせて寄付なども募っていますので、下記Facebookページの情報をチェックしていきましょう。
また、コミュニティユースワーカーの募集などはホームページをご覧ください。

https://www.facebook.com/pieces.tokyo/

http://www.pieces.tokyo/

http://www.pieces-cyw.net/

また、soarでもクラウドファンディングを実施しています。ぜひ応援をお願いします(「社会的マイノリティの可能性を広げる全国の事例を《soar》で取材したい!

▼第2回の開催が5/24に決定!チケットコチラから!
http://soar2.peatix.com/

▼クラウドファンディングの支援もよろしくお願いします。
https://www.makuake.com/project/soar/

(写真/馬場加奈子)