※掲載当時は『Leaf』でしたが、現在は名称を変更し、『LITALICOジュニア』として運営を行っています。

【写真】笑顔で並ぶ3人のLITALICOジュニアの指導員

「子どもの発達が気になるけど、どうすればいいかわからない」

じつはこういったママ・パパたちは少なくないといいます。たとえば、子育てのなかで見られる子どもたちの気になる傾向。

 

「ことばの話し始め(発語)が遅い」

「モノ・コトへの執着が強い」

「落ち着きがなく、常に動きまわる」

「感覚が鈍い、逆にとても敏感」

「感情のコントロールができない」

「お友だちと仲良くできない」

もちろんすべてが発達障害や学習障害、ADHD、自閉症の兆候とは限りませんが、誰にも相談できず、不安を抱えるケースも。子どもを「なんで他の子にできて、あなたにはできないの?」と叱ってしまい、傷つけてしまうこともあるそうです。

行政は3回の「乳幼児健診」を義務づけています(※1)。たとえば、このタイミングで兆候がわかったとしても、発達の進み具合や傾向もさまざま。明らかな場合を除き、障害であるかどうかの線引きも難しいと言われています。

こういったなかで「発達が気になる子どもたち」の子育て支援をしているのが、学習塾&幼児教室「Leaf」(現在は「LITALICOジュニア」へ名称が変更しております)。ママ・パパたちが抱える不安に寄り添い、子どもたちの可能性を広げられる「場」と「機会」を提供しています。

 

(※1)乳幼児健診について…計7回の乳幼児健診があり、生後3~4ヶ月、1歳半、3歳での健診が義務。残り4回は任意となっています。(こそだてハック

  【写真】住宅街の中にあるLeafジュニアの看板

今回、soarで訪れたのは、0歳~6歳児の発達サポートを行う「Leafジュニア」自由が丘教室。自由が丘の商店街の一角にあるその教室で、指導員みなさん、そして子どもたちの楽しそうな笑顔と触れ合うことができました。

同教室のケースから、どう子育てと向き合っていけばいいのか。いかに子どもの可能性を引き出すことができるか。取り上げていきます。

 

すべての子どもに合わせたプログラムを。学習教室「Leaf」とは?

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「Leaf」は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫に41教室(※2016年5月現在)を展開してる学習・幼児教室です。大きな特徴は指導員とご家族が相談して、その子のためだけの成長プラン・環境づくりを行なうこと。子ども一人ひとりの得意なコト、苦手なコトをしっかりと見極め、体系化した教え方をしていきます。

運営方針は、

「その子にあった一番の学びを」

というものです。

発達が気になる子どもたちの傾向とは。そして何をどう教えているのでしょうか。

「Leafジュニア」自由が丘教室の教室長、社会福祉士でもある大坪幸太郎さんにお話を伺うことができました。子どもたちを教えていくときのポイントは「自己肯定感」にあるといいます。

【写真】真剣な表情でインタビューに応えるおおつぼこうたろうさん

一番大切なのは、お子さまの「自己肯定感をしっかりと育てていく」ということだと思います。本人ができないころに目を向けるのではなくて、いいところに目を向けて伸ばしていく。いろいろなお子さまがいて、個性があって。ですので、その一人ひとりにあわせていろんなプログラムを組み立てているんです(教室長:大坪さん)

ママ・パパと相談してプログラムを組んでいくのは、しっかりと研修を積んだ指導員のみなさん。とても驚いたのは「Leaf」における指導員の採用率です。通常の学習塾と比べても厳しい「3.1%」という水準。実は「人間性」も厳しい採用の基準になっているのだとか。

また「Leafジュニア」は、国が定める「児童発達指導事業」の認定を受け、運営している施設です。障害福祉サービス受給者証(※2)があれば、サービス利用料金のうち、9割が給付費の給付対象となり教室に通うことができます。

 

(※2)障害福祉サービス受給者証…こちらを取得することで、行政による給付金を受け、法律に基づき運営している事業所のサービスを受けることができます。お住まいの区市町村にて、サービス申請前の相談や手続きの支援を受けることが可能です。

 

「社会性」を身につけていく、体系化されたカリキュラム

【写真】Leafジュニアの教室。木製の家具が暖かい雰囲気を作り出している

実際、教室での勉強やレクリエーションも見学させてもらった私たち。どういった悩みを持つ親御さんが多いのか。大坪さんに伺いました。

「発語」が気になる親御様が非常に多いですね。あとは席に座って課題に取り組むことが難しかったり、ほかのお子様に手を出してしまったりするなどの「集中力の欠如」や「多動性・衝動性」など。その他ですと、おもちゃで遊ぶのを途中でやめられず「かんしゃく」を起こしてしまったりする「気持ちの切り替えが難しい」など様々ですね(教室長:大坪さん)

この日に教室にきていたのは、発語と社会性の発達に気になるところがある5歳のお子さんでした。

お父さんといっしょに元気に教室にやってきて、トイレに行ったあとには「じゃあ手を洗おっか」と先生に促されて洗面台へ。ちゃんと自分で台を持ってきて高さを調整するなど、ほほえましいやりとりがありました。

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教室で行われていたのは、お友だちとのやりとりやシチュエーションが示されたカードをつかったお勉強。

カードを見ながら先生からの「どんな気持ちかな?」という質問に対して「楽しい!」「嬉しい!」など元気よく答える、その子の姿が印象的でした。

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他にも「気持ちの風船」という教材があるそうです。たとえば、風船を使って「気持ちがしぼんでいる」「ばくはつしそう」など「自分の気持ちを表現する」というもの。まずは自分の気持ちを理解することで、相手の気持ちもわかるようになってくるといいます。

また、「あいうえお」や数字の勉強なども行われていました。ユニークなのは「楽しい学び方」を見つけていくというところ。聞くのが得意な子には、ひらがなの歌で覚えたり、見るのが得意な子さまだとイラストと一緒に覚えたり。

教材は、Leafでも決まった教材があります。ただ、それだけではなくて、先生が手作りをしたり、すごく工夫をするんですよね。自分たちで作るのが難しければ、本社の教材開発グループに自分たちのアイデアを伝えて、作成してもらうこともあります(教室長:大坪さん)

 

子どもたちの教育について、親御さんたちが抱える葛藤と悩み

お子さんが先生と勉強している間、ママやパパは別室のモニターでやりとりを見守ります(親御さんが近くにいるよりも離れて見守る方がいいケースも。しっかりと区切りをつけて勉強やレクリエーションに集中しやすい環境をつくっていきます)

【写真】教室に来ていたお父さん。子供が遊んでいる姿をモニター画面で見ている。

この日、教室に来ていたお父さんにもお話を伺うことができました。幼稚園・保育園だけではなく、なぜ「Leaf」に通うことになったのでしょうか。

じつはウチの子、3歳になるまで一言も言葉を発することができなかったんですよね。保育園で、他の子たちとの差が気になるようになって。ご飯を食べさせたり、寝かしつけたり「育児」は僕らでやれるんですけど、「教育」には正解がないし、どうしたらいいんだろう、と。いろいろと探すなかで見つけました。

Leafに通うことのメリットについてはこう語ってくださいました。

「教え方」を教えてもらえることでしょうか。たとえば、子どもが荒れている時にはムリに教えようとしない。やりたいことはやらせてあげて、同時にちゃんと時間を区切ってあげて。「何時まではコレをやろうね」「その次はコレをやろう」ときちんと見通しを立ててあげる。このやり方はとても参考になりました。

「自分たちなりの教え方」には限界がある、そう感じていたというお父さん。同時に社会の課題につながる部分として、ご自身は「運がよかっただけ」ということも。

情報に対する感度が高い人たちしか、子どもの発達について「おかしいな」って思えないし、その先にある行政から支援、こういった教室があることに気づけないと思うんです。

Leafにしても受け入られる子どもたちの人数には限りがあって、順番待ちの親御さんもたくさんいて。僕はたまたま知ることができて、教室に入れたというだけで。正直、運が良かっただけなのかもしれません。

お父さんの言葉から感じたのは「子どもの発達障害」に対して、親たち自身が情報を取りに行かなければ、なかなか知る機会がないということでした。また、施設やサービスの情報もなかなか届いていない。

お話の最後には、お子さんが5歳を迎えて小学校にあがるタイミングで、率直に抱えている不安について教えていただくことができました。

幸いと言いますか、ここ1年ですごく言葉も話せるようになってきました。子どもが小学校にあがるタイミングですけど、特別支援学級に入れるかどうか、すごく悩んでいるところです。私たち親の責任においてこの子の一生を左右する大事な決断だと思っています。

そこには「見た目にはわかりづらい発達の遅れ」ゆえの葛藤があるといいます。

どの親御さんも「通常学級に入れたい」と思うのかもしれませんが、実際、望めば通常学級に入れることはできるんです。でも、子どもがついていけるかどうかはわかりません。お医者さんにも言われたのですが、最終的には親が決めるしかない。子どものことを考えるなら手厚いサポートが受けられる特別支援学級に入れた方がいいのかもしれません。

同時にそれは「今後、障害者として生きていく、最初の選択になるのではないか」こういった部分で悩まれているとのだそうです。「あと数ヶ月、子どもがどこまで成長をしていくか、慎重に見ながら決断したい」と語ってくださいました。

 

親御さんたちの相談役にも。指導員のみなさんが心がけていること

【写真】保護者の方に説明をしているおおやぶさん

教室でとくに多く子どもたちと向き合っていくのが指導員のみなさん。その子どもの得意なこと、苦手なことを見つけ、できるコトを引き出していく存在。

今回、お話を伺ったのは指導員であり、子どもたちからは「なるみ先生」と呼ばている大藪さん。まずはどういった子どもたちが教室に通っているのか?伺うことができました。

今日見学いただいたのは、発語や感情表出の部分が気になるお子さまですね。「おもちゃ」だったり、人と遊ぶことだったりが好きで。もちろん好きなことが少ない、というお子さまもいますね。たとえば、自閉の傾向が強いお子さまだと、先生やおもちゃに対してもほとんど興味を示さない子もいます。

そういった子どもに対してもしっかりとした教え方があるそうです。

注意をひきつけてから何かはじめるということをしていますね。「おもちゃ」で注意をひくんですけど、注意が向かなかったら派手な音を出すとか、動きをつけてあげるとか。「好きなもの」を見つけてあげるところからスタートする。カードやコインを並べるの好きだったりとか、モノやコトに執着があったり。楽しさも発達にも凸凹があって本当にそれぞれ。お友だちとの関わりはあまり上手ではないけど、すごく勉強がよくできたり。カンタンな足し算ができちゃう子もいたりしますね。

プログラムの組み立て方についても丁寧に教えていただくことができました。

大きくは児童発達支援計画という計画があって、それに沿っています。3つくらい「半年間この子はこういう目標がある」ということを定めて。目標に合ったプログラムを先生同士で共有していく。その日に行うプログラムの細かいところは、その日に担当する先生が決めていくというカタチです。

【写真】真剣な表情でインタビューに応えるおおやぶさん

大藪さんがこの世界に入ったきっかけには、アスペルガー症候群を抱えたお兄さんの存在があったのだとか。障害支援の仕事をしていくなかで、幼少期からサポートしていきたいと「Leaf」の門を叩いたそうです。

子どもたちが小さい成功体験を積んで、成長していく姿をみているとそれって私の成功体験でもあるんだなって気づくんですよね。人間ってそうですよね。「できない」って言われるのは嫌だし。子どもたちと接する時も「できないこと」ではなく「できるようになったこと」にちゃんと注目してあげて、会社の方針でもありますが、強い否定の言葉は使わない。「こういう方法でやったらできるようになるかもしれないね」とか「今度はこれでやってみようか」とか。そういった表現も記録に残して親御さんにもお話しています。

お話の最後には、子どもたちの成長で感じる喜びについても伺いました。

もともと私は大人の障害者支援をしていたので、子どもと接したことってほとんどなかったんです。はじめはどう接すればいいのかわからなかったですし、「本当に成長してくれるか」という不安もありました。

でも、全く人に興味がない子が、卒業するときにはちゃんとお友だちにボールを投げようとしたり、先生のいったことを繰り返すだけだった子が、ちゃんと自分の気持ちを言葉にしようしたりする。ちゃんと成長するし「変わるんだ」という瞬間に立ちあえるのは、すごく嬉しいですね。

 

商店街・地域のみなさんとのイベントも。手をとりあう子育てのカタチ。

「Leafジュニア」自由が丘教室ではオリジナルのイベントやレクリエーションも企画しています。そのひとつ、とてもユニークなのが商店街のみなさんを巻き込んだイベントです。

たとえば、先日開催したスタンプラリーでは、「Leaf」に通う子どもたちで商店街の文房具屋さん、酒屋さん、靴屋さん、薬屋さんを冒険。お店の人にたちにスタンプを押してもらってまわったそうです。

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商店街のみなさんは「Leaf」に通う子どもたちのことをどう見ているのでしょうか。また、教室といっしょに開催するイベントについてどう捉えているのでしょう。

「Leafジュニア」自由が丘教室のすぐ目の前、スタンプラリーにもご協力いただいたという文房具店「わかば」の原田正幸さんにお話を伺いました。

【写真】微笑んでインタビューに応えるはらだまさゆきさん

とてもね、いい取り組みだと思いますね。そういった教育をしてくれて、地域としてもとてもありがたいという気持ちです。スタンプラリーも子どもたちみんなが楽しそうにやっていきましたよ。「よしスタンプを押してやろう」と言ったら一緒にスタンプを手に持ってぎゅっとやったりなんかしてね。「次は酒屋さんだ!」といいながら行きましたね。

「Leaf」だけでなく、地域ぐるみでの子育てイベントなどにとても協力的な原田さん。じつは、発達が気になる子どもたちの教育に特別な思いがあるのだと語ってくれました。

私は今、小学校の少年サッカークラブで監督をやっているんですけども、もともとPTAの会長をやったり、青少年委員(※3)をやったり、いろいろ地域活動をしてきたわけですね。そのなかで小学校の通常教室に合わない子どもたち、勉強に遅れてしまう子どもたちをどう救っていくか、ここは私の関心ごとでもあったわけです。

そこには、原田さんが尊敬する先輩の教えが。

もう亡くなってしまいましたが、青少年委員における先輩で、非常に尊敬している先輩がおりましてね。その方は、障害のあるなしにかかわらず、「いつでも、誰でも、何をしてもいいし、しなくてもいい」という遊び場として、自宅を開放していたんですね。庭にもたくさん遊べるスペースをつくって。

その方に私のサッカークラブを非難されたことがあるんですね。「原田さんのサッカークラブは決まった子たちしか受け入れない。すべての子どもたちを受けれるようなことをしなさい」と。この言葉がずっと私のなかにあるんですね。

 

(※3)青少年委員とは?…行政と地域のパイプ役を期待され、社会教育活動の活性化を図るために選出される。「Leafジュニア」自由が丘教室がある世田谷区では平成28年・29年は、教育委員会が委嘱している非常勤職員として63名が選ばれている。

【写真】当時のことを思い出しながら話すはらだまさゆきさんとそれを見守るおおつぼこうたろうさん

文房具屋さんの店主としてだけではなく、地域活動にも貢献してきた原田さん。その提案によって小学校のオープンスペース(オープンスクール)が実現したこともあったそうです。

昭和の末頃ですが、小学校における教室の仕切りをなくすオープンスペース(オープンスクール)をつくる提案をね、行政にしたんですよ。それが採用されたんですね。3クラス分、廊下の仕切りをなくして、オープンに授業を行うというもので。3クラス合同で3人の先生それぞれテーマを持ち寄って一緒に授業ができるようになりました。学習に遅れてしまう子どもたちもね、一緒になって学ぶためにいいことなんじゃないかなと思いました。

行政、地域、そして民間サービスが手を取り合い、発達が気になる子どもたちの子育てと向き合っていく。原田さんの考え、活動にも触れ、子育ての新しいカタチを考えるきっかけにできるかもしれません。

Leafのクリスマス会ではサンタさん役を買ってでた原田さん。子どもたちからのメッセージカードを手に撮影をさせていただきました

Leafのクリスマス会ではサンタさん役を買ってでた原田さん。子どもたちからのメッセージカードを手に撮影をさせていただきました

文房具店「わかば」の前で

文房具店「わかば」の前で

まずはじっくり話を聞く。相談できるところを増やしていきたい。

取材終盤には「すべての子どもたちが楽しみながら、未来の可能性を広げていくために」課題となっていること、そしてできることについて、あらためて教室長である大坪さんにお話を伺いました。

【写真】真剣な表情でインタビューに応えるおおつぼこうたろうさん

特に今回の取材で気になったのは、当事者であるお父さんより伺った「子どもの発達の遅れや傾向について気がつくタイミングがまちまち」ということ。他の親御さんのケースとは?

最初の入り口として多いのはまわりのお子さまと比べて少し違和感があるというところですね。一番顕著なのは「発語」。あとは席にずっと座っていられないとか、先生の話を聞いていられなくて立ち上がってしまうとか、さまざまです。

そのなかで少しずつではあるものの、気がつく機会も増えているというのが大坪さんの実感だそうです。

Leafにお問い合わせをくださる方で、割と増えているのは区のセンターにご紹介いただけること。あとは3ヶ月健診、お医者さんからのご紹介からお問い合わせくださる方もいます。あとは幼稚園・保育園の先生とのご相談から、というケースもあり、何のきっかけもなくゼロから自発的に気になったという方は意外と少ないかもしれません。

このように「きっかけ」が増えている背景には「社会の関心」の高まりがあるのではないか、そう感じているそうです。

社会の関心が向いてきたのかなとは非常に思いますね。メディアで取り上げられることも増えていますよね。発達が気になるケースも、今までではちょっと特別な子という風に見られていたんですけど、それは個性であり、スキルの獲得によってその子なりに少しずつできることは増えていく。相談できるところがあるよっていうのが少しずつ浸透してきていると感じています。

同時にまだまだ「相談できる場所」という部分においては課題に感じるところもあるそうです。

もちろん少しずつ浸透してきていますけど、こういった幼児教室であったりとか、あるいは区のセンターさんであったり、どうしても限られてしまっていますよね。なので、もっともっとお母様、お父様のお話を聞いてあげられるような「場」があるといいなと僕は思います。面談させていただくと、よく「こういう話をするところがなくて本当に助かります」という風に言われることが多いんです。学校の先生でも、身近な人でも、知識を身につけて相談に乗ってあげられる、そのきっかけになれたらいいですね。

【写真】微笑んでインタビューに応えるおおつぼこうたろうさん

最後に「いま、子育てに悩まれている親御さんにアドバイスはありますか?」という質問には「一人で悩まない」ということの大切さを教えていただきました。

誰でもいいので、やっぱり相談してほしいですね。一人で抱え込んでしまって、一人で悩んでしまうとどうしても色々考えてしまって。袋小路に迷い込んでしまいます。そして「自分がわるい」「この子が悪い」となってしまったりして。ですので、まずは誰かに相談をしてみてほしいと思います。

じつは、この思いを強くした背景に、とあるお母さんとのエピソードがあったそうです。

Leafに急に電話がかかってきたことがあるんです。「すぐに相談させてもらえませんか」と。会って相談を伺おうと思ったのですが、遠方にいらっしゃる方で。よく伺うと「区が運営する相談センターのビルに今きている」とおっしゃるんです。精神的にすごく追い込まれていて。すぐそのセンターの方に電話をかけて「いま1階にいるらしいのでちょっと相談を受けてもらえませんか?」とお願いしました。予約がないとダメということだったのですが、「どうしても追い込まれていて」ということを伝えたらすぐに対応いただけて、ちゃんと相談できたそうです。

このケースの場合「相談した」ということで、もしかしたら大きく救われた部分があったかもしれません。

そして取材の最後、「教室に明るく楽しい雰囲気があること」について触れると大坪さんはこんなことを語ってくださいました。

僕が一番大切にしているのって笑顔なんですよね。笑顔っていうのが僕の特徴というか、小さい頃から「笑顔がいいね」と言われて生きてきたので、取り柄ってそこしかないかなっていうくらい(笑)性格もそうなんですけど、明るく生きたい。ここに来る前、高齢者の方、大人の障害者の方、いろいろな施設で福祉の仕事をしてきました。一通り見てきて思うのは暗い福祉ではなく、明るい福祉をこれからは提供していかなきゃいけないということだったんです。だからというわけでないですが、常にお子さまにも、親御さまにも、笑顔で接するようにはしていて。ここに来る時だけはホッとしてほしいというか、笑っていてほしい。教室は楽しく明るくなれるところにしたいですね。

【写真】笑顔で話しているLITALICOジュニアの指導員

今回の取材では、発達が気になる子どもたちも、しっかりとした教え方をし、支える人がいればより未来の可能性を広げていけるということでした。

同時に「相談できる場が少ない」という課題も目の当たりに。とくに印象的だったのは、大坪さんが語ってくださった「まずは相談してほしい」ということ。そして「困っていたら誰かの相談にのってあげてほしい」ということです。

もちろん持続的なサポートや学習支援は専門家・機関でなければ難しい部分があります。ただ、私たち一人ひとりが関心を持ち、知識をつけていくことで、きっかけを開き、悩みに寄り添っていくことはできるかもしれない。きっとそれがたくさんのママ・パパが抱える不安を解消していくきっかけにもなるはずです。

 

関連情報:

株式会社LITALICO ホームページ

ソーシャルスキル&学習教室「LITALICOジュニア」 (旧名称「Leaf」)ホームページ

(写真/馬場加奈子、協力/森一貴)