【写真】きらきらと輝くストールが並んでいる

きらきらと宝石のように輝く、美しいストール。鮮やかな色みが印象的なこの手織りストールは、実はカンボジアの女性たちの愛情と誇りが詰まったプロダクトなのです。

【写真】朗らかに仕事に取り組むカンボジアの女性たち

【写真】笑顔でカメラを見つめるぬおんちゃんたさんとたかはしさん

(左:「メコンブルー」ヌオン・チャンタさん、右:「ポレポレ」高橋邦之さん)

カンボジア発のシルクブランド「メコンブルー」は、教育や雇用の機会に格差があるカンボジアの女性たちの自立をサポートするために生まれたブランドです。

「メコンブルー」は、カンボジア出身のヌオン・チャンタさんという、たった一人の女性の強い想いから始まりました。そして、メコンブルーを日本で販売する手助けをしているのが、開発途上国の課題解決につながる製品の流通をサポートするNPO法人「ポレポレ」代表の高橋邦之さん。

今回は、カンボジア産の絹糸を使い、カンボジアの女性たちの手によって丁寧に作られる「メコンブルー」の歩んできたストーリーをご紹介したいと思います。

元難民から起業、若い女性の健康のために

【写真】綺麗なワンピースを身につけ、インタビューに答えるちゃんたさん

カンボジアは、ベトナム戦争の影響や内戦と、長年激動の時代を歩みました。チャンタさんは、内戦の時期に家族とともに母国を離れ、タイやベトナムの難民キャンプで暮らしていたのだそう。タイの難民キャンプのNGO「国境なき医師団」で働いていましたが、内戦が終わりを迎えた後カンボジアに戻り、最初に配属されたのがストゥントゥレン州でした。

チャンタさんは、そこでセックスワーカーの若い女性たちの看護にあたります。彼女たちの多くはHIV/AIDSに感染してしまっていたのです。それを知った2001年にチャンタさんは、若い女性のHIV/AIDS患者のためにホスピスを開きました。

ですが、カンボジアが抱える課題はこれだけではありません。民主化に伴い経済発展が続いているものの、地方では男女の機会格差、貧困が大きな課題です。さらに、社会的なサポートが少ない地域では、若い女性たちは教育や雇用の機会が制限され、危険な環境で働かざるを得ない状況にありました。

そこでチャンタさんは「AIDS患者の最期を看取ること」から、「健康な若い人々、特に立場が弱い女性たちのAIDSを予防すること」に軸足を移します。ホスピスを開業した1年後の2002年に、地元の女性たちと、NPO「Stung Treng Women’s Development Center(以下SWDC)」を立ち上げました。

SWDCは、①女性たちに識字と衛生教育を提供しAIDS感染を予防すること、②職業訓練と雇用を生み出し、スキルアップと所得を上げ、職業の選択肢が広がることを目指す団体です。  

地域に溶け込みながら、女性の自立を支援する

【写真】シルクのスカーフ。きらきらと輝く布にはでこぼことした模様が織られている

SWDCが、女性たちの職業として選んだのは、シルク製品の製造でした。
古くから絹織物の文化があるカンボジアでは、織物は女性が担う仕事だったため、保守的な地方でも、違和感のない女性の職業の一つ。地域に溶け込みながら女性の自立支援につながるシルクブランド「メコンブルー」はこうして誕生しました。

「メコンブルー」という名前は、ストゥントゥレン州を通るメコン川から名付けられたのだそう。工房は、2つの織り機と、6人の女性から始まりましたが、10年で織り機は31に増え、500人以上の女性たちの生活を支えてきました。

工房には、10代から30代の女性たちが集い、識字と衛生教育、シルク製品を作る工程すべてのトレーニングを受けます。給与を得ながら職業訓練を受けることができ、託児所や幼稚園、図書館、医務室が併設されていて、誰もが働きやすい安全な環境が整っているのです。

【写真】赤ちゃんと一緒に布を紡ぐ女性

トレーニングを終えた後、女性たちは、正式にメコンブルーの職人となったり、他の事業で雇用されることもあります。

長年の努力によって、農業が主な産業のストゥントゥレンで、メコンブルーは、持続的な雇用を生み出す最大規模の民間事業に成長することができました。女性たちが、職人として安定的な収入を得ることは、地域の女性の経済的自立、さらに多くの子どもたちの教育機会につながっています。

工房の女性たちが、丁寧に時間をかけて作ったストールは、品質も広く認められ、ユネスコの手工芸部門や、日本では「ソーシャルプロダクツ・アワード2015」を受賞しました。  

【写真】糸車にはきらきらと輝く糸がかかっている

カンボジアの女性たちの誇りが溢れるストールを日本でも

 

【写真】綺麗に並べられた2種類のストール。丁寧に織られていてとても美しい

色とりどりの素敵なメコンブルーのストールは、日本でも入手することができます。オンラインショップや、そごう横浜店B1階婦人雑貨エリアで手にとってお試しできます。

メコンブルーを取り扱っているのはNPO法人ポレポレ。ポレポレは、作り手や文化に寄り添い、職人への技術協力、手工芸品の流通支援などを通じて、社会的課題の解決に取り組んでいます。

ポレポレ代表の高橋邦之さんは、初めてメコンブルーを見たときに「これこそ僕が探していたものだ!」と直感したといいます。

ですが、どんなに素晴らしい商品だったとしても、販売チャネルを持っていてマーケットにアクセスできなければ、販売の機会は得られません。

でも高橋さんには、以前、エストニアのおばあちゃんの手編み製品を、日本へ輸入するお仕事を10年間行っていた経験があったのです。その時のインターネット販売の経験を生かし、メコンブルーを自分が日本に広めていこうと決意したのが始まりでした。

商品の素晴らしさだけでなく、メコンブルーをつくる女性たちの仕事に対する愛情に高橋さんは胸を打たれたのだといいます。

高橋さん:彼女達にとって、工房は自分たちを取り戻す場所、自分が自分として生きられる場所。工房に対する愛着や感謝というか、そこで働いている誇りがとても強いんです。

作り手とファンがつながる機会を

高橋さんは、ただメコンブルーを日本で広めるだけでなく、作り手とメコンブルーのファンをつなげる取り組みもしています。

例えば、メコンブルーの購入者から未使用のコスメを募り、作り手の女性に届け、メイクアップアーティストによるワークショップを工房で開催しました。

【写真】メイクを教わるカンボジアの女性たち

(メイクアップワークショップの様子)

高橋さん:自分が作ったものが、どこかで売られていて、どこかで使ってくれてる人はいるのだろうけど、その姿を見ることはなかなか難しい。そこで、『君のことを気にかけています』というメコンブルーを愛用している方たちの想いを、メイクアップワークショップという形で届け、『つながり』『結びつき』を感じてもらえたらと思いました。

このワークショップは、商品を購入した後も、作り手と使い手がつながって、距離がぐっと近く感じることのできる取り組みになっているのです。

【写真】実際にメイクアップワークショップを受けた女性たち。笑顔でスカーフを身につけている

メイクアップワークショップを受けたメコンブルーの女性たち。身につけているのはメコンブルーのスカーフです。

特別な日だからこそ、特別なシルクを

【写真】夫に満面の笑みで微笑みかけるウェディングドレスを着た花嫁mekong blue wedding) 「エシカルな結婚式にしたい、特別なドレスが欲しい!」という女性には、メコンブルーのシルクを使ったオーダーメイドのウェディングドレスがおすすめです。注文を受けてから、メコンブルーの女性たちが、花嫁のために織り上げます。 【写真】ウェディングドレスとタキシードを着て笑顔でカメラを見つめる夫婦mekong blue wedding) ホームページに載せられているのは、実際に結婚式でメコンブルーのシルクのドレスを着た様子。ウェディングドレスは当日まで細かな調整が必要なので、メコンブルーのシルクを発注し、日本のドレス工房で仕立てます。 特別な日に、特別なシルクを身にまといたい方にぴったりのドレスです。

メコンブルー工房の一口校長を募集中!

手織りの世界は奥深いもので、織り方は何通りもあります。NPO法人ポレポレは、2015年8月、東京芸術大学の染織研究室の助手の先生を工房に派遣し、織りの技術を伝えるという取り組みをしました。

ポレポレは現在、「より高い技術を習得したい」「また実施して欲しい」という織り手さんたちから強い要望を受け、2回目の派遣を目指してクラウドファンディングで一口校長を募集中です。

高橋さん:『メコンブルー』で働く女性たちは、元からクラフトマンシップに富んだ人々。カンボジアの伝統技術に、さらなるクリエイティビティの底上げに協力したいというのが私の想いです。

チャンタさんと女性たちが始めたメコンブルーの工房に、多様な織り方が伝わることで、新たなデザインが生まれ、さらにメコンブルーのファンが増えていくことでしょう。一口校長に関心がある方は是非クラウドファンディングページをご覧ください。

関連情報
メコンブルーホームページ / Facebookページ / カンボジア本部ホームページ
メコンブルーオンラインショップ
特定非営利活動法人ポレポレ ホームページ
メコンブルー・ウェディング ホームページ