【写真】電動車椅子に座り、坂道の上から遠くを見つめる人。

「僕たちALS患者の行動の自由を叶えるために、力を貸してください。」

凛とした強い眼差しで訴えるのは、ALS患者の武藤将胤さん。30歳という若さで徐々に体が動かなくなっていく難病・ALSを発症しながらも、病気についての理解を広げるため発信をつづけています。

もし自分がALSになったとしたら、体が思うように動かなくなったとしたら、それでも武藤さんのように自分を活かして生きれるだろうか。

そんな考えが頭をよぎります。

これまで様々なプロジェクトを行ってきた武藤さんの次なるチャレンジは、40歳未満のALS患者に向けて、電動車椅子をレンタルシェアするサービス。今回は、現在クラウドファンディングで支援者を募っているこちらのプロジェクトを紹介します。

筋肉が動かなくなっていく難病、ALS

ALSは、筋萎縮性側索硬化症と呼ばれる難病。体を動かす運動ニューロン(運動神経細胞)が侵される病気で、手足を動かすことが難しくなり、次第に食事や会話、コミュニケーションも困難になります。

発症してからの平均余命は3~5年と言われ、世界で35万人、日本には約1万人の患者がいます。極めて進行が速い病気で、現在治癒のための有効な治療法は確立されていません。

soarでも以前、ALS患者であるサッカークラブ「FC岐阜」前社長の恩田聖敬さんのインタビューを公開しました。
https://soar-world.com/2016/06/15/onda/

病気と向き合って生き続ける覚悟

【写真】街中に佇み、決意を感じる笑顔でこちらを見つめるむとうさん。
武藤さんがALSと診断されたのは2014年10月、28歳のとき。

広告プランナーとして働きつつ、プライベートでは音楽やファッションのイベントをプロデュースするなど、武藤さんは人生をめいっぱい楽しんでいました。2013年頃から手の震えが出るようになりましたが、最初は疲れがたまっていると思って気に留めていなかったそう。でも徐々に症状はひどくなり、数回に及ぶ検査の末にALSを発症していることがわかりました。

武藤さんは日々、昨日できていたことができなくなっていく怖さと戦っているといいます。

「この病気と向き合って生き続けよう」

どんどん症状が進んでいくなかで、そう決意した武藤さんが立ち上げたのが一般社団法人「WITH ALS」です。

ALSへの理解を促す「WITH ALS」

【イラスト】WITH ALSのロゴが描かれています。
「WITH ALS」は、ALS患者やその他難病患者、ご家族、非患者のQOL(Quality of Life)を向上させるため、ALSへの理解を促し、治療方法や支援制度を向上させることを目指しています。

活動の軸は2つあり、1つはALS患者が置かれた現状を武藤さん自身の体験をとおして世界中へ発信すること。「WITH ALS」のホームページでは「LIFE LOG」と題した映像が公開され、武藤さん自身の言葉でALSのこと、病気だとしても前を向いて走り続けていきたいという強い思いが語られています。

また、”LIFE DESIGN“という若い世代に向けた授業プロジェクトも始動。中学校でALSや自身の思いを生徒に伝える授業を開催するなど、様々な方法で発信を続けてきました。

もう1つは、ALSや様々な障害と闘う者と健常者の垣根を超え、人を支えるテクノロジーを支援していくプロジェクトです。

【写真】大勢の人が画面の前に立つDJに注目している。

たとえば、昨年リリースされたJINS MEMEとコラボレーションした「FOLLOW YOUR VISION プロジェクト」。こちらはALS患者が発症後も正常に機能を保つことができる眼球の動きに注目し、DJとVJを眼の動きだけで同時にプレイするシステムを開発しました。

武藤さんはもともと音楽が好きで、DJにチャレンジし始めた矢先にALSを発症したのだそう。今はもう手でDJをすることはできませんが、「自分が感じている感情を音楽や映像で表現したい」と思ったことからプロジェクトが始まりました。

自身のアクションを通じて、いろんなハンディキャップがあるすべてのひとに表現の自由を届けたいと願う武藤さんの気持ちがたくさんの人を動かしたのです。

パーソナルモビリティ「WHILL」で広がる可能性

【写真】住宅街で電動車椅子に乗っている男性と、赤ちゃんを抱いて電動車椅子に座る女性。
今回新たに武藤さんがチャレンジするのは、電動車椅子によるALS患者向けの生活支援サービス。ALSの患者は症状が進行すると、電動車椅子を利用するようになります。ですが、武藤さんのような40歳未満のALS患者は、介護保険が適用されないため、電動車椅子の購入には、負担が大きくとても困ります。

ALSは極めて進行が速い病気で、電動車椅子を手で操作することも困難になってしまうため、乗ることが出来る期間は限られています。また、購入には保険が適用されず、利用できる期間も限られてしまう。様々な理由で電動車椅子購入を見送ってきた方に向けて、必要最低限の経費(運搬費等)の負担のみで電動車椅子のレンタルシェアを実現しようというのが今回のプロジェクトです。

レンタルシェアされるのは、新しいタイプのパーソナルモビリティの「WHILL」。車いすユーザーは、100mというわずかな距離を移動する際にも、 社会的な不安や物理的なリスクを感じている人といいます。でもスマートで機能的なモビリティがあれば、その人らしく行動範囲を広げられるのではと考えつくられたモビリティです。

車椅子と聞くと障害者用の乗り物という印象がとても強く、抵抗感がある方も多いそう。でも、WHILLの洗練されたデザインであれば車椅子に対する抵抗も減り、「前向きに車椅子を選択することができる」と武藤さんは語ります。

全ての人の行動の自由を叶えるために

デザイン性に優れ、機能的にも移動しやすさを提供するWHILLは、人々に外出する意欲を喚起させます。きっとWHILLがあることで、外出をためらっていた人も「今日は外に出かけてみよう」「友人に会いにいこう」など積極的な行動ができるようになるはずです。

【写真】仲間とともに前にたち、マイクを向けられるむとうさん。

「全ての人に行動の自由を。」ーーこれが武藤さんが掲げるプロジェクトのメッセージ。

自らの意志で行きたい場所に行ける。そんな全ての人の行動の自由を叶える未来をつくっていきたいと、武藤さんは考えています。

武藤さんがチャレンジするWHILL購入費用を募るためのクラウドファンディングは3/30まで。ALSへの理解を広げるため、音楽、ファッション、映像制作など様々なスタイルでアプローチを続けていく武藤さんを応援していただけると嬉しいです!

関連情報:
一般社団法人「WITH ALS

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