自分の弱いところや嫌いなところって、話しにくいですよね。「どういう反応されるんだろう?」とか不安になるじゃないですか。でもここでは何を話しても、誰も私を責めたりしない。受け入れてくれるんです。
そう話してくれたのは、居場所型学習支援「リファインド」に通う生徒のひとりです。
家に引きこもりがちだった時期もありましたが、今はリファインドが外出するきっかけにもなり、ほぼ毎日通っているのだそう。高校を中退した彼女にとってリファインドはいま大切な“居場所”となっています。
リファインドは高校を中退した人や、定時制・通信制高校に通う生徒などが、主に高卒認定試験のための学習支援を受けられる場所です。
リファインドが支援をするのは16歳~25歳の若者たち。“子ども”ではないけれど、全ての責任を一人で担う“大人”だと言い切ることも難しい年齢です。私自身思い返してみると、いつのまにか大人として扱われ始めたこの時期、将来への期待と不安を抱えていたように思います。
そんなときにそばにいてくれた、家族や学校の先生、そして友人たち。周囲のひとたちが私に居場所を与えてくれたからこそ、ここまで日常を積み重ねることができたのだとふと気づきます。
そんな“居場所”がどんな状況の人にも当たり前に存在するようにとつくられたのが、リファインドです。学校でも家族でもないこの場所で、どんなふうに若者のサポートをしているのでしょうか。
勉強したり、休憩したり、話をしたり。それぞれが自由に過ごす居場所型学習支援
予備校や学校が多いことから学生の多い街としても知られる四谷。JR四ツ谷駅から歩いて5分ほどの、大通り沿いのビルの5階にリファインドがあります。
中に入ると、本棚には参考書が。試験問題が書かれた張り紙や、ホワイトボードが並んでいるのを見ると、学生時代を思い出し少し懐かしい気持ちになります。
リファインドを運営するのはNPO法人キッズドア。キッズドアでは「すべての子どもが将来への夢や希望を持てる社会の実現」を掲げ、経済的に苦しい家庭、ひとり親家庭、また、児童養護施設や被災地で暮らす子どもたち、さまざまな困難な状態にある子どもの支援をしています。
リファインドは、16歳~25歳の若者に向けた東京都教育庁の委託事業です。高校を中退したり、定時制や通信制高校に通う生徒、その他学校に通学することに悩みや不安を感じている生徒が来ることができます。
開催日は週に5日で、火・水・木・土・日曜日の13時から20時30分まで。この日は6人の生徒と、スタッフのみなさんが私たちを迎えてくれました。
こんにちはー!
チョコたべますか?はい、どうぞ!
自然体で声をかけてくれたり、お菓子をくれたり、とても和やかな雰囲気。何者であるかを名乗る前から生徒たちは私たちを自然に受け入れてくれました。
リファインドには活動を応援する人々の支援によって、冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器などの道具、お菓子やお米などの食材も用意されています。スタッフと生徒で一緒に自炊をして食事の提供もしているのです。
「居場所型学習支援」という名の通り、リファインドでは「テスト勉強しなきゃ!」と教科書に取り掛かる生徒もいれば、夕ご飯を食べる生徒、スタッフや生徒同士で話をしている生徒など、自由に過ごしている光景がありました。
生徒たちが「お姉さんみたいな、お母さんみたいな存在」と慕う存在である、スタッフの小杉真澄さんはリファインドの立ち上げから運営に関わっています。
リファインドには小杉さんの経験や思いがたくさん詰まっているそう。小杉さんご自身についてや、立ち上げから現在に至るまでの思いを伺いました。
被災を経験して「誰かの役に立つ人生にしたい」と思った
小杉さんは生徒たちと接することはもちろん、リファインドのスタッフのマネジメントや、生徒との関係性を見守る役割も担っています。
「人の役に立つ仕事がしたい」
そう思うようになったのは中学2年生のときのこと。新潟出身の小杉さんは、新潟県中越地震で被災を経験しました。
小杉さん:今でも鮮明に覚えています。2004年10月23日、突然の地震があって、そこから1週間ほど車中泊をして、1週間後に無事だった隣町の親戚の家に1週間いて。そのあとは6畳の部屋が2つあるだけの離れみたいなところに、家族6人で1ヶ月半くらい住んだんですね。
馴染みのない場所での生活で、食事は外で作り、外で食べるような状況。“落ち着いた生活”ができない時期の経験を通して、それまでと価値観ががらりと変わってしまったといいます。
小杉さん:地震直後は、こんな時お金って無意味なんだなあとか、食べものって大切だとか、屋根のある暮らしってすごいことなんだなあとか。それまで当たり前だと思ったことが当たり前じゃないと気づきました。死ぬか生きるかといった状態になったときに、「誰かの役に立ちたい。そんな人生にしたいな」と思っていたような気がします。
その後小杉さんは隣町の高校へ進学。高校時代は自分の生き方に悩みながら過ごしました。人間関係の全てがうまくいっていなかったというわけではないけれど、なんとなく「居場所がない」と感じていたのだと振り返ります。「学校辞めようかな」そんなことを考えながら、だんだんと学校へ行けない日も増えていく日々。
あるとき偶然、地域の体育館でダンスをしている“格好いい”お兄さん、お姉さんたちに出会います。そこで、ダンスという共通の趣味を通して、年齢が離れていても心が通じ合うことができるのだと実感を持ちました。
小杉さん:輪に入って一緒にダンスをしていたらすごく楽しくて「ここが居場所だ」と思えた。それをきっかけに、学校に居場所がないことが以前より苦に感じなくて、学校にも行けるようになったんです。
私は学校でどう思われようが、私のことを全力で受け止めてくれる人がダンスのコミュニティにはいるから、大丈夫だと安心した記憶がありますね。
高校を卒業後、大学では経営学部に所属。所属したゼミの勉強会の一つで、企業でも行政でもない、非営利の活動を行う団体である「NPO法人(特定非営利活動法人)」という存在を知ります。ゼミでたくさんのNPO法人の方と話をする機会を通して、女性の産後ケアを行う認定NPO法人マドレボニータに出会い、インターンをはじめたのでした。
リファインドを運営するNPO法人キッズドアに出会ったのは、就職活動のとき。当時女性の支援に関わっていた小杉さんは、キッズドアの活動のひとつである、被災地での女性やその子ども支援に興味を持ちました。
小杉さん:被災地のシングルマザーの現状にすごく心が痛みました。被災してシングルマザーになられた方には支援があっても、もともとシングルマザーだった方への支援はほとんどないのだと聞いて。子どもたちにはそんなことは関係ないじゃないですか。支援が必要なはずだと、私自身も子どもとして震災を経験したからこそ思いました。
インターンの経験を通して、「女性」と、「子ども」や「教育」は切り離せないと感じていた小杉さん。その「子ども」を真ん中にした取り組みに惹かれ、チャレンジしたいと思いキッズドアで働くことを決めました。
「学校をやめた“その先”を支援したい」リファインド立ち上げ
新卒でキッズドアに入社したあとの約3年間、小杉さんは都立高校で土曜補習の学習支援を担当したり、自主事業として学習支援をしながら高校生と接してきました。そこで生徒の置かれた多様な環境を知ることになります。
「自分にはここは合わない!」と途中で高校を辞める選択をとる生徒。学校に馴染めず、家から出られなくなってしまった生徒。もともと家庭が経済的に不安定な状況で、進学したけれども、通学し続けるのが厳しいのだと悩みを持つ生徒。
他にも、例えば児童養護施設の子どもは学校を辞めてしまうと、同時に施設からも出なければならない場合もあるといいます。生活の場と教育の場を一気に失い、幼い頃から当たり前に身近にあった周囲との関わりを絶たれてしまうのです。さらに、アルバイトや就職をして自分で収入を得て、暮らしていかなければなりません。
小杉さん:どうしたってしんどい子ほど制度から漏れる。でも学校を辞めて孤立してしまう彼らに、私から解決策を提示することができないもどかしさがあったんです。
キッズドアではこれまでも経済的に厳しく塾に通えない家庭に向けた、学習支援をしてきました。無事高校受験に成功したたくさんの子どもたちを送り出してきましたが、高校生活に関して安心して相談できる場や、サポートしてくれる人がいないばかりに、高校を中退してしまい、その後孤立してしまう子どもたちもいました。
そこで、高校を中退する前に駆け込める場所、そして中退してしまっても、孤立をせずに社会と繋がれる場所をつくろうと、リファインドがはじまったのです。
小杉さん:高校を退学した生徒や、なにかに悩んでいる生徒にむけて、学校のその先の支援をつくると聞いたときに「あっ、私はこれをやりたい」ってすぐに思って立候補しました。
居場所づくりにあたって小杉さんは自分の高校時代を振り返り、自分にとって居場所となったダンスコミュニティのことを思い出しました。
小杉さん:貧困や困難といったマイノリティのような要素もある生徒たち。きっと息苦しさや不安を抱えているから、勉強だけをやる場所には来ないんじゃないかなと思って。でもここはダンスする場所ではないから、どんな場所にしていこうか?と考えて…。
生徒は安心して帰って来ることができて、スタッフはいつでも彼らをあたたかく迎え入れることができる。小杉さんはどんな場をつくればそれが実現できるかを考えました。そうしてたどり着いたのが、勉強するだけではなく、ご飯を食べたり話をしたりと自由に過ごすことのできる、“居場所型”学習支援というかたちでした。
こうして2016年10月、東京都教育庁からの事業委託というかたちでリファインドはスタートしました。生徒たちは学校の先生や、行政機関の支援窓口からの紹介、そしてキッズドアが発信するTwitterやブログなどを通して集まっています。
小杉さん:経済的な困難や、生活基盤が安定しないという生徒、家に居場所がなかったり、学校で上手くいかないことがあった生徒。自分のことは誰もわかってくれないという状況で駆け込んできてくれた子がいたり。いろいろな状況の子どもたちの、逃げ場になっていたらいいなと思っています。
スタッフの姿から色々な大人のそれぞれ違った生き方を知ってほしい
生徒たちと接するリファインドのスタッフもまた、大学生や社会人のスタッフ、ボランティアなどさまざまな人たちで構成されています。
高校中退を選択した人、通信制の高校を経て時間をかけてから大学に進学した人、一度社会に出てから大学に入学したという人。そして今の職業やリファインドとの関わり方、生き方もそれぞれ違います。そんな姿に生徒たちも影響を受けているようです。
小杉さん:「この人と気が合ったんだね!」とか、「この職業にあなたは興味があったのね!このスタッフさんが詳しいよ!」と接点をみつけながら関わってもらっていて。そこから新しい勉強をはじめたり、やる気や勇気を出したりする姿が嬉しいですね。
小杉さん:将来に悩んだり、「こうでなくてはいけない。この道しかない」と狭めて考えてしまうときだってありますよね。でもいろいろな大人と接することで「それぞれ考え方や生き方は全然違うけれど、みんな生き生きとしている」ことを伝えて、あんまり思いつめずにいてもらえたらって思います。
スタッフと生徒の会話では、趣味や休日のこと、恋愛のことだって話題に上がります。そしてもちろん、家族や生活のことも。
なんでも話しやすい関係性は、辛抱強く、とにかく時間をかけて築いてきたのだと、小杉さんは教えてくれました。
小杉さん:ここは学校じゃないから、私たちは先生でもない。何か物事を教える立場ではなくて、彼らに一番寄り添える人、伴走するような…ただ横にいるだけでもいいのかも。そんな姿勢でありたいです。
学校の先生とか親御さんの「学校には行ったほうがいい」の言葉に追い詰められているように見える子へは、「逃げてもいいんだよ」と伝えることもあります。先生ではないから言えることもあるのかなって。
リファインドではスタッフだから、年上だからといった上下関係はありません。年齢にこだわらず一人と一人のかかわりを築くことに目を向けているのです。
必要とされる嬉しさ。自分が自分でいられる場所
ここが今は自分の居場所っていうか…。
そう話してくれたのはリファインドに通う生徒のひとり。高校を中退するときに先生から紹介をされたことをきっかけに、リファインドに通うようになりました。
高卒試験は解いてみたことがあったけれどけっこう難しくて、一人でやっていくのはキツイなって。予備校とか塾とかに通うのもすごくお金がかかるし。
でも私、人との関わりが苦手な部分があって…。なんだか距離感がつかみにくいから。学校の先生は「リファインドには特殊な子が集まっている」と思っていたみたいで、「おまえには合わないかもしれないけど」って言われました。だから最初は微妙な気持ちでここに来たんです(笑)。
実際は心配と裏腹に、最初からリファインドで過ごす時間が心地よいと思えたのだそう。その理由は、「自分が必要とされている」と感じることができたから、と嬉しそうに話します。
この間は、高校1年生の男の子が「高卒認定を受けようと思っているけどどう思う?」と聞いてくれて「この教科だったら、このくらいの点数はいけるよね」とか話しました。私は高校に行っていたから、そういう経験を話したりできるんです。
あとは料理も好きなので、みんなのご飯を作るのも楽しいし、頼ってくれるのが嬉しいです。
スタッフと生徒でレシピを探しながら「これが美味しそうだから作ろう!」と献立を考えているのだそう。茄子の焼きびたしを作ったり、大根とさつま揚げを煮込んだりと、料理は本格的です。小杉さんが後から「この子はうちの料理長なんですよ」と、こっそり教えてくれました。
この生徒は、リファインドに通って勉強をして高卒認定試験に無事に合格。4月に専門学校に行く予定でAO入試試験の内定をもらっていましたが、家庭の事情や金銭的な問題も重なり、入学が難しい状況となってしまいました。
専門学校を諦めたから、何もしないというのは違うなって。うまくいかないことがあったとき今までは周りのせいにして、ずっと家に引きこもっていたけれど、ここにきて、みんな頑張っているから私も何か一つでも頑張ろうと思って。できることを見つけて…。
リファインドに通う中で、小杉さんやスタッフとの何気ない会話から簿記の検定試験を知り、今は合格に向けて勉強をしています。会計に関わる仕事をしているスタッフの存在も影響しているのだとか。
ここに来ることによって”勉強する”ことが身についたので、今はそれを辞めたくないなと思っています。検定の勉強や、キッズドアのビジネスコンテストにも挑戦しようと考えているところです。
つらかったはずの経験を落ち着きを持ってふり返り、さらに今の目標を力強く語る姿勢からは、覚悟が伝わってきます。
リファインドでともに勉強をする生徒は、「友達というより同志のような関係」なのだと教えてくれました。家庭のことや普段はなかなか友人に話せないようなことも、不思議と初対面のときから話せてしまった、なんてこともあったそうです。
誰かが落ち込んでいたらタイミングをみて声をかけたり、「ちょっとイライラしているのかな?」というときは見守ったり。自然とお互いを思いやりながら過ごしています。
私はいま、すごく自然体で過ごせています。今までって、親とかもですけど言いたいことを言うと、責めてくる感じが多かったんです。本当は守られたくて話しているのに、責められてしまうみたいな。だけど、ここではみんな「大丈夫?」「辛かったね」とか、わたしを否定するようなことは言わないし、むしろ救われるようなことを言ってくれるから。すごく感謝しています。
ここでは、いい子でいなくてもいい。自分らしくいていい場所
感謝のことばや、「この場所が好き」といった思い、そして自分の“弱さ”までも、まっすぐに口にする生徒のみなさん。小杉さんをはじめとするスタッフもまた、ご自身の経験や本音を、包み隠さず生徒と話をしています。
小杉さん:多分、人が恥ずかしいと思うことも私は言うタイプで。例えば「あなたを大切に思っているよ」とか。くさい言葉ですけど「あなたはあなたの価値観でいいんだよ」とか、「好きだよ」「ありがとう」とかも、言葉にして伝えています。それと、無視をされようが何を言われようが、愛情を注ぎまくっています(笑)。
その根底には、生徒たちが素直な自分を思いっきりさらけ出すことができて、なおかつそれが認めてもらえる場所をつくりたいという思いがあります。だから小杉さんも、自分の思いを正直に伝えるのです。
もうすぐ大人のような、でもまだ子どもでもあるような、そんな概念を行き来する年齢のリファインドの生徒たち。学校、アルバイト先、施設などの生活の場で「目の前のこの人は何を考えているんだろう?」と顔色を伺いながら、気を遣いながら生きていると、小杉さんは考えています。
小杉さん:「ここは自分らしくいてもいい場所か、いい子でいなきゃいけないのか」って、年代的にもしっかりと考えているんですよね。リファインドは彼らの居場所になってほしい。なのでなるべく私たちのことも深く知ってもらいたいし、私たちもあなたのことがすごく気になっているんだよっていうコミュニケーションの取り方をするようになりました。
リファインドに来て日が浅い生徒のなかには、本音を話そうとしない生徒や、距離をとってコミュニケーションをとる生徒もいます。それでも、時間をかけてゆっくりとリファインドを自分の居場所にして、さらにこの場所での自分の“役割“を見つけていく。そんな姿を小杉さんは見守ってきました。
小杉さん:「何か手伝うことない?」とか「小杉さん、今日疲れているね」って言ってくれたり、新しい生徒さんが来たときに「案内するよ!」とか。どんどん場に貢献してくれるようになるんですね。
家族内で「居場所がない」という生徒もいたんですけど、その子が初めて自分の主張ができたりとか、私たちがアドバイスすることに対して「わたしはこう思う」と言ってくれたりしたときは、ことばにならない感動がありましたね。
高卒認定試験と、もうひとつの目標「自立」
リファインドに通う生徒にとって、まず高卒認定試験に合格することは大きな目標のひとつ。実際に小杉さんも生徒の試験前はそわそわと緊張しながら日々を過ごし、合格発表のときは溢れる涙をぬぐいながら、一緒に喜んできました。結果通知書をリファインドに郵送されるように指定している生徒もいたというほど、リファインドは彼らにとっての居場所となっています。
そしてその先の未来、彼らは「大人」として、自分の力で人生を積み重ねていくのでしょう。
でも、私たちは一体どんな過程を踏んで「大人」になったのでしょうか。生きていくために必要なことはたくさんあるはずですが、小杉さんはリファインドで生徒たちに、「自分の価値観で、自分の選択で生きていくこと」の大切さを伝えています。
小杉さん:「安定した仕事に就く」とか「好きなことを仕事にする」とかって色々な選択がありますけど、「これが自分で選んだ道」と言えることが大切だと思います。それは自分に対して責任を持つことなので、すごく難しいとは思うのですけど…。
その自分なりの価値観を築くためのステップとして、情報の取捨選択が重要であると小杉さんは考えます。何かを間違えてしまったり、困難な状況に出会ったときに、何ができるのかを知ることは大切なこと。調べものをしたり、時には誰かに頼ってもいいのだということを、リファインドでの経験を通して身につけてもらいたいのだそうです。
小杉さん:例えば「携帯料金を滞納してしまい使用を止められてしまった!どうしよう!」というときに、パニックになり精神が乱れてしまう…という場合もありますよね。でも、とりあえずリファインドのスタッフとか誰かに話してみたら「じゃあ携帯ショップ行けばいいじゃん!」「一緒に行こうか?」と言われて、「あぁ、携帯ショップに行けばいいのか!」と納得して行動ができて、解決したりとか。
他にも「こんな症状が出ていて、どうしたらいい?」と聞かれて、「わたし医者ではないからね(笑)」と言いながら、一緒に低所得者に向けた医療サービスを調べたりしたこともありました。
他にも、オープンキャンパスや学校説明会に生徒と一緒に参加したり、病院について行ったり。
私にとってスタッフは、お母さんやお父さんみたいな存在でもあります。でもその時によって友達とか兄弟姉妹のようになってくれたり。実際一緒にいるところを見た人には親子と間違えられたりもしたんですよ(笑)。
ある生徒は、そんなふうに話してくれました。
小杉さんをはじめとするスタッフたちの支援は、リファインドの拠点を飛び越えて、さまざまなかたちで行われているのです。
「逃げてもいい」その先の支援ができる存在に
今後リファインドでは、まだ情報が届いていないひとたちに向けて、学校や支援機関と連携しながら、支援を届けていきたいと考えています。
小杉さん:例えば今もし所属しているところで、居場所がないのだと感じたら、どんどん逃げていいし、知らないところにもどんどん飛び込んでいってほしい。いい子にならなくてもいいし、「こうでなくてはならない」という考えから自分を解放してあげほしいなって思います。
逃げることに後ろめたさを感じている子って多い気がするんです。だけど、例えば「中退」や「登校しない」というのは一つの選択肢でしかないですし、それによって将来の全てが変わってしまうなんてことはないはず。“前向きに”逃げてほしいなって思います。
「逃げてもいい」と簡単に言葉にするだけではなく、リファインドはその「逃げた先」で、安心して必要なサポートが受けられる存在を目指して、運営を続けてきました。そしてすでにたくさんの生徒たちにとっての、安心できる“居場所”となっているのです。
家庭や学校など、社会のあらゆるところで困難と向き合わなければならない瞬間は、誰にでもやってきます。なかにはすぐに解決することは難しい問題もあるはずです。
それでも「解決の糸口が見つかった」と思えるだけで、前を向くための第一歩になるのです。さらには、リファインドを介して公的な支援に結びついたり、未来のために今できる行動を見つけられることだってあります。
リファインドに訪れる生徒は自分のできることでその場へ貢献したり、自ら学びを得て道を切り開いていくなど、能動的なアクションをとっていました。生徒たちはけっして、一方的に支援を受けるだけではないのです。リファインドの“心地よさ”は、こういった互いに支え合う関係性がつくりだしているのかもしれません。
「孤独を抱える若者たちに、“自分らしくいられる”居場所を」
リファインドはきっとこれからも、たくさんの若者たちの可能性を広げていくのでしょう。
(写真/田島寛久、協力/野田菜々)