ちゃんと妊活したいなと思って。
先日、友人が多忙な仕事を辞めて、暮らしをスローダウンすることを選びました。前向きにサラリと話してくれた彼女ですが、その大きな決断の向こうにはさまざまな葛藤や思いがあったはずです。
彼女が語った「妊活」というポジティブな言葉とはうらはらに、不妊治療と言うと、これまでの社会ではなんとなく「触れにくい話題」という雰囲気があったように感じます。日本で不妊に悩むカップルは「5.5組に1組」に達し、誰の人生にも起こりえる日常のテーマであるはず。それなのに多くの当事者は周りに話しづらかったり、自分だけで頑張らないといけないようなプレッシャーを感じたりと、孤独や疲労に追い詰められてしまうこともあるのです。
ーー独りでがんばらなくていい不妊治療にしたい。
そんな多くの人の思いが形となって、不妊治療の生活を応援するアプリ「GoPRE(ゴープレ)」が、この秋誕生します。
「不妊治療生活を楽にする」ことに、とことん寄り添うアプリ
不妊治療生活応援アプリ「GoPRE」の名前は、「Go!Pregnant!」を略したもので、「一緒に母になろう」という思いが込められています。
終わりの見えない治療、誰にも言えない孤独感、多額の治療費…。不妊治療の「不」は、もっと「楽」にできるのではないか。
「授かりたい」というポジティブな願いを支えたい。
ゴープレでは、治療に関わる膨大な情報や記録を、スマホで手軽に「見える化・整理整頓」でき、治療の管理に費やす時間やエネルギーが軽減されます。また、これらの情報をパートナーとリアルタイムで共有できる機能によって、密にコミュニケーションがとれることで、孤独の解消にもつながります。治療に取り組む日々の暮らしに、ずっと寄り添ってくれる、そんなアプリなのです。
そして、ゴープレのもう一つの特徴は、不妊治療経験者のみなさんが中心となって開発していることです。
不妊治療経験者で立ち上げた会社「ライフサカス」。暗闇の中にこそ光はあり、苦悩の中からこそ希望は生まれる
ゴープレのアイディアを生み、開発に取り組んでいるのは、株式会社「ライフサカス」。ライフサカスは、創業メンバー6人のうち4人が不妊治療経験者です。CEOの西部沙緒里さんは、広告代理店に勤めていた2015年に、乳がんを患いました。
手術と治療を繰り返す中で、さらに大きなショックが訪れます。「あなたが妊娠できる可能性は、10%以下でしょう」と宣告されたのです。
「そのうち自然に授かる」と当たり前に思っていた未来が断たれるのは、人生で味わったことのない、後ろからいきなり頭を殴られるような衝撃でした。不妊治療をするにしても、授かれる保証は全くないし、どのくらい頑張ればいいのかもわからない。深い闇の中で、ずっと過ごしているような感じでした。
そのころ、一足先にがんと不妊に直面していた黒田朋子さんと出会い、社会のために自分たちの経験を役立てたいという思いが生まれます。「暗闇の中にこそ光はあり、苦悩の中からこそ希望は生まれる」ということを伝えたい。2人は、不妊治療をする女性を応援したいと「ライフサカス」を設立しました。
ライフサカスは、不妊、産む、産まないに向き合うすべての女性やカップルに向けて、ウェブメディア「UMU」を運営しています。不妊というテーマだけに焦点を当てるのではなく、産む・産まないといった、さまざまな人びとの生き方や家族のあり方を、パワフルな体験やリアルな言葉を通じて紹介するメディアです。
その他にも、不妊という社会全体の課題について理解や支援を広めたいと、企業や学校、自治体などで、講演や研修なども行っています。
不妊治療生活は、「もっと楽に、もっと楽しく」できる。迷路をさまよう日々に、光を照らすようなアプリを
今ライフサカスは、不妊治療に取り組む人びとの日常を応援するために、「ゴープレ」の開発に尽力しています。そのきっかけを、西部さんはこう語ってくれました。
私が不妊治療を始めたころ、勇気を出して周りに話してみると、驚くべきことがありました。同世代の友人たちが、同じような経験を次々に打ち明けてくれたのです。その数は、20人近くにも上りました。彼女たちからは、治療や仕事との両立、家計、孤独に悩まされる、「隠された心の叫び」が聞こえてきたんです。
そこから1年半かけて、ライフサカスではさまざまな当事者にヒアリングを行いました。
「ゴールも目安もなくただただ翻弄される、ままならない治療だと思った」(41歳/経験者)
「高額な費用に、仕事との調整。治療もややこしくて、やることが多すぎる」(34歳/治療中)
「パートナーにうまく説明できない。巻き込み切れないのが苦痛」(38歳/治療中)
見えない原因、組めない予定、読めない治療費、周りに言えない孤独、ままならない状況へのストレス。“ないない尽くし”の不妊治療生活の中で、当事者が最もストレスを感じていたのは、「終わりのない迷路を独りさまよう」ような日常でした。
不妊治療生活を、「もっと楽に、もっと楽しく」変えていくことはできないだろうか。とことん経験し、とことん寄り添ってきた私たちだからこそ、絶対にできるはずだ。
ライフサカスのメンバーは、当事者・経験者だからこそ、課題やニーズをしっかり理解しています。検証を続けた結果、スマホアプリを使って、日々の治療生活の管理を整理し、自分が治療のイニシアチブを持って、さまざまな選択や判断をしやすくするサポートツールの開発を始めたのです。
あらゆるデータや記録、スケジュールを、スマホでらくらく管理。パートナーとのシェア機能も
ゴープレには、不妊治療当事者のニーズに応えるいろいろな機能が備わっています。
① 写真でかんたん記録!分類や検索も
治療にかかる煩雑で膨大な資料・データを、写真でどんどん記録できます。13のカテゴリーに分類し、検索も可能。病院の長い待ち時間に、スマホ一つで手軽に記録・管理できるのも、利点です。
② パートナーと瞬時にシェアできる安心感
夫婦のコミュニケーションをサポートしてくれるのも、このアプリの魅力です。アプリに入力された記録は、瞬時にパートナーに通知され、「みたよ」マークで既読確認もできます。従来の不妊治療では、女性が独りで頑張りがちだったところを、夫婦で一緒に考えていけるようにサポートしてくれるのです。
③ 一目でわかるカレンダー機能で、仕事との調整もらくらく
治療スケジュールや経過も、カレンダーで一目瞭然。一周期にどのくらいの頻度・タイミングで通院しているかがわかると、仕事との調整などスケジュールも組みやすくなってきます。
④ 不妊治療専用「家計簿」で、予算や計画を立てやすく
不妊治療専用の「家計簿」機能もあります。治療の周期ごとにまとめた費用をチェックできるので、助成金を申請するときや、これから治療に費やす予算を検討するときに、判断の指標になります。
ゴープレで、治療の管理に費やす時間やエネルギーが軽減され、パートナーとのコミュニケーションが改善されることは、日々の孤独や疲労、わずらわしさを解消する助けになります。また、あらゆるデータを「見える化」し、いつでもどこでもアクセスできることで、治療に対する感情的な思いとは別に、理性的な判断ができるようになります。
まるで不妊治療の日常を共にする伴走者のようなアプリなのです。
開発を手がけた黒田さんはこう話します。
とにかく自分ががんばれば、という風に、従来の不妊治療は「女性が独りですること」になりがちだったかもしれません。でもこれからは、カップルで一緒に見ていく、考えていくものに変えていけるはずだと考えたのです。このアプリの誕生を通じて、一緒にみんなでがんばっていこう、という「明るい不妊治療」のあり方を提案していきたいと思っています。
子どもを授かりたい、それは人生のポジティブな挑戦。みんなに頼っていい、応援するよ
ゴープレは、この秋にテスト用のベータ版をリリースする予定です。さらに、今後たくさんの当事者へ届けるために、iOS版やアンドロイド版の開発を進めようと、今クラウドファンディングに挑戦中。アプリの追加開発やPRのための資金を募るとともに、モニターユーザー100名を募集しています。
不妊は、自己責任だけではなく、「社会全体で解決されるべき課題」だと思います。本気で支えよう、応援しようという社会の空気が、もっともっと必要です。
不妊治療に「不」の文字がなくなるくらい、むしろ楽しくてオープンな、課題が課題でなくなるような社会を、つくりたい。皆さんにぜひ、「不妊」「不妊治療」というソーシャルイシューの伴走者、応援者になってほしいのです。
家族の形、幸せの形、人生の形は、さまざまです。いろいろな人生の選択が自然に受け入れられ、子どもを持つこと・持たないことへのプレッシャーを感じなくてもよい社会になったらいいなと思います。そして、子どもを持とうとする挑戦が、特別視されず、人生のポジティブな挑戦の一つとして、自然に気軽に応援されていったら。
不妊治療に限らず、闘病や介護、子育てなども、周りに頼らずに独りで頑張ってしまいがちです。「周りに頼っていい、みんなでやろう、応援するよ」。そんな社会の雰囲気やサポートを、これからみんなで支えていけたらいいですよね。
ゴープレは、そんな社会が当たり前になるきっかけをつくり、私たちの日常をサポートしてくれる存在になるはずです。皆さんも、ぜひ一緒に応援してみませんか?
関連情報:
GoPRE(ゴープレ) クラウドファンディングページ
株式会社ライフサカス ホームページ