こんにちは!soar編集長の工藤です。

自分にどうしても自信が持てない、他人と比べては自分へのコンプレックスに悩んでしまう。

きっとこんな気持ちを持っているひとは多いと思いますし、私もときどきひとりで悩んでしまうことがあります。そのつらさや悩みへの対処は、人によって趣味に没頭することだったり、誰かに話を聞いてもらうことだったり、しっかり自分に向き合って対話することだったり。

soarにメッセージをくれたことで知り合った大学生の女の子、野邉まほろさんは「食べること」で自分の自信のなさを解消してきたのだそうです。

ストレスが積み重なって、食べることで発散してしまう。
でも太ってしまった自分に、さらにコンプレックスを感じてつらくなってしまう。

まほろさんは、「摂食障害」のなかでも「過食症」と呼ばれる症状で長い間苦しんできたそう。アクティブで弾けるような笑顔が印象的なまほろさんが、今は治っているとはいえ、摂食障害で悩んでいたことは最初信じられないくらいでした。

摂食障害は、極端な食事制や過度な食事の摂取を繰り返すなど食事量のコントロールができないために、心身ともに健康に深刻な影響をおよぼす病気のこと。食べることがやめられない「過食症」、食べることができない「拒食症」など、症状を耳にしたことがある方は多いと思います。

今、「昔の自分と同じように過食症に悩む女の子を励ましたい」という気持ちで、彼女たちに会いに行きサポートしているまほろさん!まほろさんのポジティブな活動に励まされ、回復へ向かっている女の子もたくさんいるのだといいます。

けっしてまほろさんのたどった道が摂食障害を克服する正しい道とは限りません。でもまほろさんが葛藤とともに歩んできたストーリーは、同じように過食症で辛い思いをしていたり、自分に自信がないことで悩んでいるひとの励みになるんじゃないだろうか。

そう思い、これまでの人生でまほろさんがどんなことに苦しみ、どう乗り越えてきたのかを綴ってもらうことにしました!

人としゃべること、笑顔を見るのが大好き

【イラスト】両手で頬杖をつきながら、キラキラした笑顔で微笑むまほろさん

こんにちは!私が奈良県の大学に通う大学生、野邉まほろです。私は高校一年生のときに「過食症」という病気を患い、7年かかりましたが、去年やっと完治することができました。今回はこれまでの経験をみなさんにお話ししたいと思います。

わたしは、4人姉妹の3番目として生まれました。姉妹はみんな女の子で歳も近いため、3番目だったわたしは、小さい頃から負けず嫌いな性格でした。また、地元が島根県の離島、隠岐の島という田舎だったこともあり、小さい頃から常におじいちゃんやおばあちゃん、そしてそのお友達に囲まれて育ちました。そのおかげか、人と話したり、おじいちゃんたちの笑顔を見るのが大好きな子供でした。

ストレスと自信のなさから過食症に

中学卒業と同時に地元の隠岐の島を離れ、本土にある島根県内の進学校に入学。全校生徒50人程度の中学校から、1クラス40人の大規模な学校へと環境は変わりました。いつもたくさんの人に囲まれて育った隠岐の島と本土での高校の生活は違っていて、なんだか寂しい気持ちにもなりました。

隠岐の島だと成績もいい方だったし、島全体の学生が集まるスポーツ大会や文化系の大会でも活躍できていたのが一転。今まで出会ったことがないようなすごい人たちに圧倒されて、自分の居場所がなくなったように感じました。

高校1年目は寮生活で、陸上の全国大会で入賞するような選手や、校区外から来た自分よりも優秀な学生たちと一緒に生活していました。そんな環境の中でも自分なりに友達を見つけて、新しい生活にも慣れてきて、ここでも楽しめそうだと思っていたとき。

疲れが出たのか、急に1週間の原因不明の高熱が続きました。中学までと違って授業が進むスピードがとても早く、一週間後にどうにか登校したときには、全く先生の言っていることがわからない状態になっていました。体の調子がなかなか治らない焦りと、どんどん進んでいく周りに置いていかれるような不安から、私はいつのまにか自信をなくしていました。

熱が下がった頃には、なぜか常に眠たく、学校に行く気がどうしても起きない日が続きました。全てのことがどうでもよくなって、学校をサボることも増えていき、全部のことに対して投げやりな状態になってしまいました。 

そして同時期に、ストレスからか過食症状が出始めました。過食の衝動が抑えられなくてどうしても食べ過ぎてしまい、太ったことへの罪悪感から下剤を飲むように。下剤を使えば食べたものやモヤモヤ、ストレスが全てリセットされた気がして、また過食をする。そしてリセットするために下剤を飲む。その繰り返しの日々でした。

誰にも相談できず、なぜこんなに食べ過ぎてしまうのか、下剤を飲んでしまうのかわからなかった私は一人で病院へ行き、初めて自分がうつ病と摂食障害という病気だと知りました。

先生の一言で勉強を必死で頑張った

高校3年の夏に、学校の先生に呼び出されて、「このままだと卒業できない。」と言われました。当時はもう学校の授業にはほとんど行けておらず、保健室登校の日々が続いていたんです。

そのとき、これまで学校にこない私を一生懸命励まし続けてくれた人たちの顔が頭に浮かびました。

「わたしは、このままでいいのかな」

そう思い、そこから少しずつ学校へ登校するようになりました。

受験までの日数も限られていて、毎日毎日遅れた分の勉強を取り戻すため、ひたすら勉強を頑張って、頑張って。変わらず下剤を飲む日は続いていましたが、どうにかするしかない、やるしかないと思い、とにかく泣きながら勉強しました。

大学時代、彼氏のおかげで下剤をやめることができた

【イラスト】彼氏と一緒に楽しそうに会話をする、大学生の頃のまほろさん
努力のかいあって、私は無事高校を卒業して大学に入ることができました。そして大学で彼氏ができたわたしは、そのおかげで下剤をやめることができました。

下剤を飲んでいることに対して、「こんな彼女はいやかな」「こんな自分が彼女で申し訳ない」と自分の中で強く思ったことが、下剤を手放すきっかけに。彼氏に会いに行く予定ができる度に、下剤を飲んでいる自分にもうんざりしていたんです。

今思い返すと、家族ほど近すぎず、友達ほど離れていない、すごく特別な存在の人に、ありのままの自分を認めて好きだと言ってもらえたことの安心感が大きかったんだろうなと思います。

完璧主義ですぐ我慢してしまう性格だったこともあり、上手く周りの人に頼れなかったため、これまで食べることで感情を飲み込んで、下剤を飲むことで苦しさを吐き出していた部分もあったのかもしれません。

その期間は、誰といてもどこか一人ぼっちのような気がしていて、いつも不安や焦りがありました。周りの人には頼ってはいけない、自分の中で消化しないといけない、と勝手に我慢をしていて、毎日に生きづらさを感じていたんです。

同じ悩みを抱える子と「友達」になりたい

私がさらに自分を変える転機となったのが、摂食障害や自分の気持ちについてブログを書き始めたことでした。

その頃は下剤はもう使っていませんでしたが、それでも定期的に訪れる過食衝動に悩まされていました。体力的に疲れたり心が落ちこむと、どうしても食べたい気持ちを抑えることができなくて。そういうときに食べることだけは許していました。だけど下剤は「もう一生使わない」ということは決めていたので、我慢できていたんです。

ですが、少し過食衝動も落ち着いていたある日、すごく落ち込むことがあって、ひさしぶりに泣くほど過食したときがありました。そのとき、自分にすごく絶望したんです。もう一生治らないんじゃないかって。わたしもうこのままずっとこのままなんじゃないかって。

どうにか治す方法を調べないとってすごく焦って、インターネットで「摂食障害」でヒットするものをかたっぱしから読みました。でも見つけたのはかなり昔の日付で匿名で書かれたブログが多くて。

できればもっとリアルに一人の人として感じられるような関わり方がしたい。そしたら治すヒントが見つかるかもしれない。そう思って辿りついたのが、twitterでした。

twitterでは、摂食障害専用の裏アカウントを持つ人が多く存在していて、家族や友達にも言えない悩みなどを共有する場となっていました。わたしが過食をして苦しい瞬間にも、同じように苦しみ、それでも直そうと思ってる子達が、「まさに今」いるんだ。そう思えたことがすごく励みになりました。

でもみんな、周りの人に摂食障害であることを言えていない人も多く、偽名で顔を隠してtwitterをしている子がほとんど。わたし自身も周りの人に摂食障害であることを秘密にしていたため、偽名で顔も公開していませんでした。

それでも、摂食障害の女の子としてじゃなくて、「まほろ」という一人の女の子としてみんなと繋がりたい。一緒に治したい。でも顔や名前を出すと、摂食障害を隠している友達たちにアカウントがすぐ見つかってしまうかもしれない。でも私は治すと決めたんだから、これを機会に摂食障害であることを告白しよう。そして、どんな人かをきちんとtwitterの子達に伝えて、本当の友達になりたい。一緒に頑張りたい!

そう思い、自分の名前を公開してブログを書くことにしました。

「まほろちゃんが頑張ってるから、私も頑張る」

これまで、私が摂食障害であるということは、周りの人にほとんど話していなくて、姉妹にさえもきちんと伝えていませんでした。それを初めてブログというかたちで、現在摂食障害であることと、これを機会に必ず完治させたいと宣言し、自身のfacebookにも公開してみました。

公開した当初は、周りからの反応が怖くて、あまりFacebookを見ないようにしていました。でも一夜あけて見てみると、たくさんの反響があったんです。

まず一番反応があったのは、高校、大学時代の同級生。なぜわたしが学校にこないのか理由を知らない人ばかりだったため、驚きの声が多く届きましたが、それ以上に応援のメッセージが届きました。

面識のない摂食障害の女の子からもたくさん連絡があったんです。「長年にわたる摂食障害を前向きに治そうとしている人の存在が、励みになった」というメッセージもいただいて、同じように悩んでいる子が本当に多くいるのだとわかりました。

twitterで出会った人のなかには、5~10年の長期間摂食障害を患っていたため、治したいという意志自体がすでになくなってしまっている人も多くいました。でもわたしのブログを見て、「私も諦めずに絶対治してやる」「治した方がきっと人生楽しいんだ。まほろちゃんが頑張ってるから私も頑張る」という声が届いたことが、とても嬉しかったです。

「なりたい自分」に近づきたい

ブログで自分が摂食障害であると書いたことを機に、「摂食障害をやめなきゃ」という覚悟を持つことができました。7年という長い間摂食障害だったこともあり、「いつか治らないかな」という、半分諦めている気持ちだったのが正直なところ。

また病気を長く抱えているにつれて、ストレスがたまって過食衝動が起きても、「私は摂食障害だから仕方ない。過食は病気のせいだから我慢しなくていい」と自分に言い聞かせることも、年を重ねるごとに多くなっていました。

自分は過食して食べ物をたくさん飲み込むことで、人に言えない苦しさを我慢していて。でも太りたくないという強い願望のために下剤を飲んでいる。今の自分を保つために摂食障害は必要なものなんじゃないかと思うこともあり、「今すぐ直さなきゃ」っていう強い意志は、気づけば薄れていたように思います。

でも、ブログを書いて1年半経ちますが、あの日の決意以来、過食をしたことは一度もありません。

わたしは自分にできる努力として、今までのストレスの吐き出し方である「摂食障害」とは違う方法でストレスを解消することを意識しました。

「過食以外でいかに自分のストレスを和らげたり、日々の生活を安定させるか」を考えて、お風呂に長く浸かったり、毎日の生活リズムを整えたりと、日々の生活の当たり前を整えていきました。またそれに合わせて、毎日時間をかけて朝ごはんをつくったり、ネイルや美容院にいくように。

今まで痩せたら綺麗になれると思っていましたが、「なりたい自分」は痩せるために下剤を飲んでる自分じゃない。そうじゃなくて、おしゃれな朝ごはんをつくったり、美容に気をつかったり。日々ちょっとした工夫をすることで、自分が心から思う「なりたい自分」に近づけるよう努力するようになりました。

元気になって一番喜んでくれたのは友達だった

摂食障害だったとき、周りの人は自分を「はれものを触る」ような関わり方をしていたように思います。わたしの気持ちが不安定なのを知っていて、いつも、何を言ったら怒るんだろう、何をしてあげたらいいんだろう、と気を遣われていたんだと。どうにかしてあげたいと思ったとしても、何を言っても突き返すわたしに、友達がすごく頭を抱えていたことを思い出します。

でも今になって摂食障害のことを素直に話すと、みんな自分以上に治ったことを喜んでくれるんです!

誕生日に高校のときの親友から手紙をもらったことがあります。そこには、「高校のときは、明日まほろが学校に来なかったら。自殺をしていたら。と思うと寝れなかった。でも今元気そうな姿を色んなところで見れてすごく嬉しい」と書かれていました。

今は、周りの人に気を遣われなくなったように思います。昔はご飯を食べに行くのも遠慮して誘われなかったけれど、今はどんな人とでも普通に一緒にご飯を食べれるようになったのも、私にとってとても嬉しいことです。

摂食障害、過食症に悩む女の子たちと会いたい

【イラスト】摂食障害で悩む女の子たちとともに食事を楽しむまほろさん
去年の夏には、Twitterやブログを通して出会った摂食障害で悩む女の子たちを集めて、イベントを開催しました!イベントに呼んだのは、Twitterで顔や名前を隠していて、わたしも会ったことがない子たちだけ。開催すること自体とても迷いましたが、直前の告知であったにも関わらず、全国各地から女の子たちが集まってくれました!

ほとんどの人が、友達や家族にも摂食障害であることを隠していました。また、摂食障害の子たちの中には、自分の体を人に見られたくなかったり、「他の人を見て劣等感などを感じて症状が悪化してしまうかも」と、今まで摂食障害の子たちに会ったことがない子も。参加することに対してとても迷っている子たちばかりでした。

そんな子たちが勇気を出して、ネットの世界を飛び超えてリアルの世界で会って話している姿が現実になったときには、言葉にできない感情を抱きました!

イベントでは、それぞれの抱える悩みを打ち明けあいました。そして「今はつらいけど、わたしは摂食障害を克服したいんだ」という気持ちをお互いに話し、改めてその気持ちを確認することができたんです。

その後は自然とみんなで、ご飯を食べに。摂食障害になってから、食べられない、食べると吐いてしまうなどの症状があるがゆえに、人とご飯にいくことが普通にできなくなっている子も多くいました。摂食障害のときは、たとえ人とご飯にいっても、カロリーや相手の食べる量、増える体重のことに集中しすぎて、「食べること自体」を楽しめなくなってしまいます。だけど同じ悩みを抱えている人たちだからこそ、安心して「食べれる」「食べれない」を遠慮なく言える空間になったんじゃないかなと思います。

過食嘔吐をしていた参加者の女の子は、「今までは、吐くために食べてた。こんなに美味しいご飯ひさしぶりです」とすごく喜んでいました。友達とご飯を食べるのが何年ぶり!と笑顔で話している子もいて。

イベントを開催することに対しては、実はわたし自身もすごく迷いがありました。「もしみんなの症状を悪化させてしまったら、本人にも保護者の方に対してもどう責任をとったらいいんだろう」という不安があったからです。わたし自身、両親がどれだけ長年心配してくれていたかを知っていたため、その不安は会が終わるまで残っていました。でも会が終わってみんなの楽しそうにご飯を食べる姿をみて、「やってよかったな」と心からほっとしました。

笑って「ごちそうさま」を言うために

イベントが終わってから、私は半年間海外留学に!でも、その間にもイベントに参加してくれた人たちとは連絡を取り合っていました。症状が回復したという嬉しい連絡や、面接に何度も応募して新しい仕事を見つけた人もいて。徐々にあの時会った子たちはどういう思いを持って参加してくれたのか、そして今どうなっているのかを直接知りたいと強く思うようになりました。

また、イベント自体はtwitterで出会った子が対象だったため、ほどんどが地方に住んでいる人や中高生の子たち。帰国したわたしは、あのとき参加してくれた子たちに会いにいくために、全国を回ろうと決めました。

これまで、大阪や名古屋、岡山などに出向きました。会いに行った子たちには、「まほろと一緒に今一番食べたいご飯」を選んでもらって、一緒にごはんを食べたあと、二人で「ごちそうさま」を言います。

半年間でみんなの生活にもいろんな変化がありましたが、最後には笑ってごちそうさまを言うことができました。

これまで地方で会ってきた女の子で、過食症で1ヶ月の食費が月に50万円もかかっていた子がいました。彼女はイベントが一つのきっかけとなり、「人の健康をサポートするような仕事につきたい」とバイトの面接を受け始めたのだそう。今ではその職場で正社員として採用され、仕事を頑張る日が続いていると知り、わたしもとても嬉しい気持ちになりました。

女の子たちは、「半年間で頑張れる日も頑張れない日もあったけど、こうしてこれまでの過程を報告できる人がいると、また次会える日まで頑張ろうと思える」と言ってくれました。その言葉を聞いて、「誰にも相談できず一人で悩んでいた高校生の頃のわたしのような人たちが、少しでも悩みや苦しみを人に話せるような場所を一緒に作っていきたい」とさらに思うようになりました。来月からは九州地方へと向かう予定です!

過食症に悩んでいても「あなたの味方だよ」と伝えてあげてほしい

きっと一番苦しかった高校2年生の頃は、誰にどんな言葉を言われたとしても、聞けなかったと思います。今思えば、家族や大切な友達がすごくありがたい言葉を伝えてくれていたのに、わたしは全てに反発をしていました。

「ゆっくりでいいから治していこうね」
「あなたには食べた瞬間の苦しさがわからないから、ゆっくりなんて言える。今すぐ直したいっていう苦しさがわからないの?」

「全然太ってないんだから、そんなに痩せなくて大丈夫だよ」
「自分より痩せてるあなたに言われても、嫌味にしか聞こえない。あなたは自分に自信があるんでしょ?」

「一緒に治していこうね」
「あなたは病気じゃないんだから、一緒になんて言わないで。」

なんであのときそんな言葉をかけてしまったんだろうと、今でもすごく後悔しています。実際、それによってたくさんの人たちを失ってしまいました。ただそんなわたしでも、絶対に離れないでいてくれる人たちがいました。

もし、今周りで摂食障害に苦しんでいる方がいたら、特別な声かけはいりません。すごく素敵なメッセージを送る必要もないと思います。ただただ、「あなたの味方だよ」「いつもそばにいるよ」というメッセージを常に発信し続けてほしいと思います。

親にも友達にも強くあたっていたけど、しつこいくらいに向き合ってくれて、今思うと本当にありがたかったと思います。何も特別なことはしなくても、友達でいてくれて、近くにいてくれたらそれだけでも違うと思うんです。

たくさん自傷行為をして、止まらない過食衝動にいっそもう死んだ方が楽なんじゃないかと思ったり、下剤の耐えきれない痛みに、このまま意識が飛んで死んでしまえばいいのにと願ったこともあります。

でも、あのときわたしが最後の一歩を踏みとどまれたのは、わたしのそばにいてくれて、何度突き放しても向き合い続けてくれた人たちの存在を頭にはっきりと思い浮かべることができたから。

自分がギリギリの場所にいるときに、引き止めてくれるのは、「言葉」や「行動」と言ったものより、自分の周りにいる人たちの「存在」だと思います。その瞬間瞬間は、意味がないな〜とか、ほっておいた方がいいんじゃないかとか、めんどくさくなって突き放したくなるときもあると思います。

でも、一回一回は効果がないとしても、本人が最後の一歩を踏み出してしまう瞬間にストッパーになるのは、自分の周りには味方という「存在」があるんだという認識だと思うんです。

「無理しないで」と昔の私をぎゅっと抱きしめたい

もし今目の前に、高校時代のわたしがいたら、「あなたは、摂食障害がなくても大丈夫だよ。」ってぎゅっと抱きしめてあげたいなと思います。きっとあのときは、あれだけのものを詰め込まないと我慢できないような苦しさがあったんだと思います。

自分の自信のなさや、苦しさ、ストレス、不安を飲み込んで消化する手段があのときの自分には見つからなくて。

不安に耐えるために、食べ物を詰め込んで、溢れ出すくらい苦しい涙を流すことで、そして食べたものを下剤で出すことで、我慢していたんだろうなと思います。あのときのわたしには、食べ物と下剤がないと、その一瞬を生きていけなかったんだと思います。そうすることで自分を保っていたんだと思います。

でも、昔の私に一つ伝えられるとしたら、「そんなに食べモノを飲み込まなくても、きちんと苦しさを聞いてくれる人はたくさんいるし、そんなに下剤を使ってリセットしようとしなくても、ひとつひとつやり直せるくらい時間はまだまだたくさんある。急いで無理しなくても大丈夫だよ。摂食障害がないと生きていけないわたしじゃないから大丈夫だよ。」と言ってあげたいです。

好きなものを見つけることで「私を好き」って言えるように

【イラスト】まほろさんが「Find something makes you happy!!」と書かれたハートを掲げている

きっとわたしも、この先一生かけて自信がない自分と闘い続けるんだろうなと思います。周りの人と自分を比べてひどく落ち込んだり、自分の現実を知って、自分から逃げたくなったり。それはきっと、7年前のわたしと変わらないと思うんです。

でも、昔のわたしとちょっと違うのは、「自分との向き合い方」が変わったことだと思います。あのときのわたしは、嫌いな自分をいかに無くすか、どうやって削るのかってことを一生懸命考えていました。それは体重であったり、人間関係であったり、感情だったり。

自分に自信がなくて、自分のことが好きになれなくて、そんな自分からどうにか離れたくて、そんな自分をどうにか消したくて。毎日毎日、自分を無くすことで、自分でいることを保っていたのかもしれません。

でも今は、今の自分に何を付け足すのかを考える方がすごく楽しいんです!それはネイルをしたり、お出かけするときはお気に入りのピアスをつけてみたり。ちょっといつもとは違う服を選んで着たり、海外にいって経験を積み重ねたり。

自信がないとき、今の自分から色んなものを削ることをしがちです。でももっともっと、自分に付け足していく方が、自分には自信になるんだな〜と思います。きっと「付け足すもの」は人によって違うと思います。わたしは毎日ワンプレート朝ごはんを作っていて、それを食べて、自分の体に付け足すことがすごく幸せです。きっと、そのほうが周りにとっても幸せなんだと、今やっと思うことができています。

朝ごはんをつくってInstagramにアップしています

朝ごはんをつくってInstagramにアップしています

「音楽」でも「絵」でも、「服」でも、「写真」でも。付け足すものは人それぞれだと思います。

自分が、「わたしが好き」って言えるようにするための手段は、痩せる以外にもたくさんあります。自信がなくなって、今の自分を失くしてしまいたくなったら、今の自分を空っぽに削りたくなったら。ちょっとだけ勇気を出して、「好きなもの」を付け足すことを思い出してもらえたら嬉しいです。みんなが、自分なりの「自信のつけ方」を見つけられたらいいなと思います。

自分の「幸せ」を見つけて歩んでいく

戻ってきました!工藤です。

まほろさんのストーリーを見て、私自身も思春期に誰かと自分を比べてコンプレックスを感じたり、自信のなさと向き合うことから逃げていたなと昔を思い出しました。

まほろさんが摂食障害を乗り越えていく道のりは、「弱い自分と向き合っていく」道のりでもあったのだと思います。そして、それは同時に「自分の好きなことや自分らしさと向き合うこと」だったのだと。

彼女のくしゃくしゃの笑顔からは、弱い自分も頑張りたいと願う自分の両方を受け止めて生きていこうとする、ひたむきな強さを感じます。

そう思うと、摂食障害という症状が出ていないとしても、まほろさんが自分を好きになりたいからこそ自分に向き合ってきた時間には、誰にとってもヒントがあり勇気づけられるのではないかと思います。

どうすれば自分が「楽しい」「好きだ」と思えることに目を向けられるのか。
どうすれば自分にとっての幸せを見つけられるのか、自分を好きになれるのか。

まほろさんのように、私も自分が幸せだなと思えることを大事に進んでいきたいと思います。

【写真】透き通った海に立ち、髪をなびかせて全力の笑顔で笑うまほろさん

関連情報:

野邉まほろさん  ブログ:facebookページ

(コラム部分編集/工藤瑞穂、イラスト/ますぶちみなこ)