【写真】おばあさんとお話しする暮らしの保健室のスタッフ。穏やかな雰囲気が流れている。
体調がよくないとき、家族が病気になったとき、どんな行動をとりますか?インターネットで調べてみたり、友人に聞いてみたり…。それでも、なかなか自分のほしい情報が得られなかったりします。

私自身も家族が病気になったとき、誰にも話せず不安になった思い出があります。もしあの時、誰かに話せていたら、少しは変わっていたのかもしれません。

そんな相談が難しい医療の悩みを抱えている方々に寄り添う場「暮らしの保健室」を作るプロジェクトが川崎市で始まります。

みんなが集まる街の中の保健室

暮らしの保健室」は、街の中にある学校の保健室のような場所。市内のコミュニティースペースを利用し、そこに看護師や医師が駐在し、地域の人々の医療をはじめとした様々な相談に乗る仕組みです。

保健室を思い浮かべていただくと想像しやすいですが、「暮らしの保健室」は、誰でも気軽に訪れることができるところです。医療や暮らしに関する悩み、誰に聞いたらいいかわからない困りごとをお茶を飲みながら、のんびりと話すことができます。

相談だけでなく、時には地域の医療コーディネーターとしての役割を果たすのも、特徴の1つ。町の人と近い距離で医療系のイベントを開催したり、地域の医療機関を紹介できたりするのも、普通の病院ではできない「暮らしの保健室」ならではの役割です。

「暮らしの保健室」は、もともと新宿区でスタートしました。最初につくられたのは、秋山正子さんという看護師の方。秋山さんは、受診や訪問が必要なほどではないけれど体調について悩みを抱えている、という人を支えたいという思いからこの取り組みを始められたそうです。現在は、全国20か所ほどで行われていますが、まだまだたくさんの地域で「暮らしの保健室」の仕組みの導入を待ち望んでいる方がいます。

「『病気になっても安心して暮らせる街』ってどんな街だろう」

今回のプロジェクトは、もともと「病気になっても安心して暮らせる街」をコンセプトに活動するNPO法人小杉駅周辺エリアマネジメントの一事業として始まりました。

この団体は、スタートした当初は食の大切さを伝える料理教室や、お祭りで健康相談ブースを開催していたそうです。

【写真】健康相談ブースにて、笑顔で人を待つ2人のスタッフ。

これまで開催してきた健康相談ブースの様子。

転機となったのは、『「病気になっても安心して暮らせる街」ってどんな街だろう』というテーマで、街頭でインタビューを行ったことでした。「信頼できる医療機関がある」「住民がお互い支えあえる仕組みがある」「健康問題などに関して気軽に相談できる場所がある」など、インタビューによって様々な意見が出てきた中、解決策として見えてきたのが「暮らしの保健室」だったといいます。

実際に、一日限定で「暮らしの保健室」を開催したところ大盛況!2017年4月からは、「一般社団法人プラスケア」を立ち上げ、「暮らしの保健室」を事業として継続的に展開していくことになりました。

まずは川崎市内を拠点とし、今後は武蔵小杉、元住吉など周辺エリアを巡回する形で定期的に開催される予定です。

病気を抱えながらも生きている人たちの日常に手を差し伸べたい

大きな病気にかかったとき、本人はもちろん、その家族も大きな不安を抱えることになります。治療のことは医師に聞けても、病気と共に生活する上での不安をサポートしてくれる場所はなかなかないのが現状。

この「暮らしの保健室」プロジェクトが行われる川崎市は、40代前後の子育て世代が多く、人口が増え続けている町。これからを担う子供や若者が多いからこそ、安心できる街づくりが必要です。

「病気を抱えながらどう生きるか」という患者さんや、その周りの人の日常の悩みに寄り添ったサポートをしたい。この思いも、プラスケアという団体として、継続的に事業に取り組んでいくことを決めた背景のひとつだったそうです。

医療者と市民が同じテーブルで語り合う

「暮らしの保健室」プロジェクトのコンセプトは、「すぐ近くにいる普通のあの子なプロ集団」。代表をつとめる西智弘さんは、現在川崎市中原区で医師として活躍されていて、特にがん治療や緩和ケアに関わっています。

もともと家庭医を目指されていたという西さんは、病気になっても気軽に相談できる安心を届けたいという思いで、このプロジェクトを立ち上げました。

医療者と市民が同じテーブルにつき、フラットな関係で、地域の医療を育てていけるシステムを作りたい。

西さんはそう語ります。

医療者と市民がフラットな関係を持つ。今までになかった新しい取り組みですが、これを実現する鍵となるのが、コミュニティナースという役割。病院やクリニックなどで働く看護師とは違い、「地域」を主な軸として活する地域の人とのつながりを重視する看護師です。

【イラスト】柔らかな絵を使い、コミュニティナースについて説明している。

「困ったらとりあえずあの人に聞いてみよう」と思える社会へ

【写真】プラスケア プロジェクトのロゴとともに、楽しげな子供たちが写る。

プラスケアは現在、「暮らしの保健室」の立ち上げとコミュニティナース育成費用を募るためにクラウドファンディングに挑戦中です!今回は川崎地域限定の取り組みですが、全国の皆さんにも応援していただきたい理由があると、代表の西さんは熱く語っています。

今回の私たちのプロジェクトは、社会に対する大きな挑戦です。この仕組みがうまく運用できるようになると全国に「暮らしの保健室」が広がる基盤となり、あなたの町にも「暮らしの保健室」ができるきっかけになるかもしれません。

なにか困ったとき、相談に乗ってくれる人がすぐ近くにいる。そう思えるだけで、今よりちょっと安心して暮らせる気がしますよね。

「暮らしの保健室」やコミュニティナースが様々な地域に展開され、もっと大きな広がりを見せるよう、私も応援したいと思います。

関連情報:
「暮らしの保健室」の立ち上げ費用を募るクラウドファンディングはこちらからご覧ください。