【写真】揃いのTシャツをきて歩く7人の大人たち。穏やかな空気が伝わる。
日々時間が進むにつれ、どんな人でも歳をとります。その過程で、もしかしたら認知症になるかもしれない。

私はかつて、自分が認知症になることや、身近な人が認知症になることに、漠然と怖さを感じていたように思います。けれども、認知症になっても笑顔で前向きに暮らす人々に出会い、認知症になったとしても、これまでと変わらない幸せを追求できるのだと考えられるようになりました。

soarで以前インタビューさせていただいた丹野智文さんもまた、若年性認知症の診断を受けながらも、精力的に活動を続ける一人です。

今回ご紹介するのは認知症の人と一緒にタスキをつなぐ、「RUN伴」というリレーイベント。RUN伴は認知症当事者の方はもちろん、誰もが暮らしやすい地域づくりを目指している、全ての人に開かれたイベントです。

認知症の人と一緒にゴールを目指すイベント

【写真】揃いのTシャツをきて、集まっている大勢の人々。全員で紙飛行機を飛ばし、楽しい空気が漂っている。

「認知症の人に何か支援をするのではなく、認知症の人と一緒になって何か目標を達成したい」

RUN伴は、認知症の人や家族、支援者、一般の人が共にゴールを目指すランニングイベントです。

主催をするのは、NPO法人認知症フレンドシップクラブと各都道府県の実行委員会。同じ地域に暮らす認知症の人もそうでない人も、みんなが仲間として「タスキをつないで走る」という同じビジョンのもとに集う。それによって、人々が互いに理解し合うことを目指して開催されています。

【写真】手を繋ぎ、笑顔を見せて走る人々。誰もが楽しく走っているのが伝わる。

最初の開催は2011年。函館から札幌間まで、約300キロをタスキでつないたそうです。

そこから2012年は東京まで、2013年は大阪までと、どんどんと距離を伸ばしていきます。そして昨年の2016年大会開催では、北海道から沖縄までをタスキでつなぐ日本縦断を達成しました!

なんと今年の開催では初の海外進出として、台湾での開催も決定。RUN伴は今や、認知症をテーマにした日本でもっとも注目されるイベントとなっています。

【写真】RUN伴のグッズ販売の画面。Tシャツなどが並ぶ。

RUN伴の主役は認知症の当事者の方です。症状は人によって様々なので、リレーといっても徒歩や車椅子、参加者の応援のみなど、自分に合った方法で参加することができます。Tシャツなど応援グッズも用意しているので、グッズを購入することでイベントを応援するという参加方法もあります!

【写真】RUN伴の参加者と、彼らを街頭で応援する子どもたち。温かな空気が流れている。

第1回目の開催から参加者人数は右肩上がりに増え続け、昨年の参加者数はおよそ1万3千人にもなったそうです。そのうち1000人ほどが認知症当事者の方々でした。

認知症の当事者だけでなく、当事者の家族、医療福祉関係者、行政、商店、企業関係者、学生、地域の住民など、毎年RUN伴には様々な人が参加します。イベント中認知症の方々と自然に出会い、タスキをつないでいく中で、声を掛け合い支え合ったりと、交流が生まれるのです。

タスキをつなぐことで認知症当事者とつながる

【写真】参加者同士でガッチリと握手を交わす。そこに思いが込もっていることが伝わってくる。

認知症フレンドシップクラブはRUN伴を通して、これまで認知症と出会ったことのなかった人と、認知症当事者の方が出会い、つながる場を提供したいと考えています。

2025年、日本の高齢者の5人に1人が認知症になる可能性があるといわれています。いつか自分や家族も、認知症になるかもしれない。どんな症状があるのか、どのように接したら良いのかなどがわからないことで、不安な人も多いかもしれません。

RUN伴は「認知症」をテーマにしていますが、どんな人でも参加しやすい「全国各地でタスキをつなぐ」というシンプルなイベントです。

参加してみたらたまたま出会った人が認知症だった。でも病気のことは関係なく、ただ、一緒にゴールを目指してタスキをつなぐ。

認知症の方とも気軽に接することができるのだと参加者が身をもって体験することで、まずは認知症に対する不安を少しでも減らしたい。そして認知症に対してそれぞれの生活の中でできるアクションを起こしていってほしい。

認知症フレンドシップクラブは、そんな願いをこめてRUN伴を開催しています。

RUN伴へ参加することで、認知症当事者の方にとってもポジティブな変化が起きています。

【写真】RUN伴に参加した当事者の方のインタビューの様子。陽の光に照らされて、柔らかな表情が浮かんでいる。

アルツハイマーとかそういうことばっかり気にしていたのが、吹っ切れたような気がします。

RUN伴の映像作品の中で笑いながらお話しされていたのは、RUN伴に参加した認知症当事者の方。

認知症になると、社会と関わることが怖くなったり、自分に自信を失くしてしまうひとが多くいます。そのなかでRUN伴は、「みんなと一緒に走ることができた」という成功体験から自信を持ったり、社会との関係を再形成するきっかけになるのです。

【写真】RUN伴に参加している、世代の異なる3人。互いに手を繋いでいて、温かい雰囲気が流れている。

「認知症になっても大丈夫」だから安心してほしい

【写真】参加者のおばあさんが、参加者の若者を気遣っている。優しい空気が漂っている。

今年はこれまでとは異なり、各地で同時多発的な開催をすることが決定!最終的に1700ものまちを、RUN伴テーマカラーのオレンジ色に染めたいと考えられています。

【写真】商店街を通り抜ける楽しそうな参加者たち。

RUN伴で出会えるのは、元気に前を向いて、タスキを繋ぐ認知症当事者の方々の姿。幸せそうな笑顔。たった一人でも認知症の人と出会い、ともにタスキをつなぐだけで、認知症への考え方は変わるのかもしれません。

私自身、軽度の認知症の知人が身近にいます。これまで認知症の人と出会ったことがなかったので、どう接したら良いかわからず戸惑ったり、本人の落ち込む様子を見守るしかできず、無力さを感じたこともありました。

でも、RUN伴に参加されている方々の笑顔をみて、「認知症だったとしても、人と交流して笑顔になることはできるのだ」と安心する気持ちが湧きました。

今年のRUN伴は7月に北海道からスタートし、11月に沖縄でのゴールを目指します。すべてのまちで、認知症になっても安心して暮らせるようになることを目指すRUN伴を、私たちも応援したいと思います!

実はsoar取材チームも、関東エリアのRUN伴への参加を予定しています。ぜひ皆さんにも一緒にRUN伴に参加して、素敵な出会いを見つけてみませんか。

関連情報:
RUN伴公式ホームページ
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