【写真】たくさんの写真と一緒に笑顔でポーズをとるみさきちゃん

今日はどんな幸せに出会いましたか?

何気なく過ぎてゆく日常の中には、もちろん悲しいことや思い悩むこともあります。でもそんななかでも、日々喜びを重ねながら生きていけたなら、とても幸せなことではないでしょうか。

「当たり前に思える毎日に、幸せや喜びを感じること」。その大切さに気づいたのだと伝えてくれたのは、岸本太一さん。染色体の過剰により発症する先天性疾患「18トリソミー」である心咲ちゃんのお父さんです。

病気があっても毎日家族とともに笑顔で暮らす、心咲ちゃんをはじめとするたくさんの子どもたち。今回はそんな18トリソミーのある子どもたち、そしてその家族のかたちを写真集にして発信するプロジェクトを紹介します!

18トリソミーの子どもや家族の笑顔が集まる場所「Team18」

【写真】4人の子どもたちと手をつないで並ぶきしもとたいちさん

18トリソミーとは、通常は2本である18番染色体が、1本多く3本になっていることから発症する先天性疾患の一つ。「エドワーズ症候群」とも呼ばれ、染色体異常が起こる原因はいまだ不明です。

症状は成長障害や手足の変形、心疾患、臓器の異常など多岐にわたり、個人差があります。合併症を併発させることも多く、胎児の段階で流産や死産になることも少なくないのです。

【写真】たくさんのぬいぐるみと一緒に窓辺に飾られるチーム18のロゴマーク

「18トリソミーのこと、短命と言われても、こんなにがんばっている子どもたちがいることを知ってほしい。家族にとってかけがえのない存在であることを知ってほしい。」

そんな思いで2008年から活動をしているのは、岸本さんが代表を務める任意団体「Team18」。写真展を開催することで18トリソミーを広めるだけでなく、18トリソミーの子どもや家族の出会いの場所をつくりたいとも考えています。

当たり前の毎日からの学び

岸本さんの娘の心咲ちゃんが18トリソミーであることを知らされたのは、岸本さんの妻が妊娠36週のときのことでした。

岸本さん:医師は私たち夫婦に、「お腹の中で亡くなるのを待ちましょう」と言いました。他にも「生まれてきても、ほとんどの子は1年以内で亡くなる」とも聞いて、とても不安でした。

18トリソミーという病気をこのときはじめて知った岸本さんご夫婦。医師から告げられたことばに、二人は戸惑いました。それでも最後に「障害があったとしても、この子を産もう」という大きな決断をしたのでした。

岸本さん:授かった命に対して、育てるのが大変だからとか、短命になりがちだからといって、産まないという判断はどうしてもできませんでした。二人で話した結果、どんなことがあっても我が子と共に歩む気持ちは一致していました。

「無事に産まれてきて、そして生きてほしい。」そんな思いで岸本さんご夫婦は、産まれてくる赤ちゃんとの最初の目標に「生きること」を掲げました。そして無事お二人の元に、心咲ちゃんは産まれてきたのです。

【写真】生まれた瞬間のみさきちゃん

次に掲げた目標は「家で一緒に暮らし、親子3人で一緒に寝ること」。心咲ちゃんは生後8か月のときに病院を退院し、ついに家族での生活を実現することができました。

心咲ちゃんには心臓疾患を含むいくつかの合併症があるため、呼吸を安定させるために人工呼吸器を使っています。手術もこれまで3回以上経験してきました。そのたびに大変な経験を乗り越え、心も身体も成長してきた心咲ちゃん。

岸本さん:親として、子どもながらに生きる意志の強さに心を打たれてばかりでした。

あるときは、「食べる」ことの幸せを心咲ちゃんから教わったといいます。

【写真】チューブをつけた状態で並ぶきしもとたいちさんとみさきちゃん

心咲ちゃんは以前はチューブを口に入れて栄養を摂取していましたが、違和感からか自分でチューブを抜いてしまうことがありました。そこでチューブをしなくてもいいように、手術をして直接胃に栄養を入れる「胃ろう」をつくったのです。

手術後、栄養摂取は胃ろうから行うため、口を自由に動かすことができ、口から食べる練習ができるようになった心咲ちゃん。すっきりした口から牛乳を一口飲んだときの心咲ちゃんの笑顔や喜ぶ声が、とても印象的だったのだといいます。

岸本さん:私たちは当たり前のようにものを食べますが、のどを通ることで味や香りや温度を感じています。心咲にとって初めてできた「食べる」ことの喜びを、素直に表現したのがあの笑顔だったのだと思っています。

「18トリソミーでも笑顔で家族と一緒に暮らしている」

【写真】プールの水中でポーズをとるきしもとたいちさんとみさきちゃん

成長とともに体調も安定し、心咲ちゃんは4歳になってからは医療的ケア児の通う施設や、保育園にも通うことができるようになりました。運動会や学習発表会にも参加し、プールに行くなど運動も行っています。

岸本さん:心咲は自分の足で歩いたり、言葉を発したりすることは難しいですが、多くの方からサポートを受け、できないことができるようになるために日々頑張っています。

【写真】家族とじゃれ合うみさきちゃん

心咲ちゃんは現在6歳。家族とともに笑顔で、元気に暮らしています。岸本さんご夫婦が18トリソミーの診断を受けたときは、18トリソミーの情報に出会えず不安ばかりがつきまとい、今のような未来は決して想像することはできませんでした。

だからこそ、同じような状況の人に「18トリソミーでも笑顔で家族と一緒に暮らしている」という情報を届けて安心してもらいたいと岸本さんは考えています。

【写真】チーム18のウェブサイト画像

Team18では写真展の開催や出展写真の募集のほかにも、ホームページFacebookページから18トリソミーや子育てに関する情報発信を行ってきました。Team18を介して出会った人同士での、情報交換や思いの共有も活発に交わされており、同じ経験をしている「仲間」の存在にお互いに励まされているのだそうです。

岸本さん自身もTeam18を通して出会った心咲ちゃんと同級生の子どものいる家族と、家族ぐるみで仲が良く、自宅へ遊びに行ったり相談をしたりと楽しい時間を過ごしているといいます。

【写真】建物の階段で、チーム18に参加しているたくさんの家族の集合写真を撮影した様子

藁にもすがる思いでインターネットで検索をし、18トリソミーの情報を探していました。元気で暮らしていらっしゃる18トリソミーのお兄ちゃん、お姉ちゃんのお写真、そしてご両親が書かれる愛情たっぷりのブログに、どれだけ救われたかわかりません。

とにかく不安で仕方なかった私がここまでやってこれたのは、同じ親である皆さんのお陰です。

Team18に関わる人たちからはたくさんの喜びの声が寄せられています。

写真を通して生まれる、18トリソミーの子どもや家族との出会い

Team18ではこれまで18トリソミーの子どもたちの写真展を全国各地30カ所以上で開催してきました。多い時は150名程度の子どもたちの写真を、家族の思いを綴った紹介文とともに展示しています。

【写真】自宅でみさきちゃんとならんでポーズをとる3人のきょうだい

写真展には18トリソミーの子どものいる家族をはじめとする様々な人が来場するのだそう。お腹の子が18トリソミーであると診断されたお母さんが来てくれたこともありました。診断結果を誰にも相談できず苦しんでいた最中、新聞で偶然Team18の写真展のことを知り、勇気を振り絞って写真展に訪れたのだといいます。

岸本さん:「どうしたら良いか分からない、でもちゃんと準備をしておきたい」と涙を流しながらお話されていました。18トリソミーの子どものいる家族がたくさん写真展に来ていたので、彼らの話を聞きながら「ここに来てよかった」と言ってくれました。その後は無事に出産を迎えられたようです。

【写真】チーム18が開催した写真展で、熱心に写真を見る来場者の女性2人

18トリソミーの診断を受けた子どもの中には、早くに亡くなってしまう子どももいます。Team18には、ご自身の子どもを亡くした親御さんも多く関わっていているのだそうです。

岸本さん:写真展を開催することで、天使になった子どもの家族の、これまでの気持ちを和らげることもあるようでした。

Team18は、18トリソミーのある子どもと家族、妊娠中のお母さん、そして子どもを亡くした親御さんなど、みんなが安心できる場所となっているのです。

18トリソミーであっても幸せに生きる姿を届けたい

【写真】机に並べられた子どもたちの写真を見入る来場者の女性

そして設立から10周年でもあるこの機会に、Team18の写真集を出版するプロジェクトが立ち上がりました。写真集にすることで、写真展には足を運べなかった人をはじめ、たくさんの人に届けたいという思いからです。

より多くの人に18トリソミーについて知ってもらいたい。そして家族の幸せそうな写真を届けることで、「18トリソミーだから、重篤な症状があるから“不幸”なのではないか」という考えをなくしたいという強い思いが込められています。

【写真】自分の成長写真と並んでポーズをとる笑顔のみさきちゃん

写真集が出版されることで、これまで18トリソミーや障害のある子どもと関わる機会がなかった人にも、広く知ってもらえるきっかけとなることでしょう。

病気があったとしても、家族みんなで笑顔で暮らすことができる。そんな希望を感じさせてくれるはずです。この写真集がたくさんの人に届くよう、Team18のプロジェクトを応援してもらえると嬉しいです。

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