【写真】ヌイヌイのブローチ

お気に入りの雑貨屋さんで見つけた、色とりどりの糸で刺繍されたブローチ。シンプルな服に合わせたりトートバッグに合わせたりすると可愛いだろうなと、一目で気に入りました。

点を縫ったもの、細かな線を刺繍したものなど、どのブローチも一針一針丁寧に縫われており、つくる人のぬくもりが伝わってきます。

購入してパッケージを開こうとしたときに、あることに気づきます。実は、このブローチは「障害のある人がつくるプロダクト」だったのです。

今回は「障害のある人の手仕事の良さを伝えたい」という想いが込められたブローチ「Nuinui(ヌイヌイ)」を紹介します。

一つ一つ手作業でつくられるNuinui

Nuinuiは2013年に開催された「アートクラフトデザインアワード」から生まれたプロダクトです。

【写真】5色以上の糸で様々な縫い方でデザインされるヌイヌイのブローチ

アートクラフトデザインアワードとは、施設で生産・販売を前提としたアクセサリーや布小物、革製品などの商品のデザインを募ったコンペです。

このコンペは、東日本大震災で被災した障害のある人の支援活動を行っているAAR Japan[難民を助ける会]と経営コンサルティング会社のアクセンチュア株式会社が共同で開催しました。

このアワードで最優秀賞を受賞したのが、当時、都内の美術大学に通う大学生が考案したNuinuiだったのです。

現在、Nuinuiは仙台市の「パルいずみ」という福祉施設で一つ一つ手縫いでつくられており、東京都内の雑貨屋などで販売されています。

全ての人の個性が輝く社会を

Nuinuiは、NPO法人ディーセントワーク・ラボ(以下、ディーセントワーク・ラボ)が運営するequaltoというブランドの商品の1つです。

equaltoは全ての人の個性が平等に輝ける社会を目指し、つくる人と使う人をつなぐことをコンセプトにしているブランドです。

本木さん:障害のあるなしに関わらず、すべての人の個性が平等に輝くようにという想いから、「等しい」を意味する「equal」と「to」を組み合わせてequaltoと名付けました。

こう話すのは、ブランドを運営するディーセントワーク・ラボで理事を務める本木美穂さんです。

こちらは、障害者雇用やマネジメントに関するコンサルティング業務、福祉施設のものづくり・販売のサポート業務、調査研究などを行う非営利団体です。

ディーセントワーク・ラボのメンバーのうち数人で、福祉施設でのお菓子づくりを応援する「テミルプロジェクト」を約8年前から行っていました。

テミルプロジェクトでは、お菓子をつくる福祉施設に一流のパティシエがレシピ提供とお菓子づくりの指導を行います。さらに絵本作家ともコラボレートして、思わず買いたくなるようなデザイン性の高いパッケージに仕上げます。

テミルプロジェクトを続ける中で、さらに障害のある人たちの「働きがい」について、より追求していきたいと考えるようになります。そして、2013年にNPO法人ディーセントワーク・ラボを設立し、障害のある人のものづくりを応援するequaltoの運営母体や、コンサルティング、調査研究を始めたのです。

障害のある人がつくるものづくりに興味を持ってもらえるように

equaltoの運営当初、扱う商品は「アートクラフトデザインアワード」で賞を受賞したものでした。

開催の背景には、福祉施設で働いている障害のある人たちの賃金が低いという課題がありました。そこで、デザインの力で障害のある人のものづくりをサポートし、彼らの賃金をあげようという考えのもと、開催されたのです。

本木さん:アワードの開催によって、デザイン案を募集することはもちろん、たくさんの人に「障害のある人のものづくり」に興味を持っていただけるのではないかとも考えました。実際にアワードを立ち上げると、なんと382点もの応募がきたのです。

その中でもNuinuiはプロダクトとしての完成度の高さや手作業のよさをいかしたデザイン、手づくりならではの不揃い感やぬくもりを感じられる点を評価され、最優秀作品賞に選ばれました。

優秀作品にはNuinuiのほかに4作品が選ばれ、5点がequaltoの商品として商品化することになったのです。

使いやすさと「選ぶ楽しさ」が魅力の1つ

Nuinuiは作り手の強みを活かしてつくられたプロダクトです。制作には細かな手縫い作業が必要なため、手先の器用な方が多い「パルいずみ」に制作を依頼しました。

刺繍デザインは3種類。いくつもの点が集まったもの、たくさんの細かな線で描かれるもの、台形や丸などの形を2種類組み合わせたものがあります。

【写真】細かな線で描かれた刺繍デザイン

それぞれ、刺繍のレイアウトは縫う人にお任せしているのだそうです。ただ、精神障害のある人が作業をしやすいよう、縫い付ける糸の色の割合や、デザインの型は決まっています。

【写真】点を不規則にならべて作られた刺繍デザイン

カラフルで、自由。だけど、雑多にならず、日常の中で使いやすいデザインであることがNuinuiの魅力の一つです。

【写真】三角形と台形などいくつかの図形が組み合わされた刺繍デザイン

実際に、今年の2月に中央区で行われた、地域の社会貢献活動を広く知ってもらう見本市「つながりマルシェ」で販売を行った際も、Nuinuiはお客様からとても好評だったそう!

本木さん:お客様がお気に入りのデザインをじっくり選ぶ姿がとても印象的でした。「選ぶのが楽しい」という声もいただきましたよ。

Nuinuiはすべて一点もの。手に取ったときのワクワク感は「選ぶ楽しさ」があるからこそなのかもしれません。

つくる人と使う人をつなぐプロダクトNuinui

equaltoでは、障害の有無にかかわらず働く楽しさや安心を感じられる社会をつくりたいと考えています。

その考えのもと生み出されたNuinuiは、障害のある人の“得意”をいかした商品です。Nuinuiをたくさんの人が購入してくれることは、作り手の喜びややりがいにもつながります。

障害のある人が得意なことや好きなことで、生き生きと働けるように。そんな想いが詰まったNuinuiをぜひ知ってほしいです。

Nuinuiはequaltoのブランドサイトからも購入することができます。気になる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

関連情報:

equalto ホームページ
NPO法人ディーセントワーク・ラボ ホームページ
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