【写真】明るい雰囲気の店内で、肩を組みながら笑顔を向けるらんどねのスタッフ4人

仕事が好き。だけど終業時間になったらすぐに帰る。やりたくない仕事は、さりげなくあまりやらないし、サボってみたりする。失敗したり、どこかに隠れてしまったり、ハプニングも起こるけれど、慌てない。

これは私が大好きな場所、障害のある人が多く働くレストラン「らんどね」の、利用者の働くあり方です。もしかすると「どんなときも真面目に、一生懸命に働く」ことを続けてきた人にとっては、驚くような光景かもしれません。

「好きな仕事をする」「自分らしく働く」

最近はそんな言葉を頻繁に聞くようになり、私自身自分の働き方を心地よいものにしようと日々追求しています。これまでを振り返ると、思い出すのもつらい「やりたくない」仕事を経験したこともありました。だからこそ、やりたいこと、好きなことを選んでたどり着いた今の仕事が、とても好きで思い入れを持っています。

でも、ここの人たちにはまだ敵わないかも。

そう思ってしまったのは、「好き」も「嫌い」も私よりずっと素直に表現していて、心地よく働いているように見えたから。

なんでこの人たちは「羨ましい」とも思ってしまうほどに、のびのびと働くことができているのだろう?

お洒落で美しい内装と料理。温かい人に出会えるレストラン「らんどね」

その場所があるのは、都心から1時間ほど離れた場所にある千葉県船橋市。新京成線三咲駅からバスに乗って須賀神社の近くで下車し、森の中を歩いて行きます。

周囲にお店はなく、自然に囲まれた道を進んでいくと、建物が見えてきました。こちらがレストラン「らんどね」です。

【写真】自然の木々に囲まれた環境にらんどねの建物が建っている

らんどねの外観(提供写真)

らんどねは2017年に、社会福祉法人地蔵会が運営する障害者福祉サービス事業所「空と海」の一つとしてスタートしました。

「空と海」ではレストランの他に、生活介護事業所と就労継続支援B型事業所として、紙すき工房やアトリエの運営を、23年ほど続けています。らんどねの隣にある建物がアトリエと作業所。さらに歩いて約5分離れた場所に、紙すき工房や、木工の作業所があります。

空と海で働くのは知的障害や身体、精神障害のある人や、障害はなくても一般就労が合わないと感じた人、人間関係で悩んだという人が多いそうです。

【写真】スタッフ2人がじゃれ合いながらこちらに笑いかけている

どうぞ、どうぞ!

出迎えてくれたのはここで働く、仲良しのひとみさんとみずほさん。ニコニコと案内してくれました。

らんどねは完全予約制のレストランで、木・金・土曜日の週3日コース料理を提供し、月・火・水曜日は施設利用者への給食を提供した後、軽食、ドリンク、デザートのみのカフェ営業をしています。予約制にしているのは、忙しさや作業の量を事前に把握し、前もって準備ができるようにするためです。

【写真】木の温もりが感じられる椅子やフローリングに、明るい日差しが差し込んで穏やかな雰囲気の店内

木の温かみが感じられてほっとする店内の椅子やテーブル、飾り、トイレなどの表札、手洗い場など、内装のほとんどは利用者が作ったものです。

メニューはピッツァやスープ、前菜盛り合わせなどの本格イタリアンが中心。私たちもコースを注文をしました。

【写真】らんどねスタッフと取材メンバーが笑顔で話をしている

料理を待っている間にも利用者がどんどんとテーブルに遊びに来てくれます。すぐに仲良くなった私たちは名前を呼び合って、好きな芸能人の話、恋愛の話をしたりと大盛り上がり!

【写真】笑顔で話すふじたさん

藤田さん:取材でテンション上がっちゃってますね、いつもはみんなもっと働き者なんですよ(笑)。誰か手が空いている人、食器運んでもらってもいいかなあ?

優しく声をかけるのは、責任者で料理研究家の藤田承紀さん。イタリアで修行した経験も持つという藤田さんは、らんどねのイタリアンのコースをプロデュースしています。藤田さんのお願いを聞いて、”渋々”といった表情で、動き出した利用者の方たち。藤田さんはすかさず「ありがとう」と声をかけます。

【写真】オリーブやごぼう、チーズなどを使った前菜盛り合わせ。どれも大変美味しそう

【写真】焼きたてのマルゲリータピザもとっても美味しそう

いただいた料理は前菜にスープ、サラダ、ピザ、デザート!全てが本格的で、良質な素材の味が口の中いっぱいに広がりました。本当に美味しい。そして見た目も美しい。

美味しい?よかった。

私たちが感動の声をあげながら食事をしていると、利用者の方も仕事をしながらテーブルに近寄ってきてと少し照れくさそうに、でも嬉しそうに声をかけてくれました。

らんどねでの利用者の働きかたは様々です。注文を取って料理を運ぶ人、キッチンで仕込みをする人、料理に使う型紙を切っている人…手を止めておしゃべりに夢中になっている人もいれば、座って休憩をしている人も。

【写真】お店の端っこの椅子に一人のスタッフがポツンと座っている

仕事ぶりを観察して指摘をしたり、休んでいることを注意する職員はいません。もちろん、必要な時の声かけはしますが、利用者一人一人にある程度働き方を委ねているように見えました。

ここは天国みたいだよ。

そう呟いたのはこうさくさん。以前は清掃の仕事をしていましたが、楽しさややりがいをなかなか見つけられなかったのだと、ぽつりぽつりと話してくれました。今は料理を運んだり、小麦を粉にするために臼を回したりと、色々な仕事をしています。

【写真】臼を回して小麦を粉にするこうさくさん。近くで別のスタッフも何か作業をしている

臼を回して小麦を粉にしていくこうさくさん。らんどねではこうして手仕事を丁寧に行なっています。

利用者が自発的に、時に支え合いながら仕事をする

らんどねで働く利用者たちは、日によっては空と海の工房やアトリエで働くこともあります。特に決まりはなく、得意なことに専念する人もいれば、週に何回かはレストランで働き、残りの日はものづくりをするというように、複数の作業を仕事にしている人もいるのだそうです。

【写真】木をヤスリでツルツルに磨き上げる

木工と紙すきの作業場を覗きに行くと、木の皮を剥いたり、木材をノコギリなどで加工したり、仕上げにヤスリで磨きをかけたりといった作業が行われていました。室内で作業をする人もいれば、冬にも関わらず外で作業をする人も。静かに集中している人もいれば、「こんにちはー!」と笑顔で仕事ぶりを見せてくれる人もいます。

次にお邪魔したのは布を扱う工房では染色、絵を描く、刺繍、織物、刺し子などの作業が行われていました。機織を担当していたのは、身体障害がある利用者です。足を片方ずつ使う機械であれば問題なく使えるからと、機織の担当になったそう。

【写真】丁寧に機織を行うスタッフ

ーーこの布、素敵。

利用者:可愛い?

ーーうん、すごく可愛い!

利用者:可愛い?可愛い!

織られた布がカラフルだったので思わず「素敵」と呟くと、利用者の方が嬉しそうに「可愛い!」と繰り返してくれました。

【写真】3人で集まって糸作りをするスタッフ

「今日は一緒にこれやろう!」と仲の良い人同士で集まって、糸づくりをしていたスタッフ

空と海の仕事は得意なことや適性を見て、そしてなんと利用者のその日の気分も加味して、作業内容を決めていくことがほとんど。ものづくりに取り組む方はこだわりが強いことも多く、糸選びやデザインから自分で決める利用者もいます。職員が選んだ糸と利用者の好みが合わず「これは違う!」と言って、お互いの要望と好みを探り合うこともよくあるのだとか。中には大人気の作り手として、出来上がり待ちの予約が入ってる方もいるそうです。

【写真】工房の隣にはショップにはデザイン性の高い洋服や木工用品などが所狭しと並ぶ

工房の隣にはショップが。利用者は、お客さんが自分の作ったものを購入する姿を見ることができるのです

私たちが見学していると、突然大きな声を出し始めた利用者の方がいました。見ていると他の利用者が慣れた様子でその人のところへ行き、糸を切ってあげています。すると声はピタッと鳴り止ました。

【写真】布や糸などが雑然と置かれている

この方は気分の波があり大声を出したりすることがあり、ハサミでいろいろな物を切ってしまうので、ハサミを持たないことになっている利用者でした。縫う作業が完了しても自分で糸を切ることができないので、続けることができないと声を上げていたのです。すると自然に近くにいる別の利用者が、代わりにハサミで糸を切って助けてあげるようになり、今では職員がサポートすることなく、作業を進めているのだといいます。

得意なことや適性に合わせて、作業内容を決める。職員が介入するのではなく、利用者同士が支え合う。この働き方は、どうやって実現したのでしょうか?

能力を発揮できるような物作りの世界を目指して。空と海の23年間

【写真】インタビューに応えるおくのみつるさん

空と海の始まりは23年前に遡ります。立ち上げたのは今も施設長を務める奥野満さん。

奥野さん:障害のある人の養護学校卒業後の居場所を作ろうと、アパートの一室で、紙すきの作品を作っていたのが始まり。単純な作業ではなくて、その人が能力を発揮できて夢が持てるような仕事にしたくてものづくりに目をつけたんです。試しに船橋にある西武デパートの手作り展に出品したら、3日で完売してしまいました。そこから百貨店で扱ってもらえるようになってね。

購入する人のほとんどは、福祉施設で作られたものとは知らずに商品を手に取るそう。空と海の商品は「障害のある人が作ったから」ではない、クオリティや面白さなど商品そのものに魅力があるのでしょう。利用者の感性を生かしながらも、商品のクオリティを保ち続けるというバランスを保つことは簡単ではないのではと、奥野さんにたずねてみました。

奥野さん:ここまではいい、ここから先はダメというのはあります。でもそれって意外とシンプル。人に迷惑をかけるようなことはだめ。その子のペースで作業をすることや、お喋りするのはいいですよね。まっすぐに縫えなくても、味が出るから大丈夫。職員にも、曲がっててダメと正すのではなくて、一人一人の特性の違いを面白いと感じられる人に来てもらっています。

空と海ではこのように、利用者の感性を生かしてオリジナルの商品を数多く制作。心を込めて作られた唯一無二の価値がある商品は、多くの人に購入してもらえているといいます。

さらに、空と海のものづくりを支える地域との関わりについても教えてくれました。

事業所のある船橋市は梨の名産地で、近所には梨農家が多くあります。梨の寿命は20年〜30年と言われていて、定期的に切り倒すためものすごい量になります。捨てるのも費用がかかるので、敷地内にどんどん積み上がっていき、梨農家さんの悩みでもありました。空と海ではそれを譲ってもらい、木工の材料や、ピザを焼く釜の薪などに使用しているのです。工房で使われていた糸もまた、様々な団体からの寄付や、工場のサンプルを譲り受けたものだそう。

【写真】スタッフがらんどねのキッチンにある釜でピザを焼いている

また、空と海では仕事をする上で健康な身体でいることや、仲間同士の関係性を築くことも大切にしています。例えば利用者は事業所のある森の中で、毎朝1時間ほど簡単な体操をし、身体を動かしてから作業に取り掛かかるのが日課です。作業後にはマラソンやカヌー、水泳に交代で参加することもあるそうです。他にも年に2回ほどスキーや登山を経験する遠足を20年ほど続けてきているのだとか。

【写真】空と海の利用者が雪景色の中でスキーをしている

空と海の利用者がスキーをしている様子(提供写真)

奥野さん:ホテル貸し切って、お風呂入り放題でね(笑)。夏も別でキャンプに行きますよ。

そういうことをやっているとお互いに助け合うじゃない。外出すると社会と接するので、「急がないとバスに乗り遅れちゃうよ」と歩くのが遅い人を助けたり、周囲に迷惑にならないようリーダーシップを取る人が出てきたりするんです。

【写真】インタビュアーの目を見て質問に答えるおくのみつるさん

外出した時に生まれた関係性は、施設に戻ってからも続いていくのでしょう。先ほどの、ハサミを持てない利用者を自然に周囲が助ける姿を思い出しました。仕事のやり方を指導したり、合間にこっそりとふざけ合ったり、利用者同士関係性が築けているように見えたのには、仕事以外でも一緒に過ごす時間を共有してきたからなのかもしれません。

「みんなが心地いい」空間を目指して

レストラン「らんどね」がスタートしたのは2017年。「らんどね」はギリシャ語で、「遊歩道」や「寄り道」「目的のない散歩」といった意味を持ちます。

遠くからアトリエを訪ねて来てくれるお客さんが増えていく中で寄せられた、「近くに飲食店があるといいのにね」という声に応えるかたちで、らんどねはオープンしました。シェフの藤田さんは立ち上げから一緒に取り組んでいます。

【写真】考え込むような表情のふじたさん

藤田さん:僕は生まれつき左耳が聞こえません。てんかんもあって20歳になる頃まで治療を続けていて。だからずっと福祉に関わりたいという思いがあったんです。

ここのコンセプトの一つに「ノーボーダー」があります。美味しいことはもちろんで、障害のある人も、ベジタリアンやアレルギー、宗教上食べられないものがある人も気軽に来れるような場所にしたかったんです。店内はもちろん、バリアフリーに対応しています。

他にも、例えばベジタリアンの方が来た時に、全てサラダで置き換えるのではなく、なるべく他の人と同じものを食べてもらってその場を共有できるようにしたくて。予め多くの人が食べられる食材をメインに使って、リクエストに応じて足し引きができるようにしています。僕はみんなで食事をするのが好きなので、みんなで同じテーブルを囲みたいと思っているんです。

【写真】店内に飾られている小さな観葉植物

化学物質過敏症、農薬過敏症のことを考慮して飾る草花にも気を配っているそう

藤田さんの配慮は「障害や困難がある人にとって心地よい空間はきっと、誰にとっても心地よい空間”」という考えから生まれたもの。とにかく「みんなが心地いい」を追求してきました。

そこにはもちろん働く利用者や職員も含まれます。以前都心でレストランの立ち上げに関わっていた藤田さんは、おしゃれで素敵だけれど、バックヤードがない、キッチンが狭いなどの要因から、身体的なストレスを感じていたそうです。

【写真】店内にはいたるところに植物が飾られて、おしゃれで落ち着く空間に

だからこそ、らんどねでは誰もが気持ちよく働けるよう、食材の質やメニューの内容にこだわるのと同じくらい、空間設計から内装にも工夫を凝らしました。バックヤードは隅々まで清潔。空間にも広さにも余裕をもたせ、スピーカーの質や個数にも配慮をしています。

訪れるお客さんは口コミがほとんどで、多くの方がリピーターになっています。らんどねのペースや雰囲気を知ってもらえていることで、店内での利用者とのやりとりもスムーズに進むそう。気持ちの良い空間設計や美味しい料理、そして利用者がつくりだす空気感が、多くの人を惹きつけているのです。

利用者の素直な姿から、「ほどほどに頑張るくらいが心地よい」と気付かされた

仕事をしていて嬉しいのはどんな時ですか?

利用者の方に質問をしてみると、「お客さんが喜んでくれた時」と教えてくれました。

レストランらんどねで接客を通してお客さんとやりとりすることはもちろん、空と海のアトリエショップと工房の間にはガラスが取られた窓があります。お客さんが買い物しながら覗いて、会話までできるようにと設計しました。「作り手が身近に感じられる」と好評で、買い物ついでに利用者に話しかけたり、作業所を見学する人も多いのだそう。

【写真】工房隣のショップにあるガラス窓。工房の中を見たりスタッフを話したりすることができる

目の前で自分が作ったものが売れていく。丁寧に仕事をして作り上げた空間で、食事を楽しんでもらえる。褒められたり「ありがとう」と言われることは、やっぱり嬉しいものです。

こうした利用者が「やりがい」を感じられるような工夫は他にもありました。藤田さんをはじめとする職員は、利用者一人一人の特性に合った仕事を常に探しているといいます。

藤田さん:みんながいい仕事ができるように、一人一人に合う仕事を絶対に見つけようとは思っています。僕は誰でも総合能力は一緒で、凸凹が小さいか大きいかだと思っているんです。ここで働いている人たちは向き不向きがすごくはっきりしているからこそ、伸びているところを見つけられたらって。

「毎日が奇跡と感動の連続」なのだと、藤田さんは嬉しそうに続けます。

【写真】インタビューに応えるふじたさん

藤田さん:話すことが難しく、歩くのもゆっくりな方がいて、飲食は難しいのではと職員とは話していました。でもある日、遠足で他の子がいない間にひとりでカラトリーを置いて準備をしていて。誰に教えられたわけでもなく仕事ができるようになっていたんです。動きがゆっくりで喋れないだけで、実は仕事を覚えてた。僕らもまだまだ勉強不足だなと痛感しましたね。

利用者一人一人ができることを探すだけではなく、その人ができることを見つけるまで「信じて待つ」こと。

そしてもう一つ、藤田さんが強調して話していたのが「無理をしない・させない」という考え方でした。

利用者のことを思ってというのはもちろんですが、藤田さん自身も意識していることだといいます。それは、目の前のことについ一生懸命になり疲弊してしまったとき、利用者の人たちの自由さやマイペースさに救われる経験を、何度もしているから。

例えばらんどねを予約制にしたのは、急に混み合って利用者があたふたしないようにと考えてのことでしたが、実際にオープンしてみると、忙しくなったときに慌てたのは藤田さんだったのだと、笑いながら話します。

【写真】笑顔で話すふじたさん

藤田さん:忙しくなっても利用者さんは変わらず寝てたりするんです(笑)。もうちょっと急ごうぜ!みたいな(笑)。それに仕事中は楽しそうにしているけど、時間になったら1分たりとも残業せずに帰ってちゃんと休む。すごいですよね。そんな姿を見ていると、ほどほどに頑張るくらいが心地よいと気づかされて。学ぶことは本当にお互いあると思ってます。

利用者から日々学びをもらっているのだという藤田さん。その影響はお店の端々に刻まれていました。

【写真】グラノーラなどを使ってくられたなちゅなるクッキーがカゴにたくさん入っている

例えばこちらのクッキーは利用者がロゴを作った「なちゅなるクッキー」。本当は「なちゅらる」と書くはずが間違えて「なちゅなる」と書いてしまったのですが、「ゆるい感じがなんかいいんじゃない?」ということでこのまま採用されました。

【写真】OFISと書かれた木で作られた表札

オフィスの表札も「OFIS」になっていますが、そのまま採用!

藤田さん:障害と聞くと「助けてあげなきゃ」といったイメージを持つかもしれませんが、むしろ僕らはすごく利用者のみんなに助けてもらっている。そうじゃないとこんな森の中でレストランできていないですからね!

一つ一つの積み重ねで作られた「心地よさ」の上で成り立つ、素直な感情表現

働く場所・建物の設計、ものづくりへのこだわり、健康な身体で気持ちの良い関係性を築くこと、仕事にやりがいを持つこと。そして、“ほどほどに”頑張ること。

伺ったお話はどれも「理想的」だと思えることばかりですが、実現するのは簡単ではないことだと思います。空と海では23年間かけて、一つ一つを積み重ねてきました。そうしてゆっくりと、でも着実にらんどねの「心地よさ」を作ってきたのでしょう。そしてその根底には利用者も職員も「素直な自分」を大切にしている姿勢があるように見えました。

楽しい時は仕事中でも手を止めて笑うし、一人になりたい時はそっと端に行って座りこむ。職員だって完璧じゃないから、利用者から学ぶ。

らんどねでは、一人一人が素直な自分でいることによって、みんなにとって心地の良い場所が生み出されていました。

障害があり、特性として苦手なことと得意なことが比較的明確にあって、それを言動や表現物でも発信をする「障害のある人たち」。私は彼らといると「私も素直な自分でここにいていいんだ」という安心感と、「私もこんな風に素直でいられたら」という気持ちが湧いてきます。

だから、らんどねのような「素直な自分」を受け入れてくれる場所が、もっともっと広がってほしいです。きっとそれは、誰にとっても心地よい場所だから。

【写真】明るい店内で爽やかな笑顔を向けているスタッフ6人

関連情報:
らんどね ホームページ
空と海 ホームページ

(撮影/松本綾香、協力/田中みずほ)