思わず誰かに伝えたくなる、素敵な風景に出会ったとき。
これまで想像していなかった、新しい発見をしたとき。
一人では抱えきれない痛みを感じたとき。

そんな心が揺れ動く経験を、私たちは、「語ること」を通して誰かと分かち合おうとします。

それは、ただ他者に知識や情報を伝達するためだけではありません。

「あぁ、私はこういうことが言いたかったんだ」
「自分が大切にしたいのは、これなんだ」

自分の話を聞いてくれる誰かと「語り」を共有すること。それは、自分自身が何を感じていたのか、何を望んでいるのかを確かめ直すプロセスでもあるのかもしれません。

自らの人生経験やその中から見出される弱さ、気づき、希望を、ひとり一人が「自分の言葉」で語る。語ることを通して、自分の人生の意味を捉え、新たに物語を編み直す。

そのプロセスこそが、痛みからの回復をもたらし、一人ひとりが自分の可能性を信じ、広げていくことにつながっていく。

soarでは、そんな「語り」の持つ力に注目して、さまざまな困難を経験した方や、その家族、支援に携わる方、一人ひとりの生きる物語を伝えてきました。

ですが、社会で生きる上では、さまざまな要因から自分の「語り」を見失ってしまうことがあります。

日々の仕事や生活で多くの「やるべきこと」に追われたり、社会通念や他人の価値観を押し付けられたり、過去の経験への後悔に苛まれたり…自分以外の他者の声があまりにも大きな存在感を持ってしまうことで、「いま、わたし」が何を感じているかわからなくなってしまう。そんな経験をしたことがある人は、少なくないのではないでしょうか。

ひとりひとりが自分の言葉で語ること、それが自分の人生をよりよいものへと変えていく。
そんな「語り」の力を、改めてゆっくりと捉えていきたい。

今年のsoarカンファレンスは、そんな思いから「語り」をテーマとして掲げました。

様々な領域で活動しているみなさんと「語り」について考えることで、語ることの可能性や、人がよりよく生きることのヒントを探っていきたいと思います。

また、今回は参加者のみなさんと共に実施するワークショップも企画しています。

自分の経験を他者と分かち合うことで、自分の言葉が見えてくる。
ひとりひとりのオリジナルな語りが立ち上がってくる。

そんな時間を、参加者のみなさんと共につくっていきたいと思います。

soar conference 2018〜テーマ:語り

【日時】2018年12月8日土曜日 10時00分〜18時00分(9時45分 開場)

【場所】Nagatacho GRID 

【参加費】
チケット代にはドリンク、お昼のお弁当、休憩時のお茶やお菓子なども含まれます。
(肉、魚、乳製品、卵不使用のビーガン対応のお弁当もご用意しておりますので、チケット購入時に希望を伺います)

一般:10,000円
早割:8,500円(限定25枚)
学生:8,500円(限定10枚)

チケット購入こちらから

※クレジットカードだけでなく、コンビニやATMでのお振込みもご利用いただけます。

※お申し込み後のキャンセル、及び返金はお受けいたしかねます。ご了承ください。

※領収書がご入用の方は、カンファレンス当日に受付でお申し付けください。

【定員】100名

【タイムテーブル】

9時45分 開場

10時00分〜10時30分 イントロダクション、soarの紹介

全体司会:工藤瑞穂(NPO法人soar代表理事)

10時30分〜12時00分 session 1「当事者と語り」

登壇者:向谷地生良(浦河べてるの家理事、ソーシャルワーカー、北海道医療大学教授)

12時00分〜13時00分 ランチタイム
「家庭料理を毎日食べよう」をコンセプトとするカフェ「tiny peace kitchen」のお弁当を用意しています。

13時00分〜14時20分 session 2「インターネットと語り」

登壇者:ドミニク・チェン(早稲田大学文学学術院・准教授、NPOコモンスフィア理事、株式会社ディヴィデュアル共同創業者)
モデレーター:モリジュンヤ(NPO法人soar理事、株式会社インクワイア代表取締役)

14時20分〜14時30分 休憩

14時30分〜15時50分 session 3「身体と語り」

登壇者:福森伸(社会福祉法人太陽会 しょうぶ学園 統括施設長)

15時50分〜16時10分 お茶の時間
日本古来の薬草をもとにした伝統茶ブランドtabel監修のお茶で、おいしい安らぎの時間をつくります。
また、あわせてsoarの記事にも登場した「久遠チョコレート」と「森のキッチン」のクッキーを一緒にご用意する予定です。

16時10分〜17時40分 Session 4&Workshop 「わたしと語り」

登壇者:兼松佳宏(勉強家、元greenz.jp編集長、京都精華大学人文学部 特任講師、「スタディホール」研究者)
モデレーター:モリジュンヤ(NPO法人soar理事、株式会インクワイア代表取締役)

17時40分〜18時00分 クロージング
クロージングの際、べてるの家の昆布を販売予定です。

トークセッションプログラム内容紹介

Session1 「当事者と語り」

“「精神障害者」とは、言葉を語ることを封じられた人々である。この二五年間はまた、「語ることをとりもどす」歩みとしてあったといっても過言ではない。”

「浦河べてるの家」の向谷地生良さんは自身の著書で、べてるを設立してからの時間をこのように語っています。

北海道浦河町で、精神障害のある人たちがともに暮らしながら、地域で事業を興しているべてるの家。

活動の軸となる「当事者研究」では、医者によって“治療される”対象であった人たちが、自分の言葉で自分を語り、それを仲間と分かち合うなかで、自身の症状とともに生きる方法を見つけていきます。

“語ることそのものが彼らの回復であった。”

この言葉どおり、べてるの人々は語ることで他者と弱さを共有し、それを絆に生きていく力を取り戻していきました。

べてるの人々のあり方には、思わず「私はね」と自分の経験を語りたくなってしまうような、そんなみずみずしさがあります。きっと私たちの誰もが、苦労の繰り返しである自らの人生の「当事者」なのです。

このセッションでは、向谷地さんがべてるのメンバーたちと編んできた語りの歴史を聴き、人が自らを「語ること」の可能性を見出していきたいと思います。

登壇者:向谷地生良(浦河べてるの家理事、ソーシャルワーカー、北海道医療大学教授)


向谷地生良(むかいやちいくよし)
1978年北星学園大学卒業。浦河赤十字病院ソーシャルワーカーとして勤務。長年にわたり浦河町「べてるの家」で精神疾患を持った人たちと活動し、ソーシャルワーカーとして実践を続けてきた。「べてるの家」から生まれた当事者研究は世界から注目されている。現在は北海道医療大学看護福祉学部教授。社会福祉法人浦河べてるの家理事。

Session2 「インターネットと語り」

社会には”生きづらさ”が広がり、インターネット上には目を覆いたくなるような情報も溢れているように感じられます。

情報技術は利便性と引き換えに、私たちの心から平穏を奪い去ってしまうのでしょうか。soarは、今回のカンファレンスでインターネットの光の面に焦点を当てたいと思います。

『ウェルビーイングの設計論』を監修したドミニク・チェンさんは、日本的ウェルビーイングというテーマを探求されています。ウェルビーイングとは、インターネット時代における、身体的な健康に限らない個人の社会的、精神的な生活の良好さを示した指標です。

情報哲学者でありながら、起業家としてウェブサービスやアプリケーションの開発を手がけてきたドミニクさんの旅は常に「情報」と「心の有り様」と共にあったように感じられます。

ドミニクさんは起業家として、誰もが抱える「ヘコみ」を匿名で打ち明け、なぐさめてもらえるコミュニティサービス「リグレト」や偏愛コミュニティアプリ「シンクル」など、インターネット上にポジティブに肯定し合える空間を実装しようと挑戦してきました。

また、情報哲学者として、『電脳のレリギオ』『インターネットを生命化する プロクロニズムの思想と実践』といった書籍の執筆を通じて、人間の心と情報技術、インターネットと生命の関係についての探求を行ってきています。

もはや、インターネットも”リアル”と呼べるほどに日常に浸透している今、インターネットを通じた「語り」が私たちにどのような変化をもたらすのでしょうか。情報技術と共存する新しい社会をつくり、一人ひとりがより良く生きるためのヒントを探ります。

登壇者:ドミニク・チェン(早稲田大学文学学術院・准教授、NPOコモンスフィア理事、株式会社ディヴィデュアル共同創業者)
モデレーター:モリジュンヤ(NPO法人soar理事、株式会社インクワイア代表取締役)


ドミニク・チェン
1981年生まれ。フランス国籍。博士(学際情報学)、2017年4月より早稲田大学文学学術院・准教授。NPOコモンスフィア(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)理事、株式会社ディヴィデュアル共同創業者。2008年IPA未踏IT人材育成プログラム・スーパークリエイター認定。2016〜2018年度グッドデザイン賞審査員・「技術と情報」「社会基盤の進化」フォーカスイシューディレクター。主な著書に、『謎床:思考が発酵する編集術』(晶文社、松岡正剛との共著)、『電脳のレリギオ:ビッグデータ社会で心をつくる』(NTT出版)、『インターネットを生命化する:プロクロニズムの思想と実践』(青土社)、『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック:クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』(フィルムアート社)等。訳書に『ウェルビーイングの設計論:人がよりよく生きるための情報技術』(BNN新社、渡邊淳司との共同監修)、『シンギュラリティ:人工知能から超知能まで』(NTT出版)。

Session3 「身体と語り」

多くの人がインターネットで自ら情報発信をできるようになった現在、 「語り」というと、書かれたテキストや、 本人が自らの口から語った発言が中心に捉えられがちです。

ですが、果たして「語り」とは、言葉によってのみ表れるものでしょうか。

身振り手振りや目配せ、言葉にならない叫びや、心臓の鼓動。
音楽や絵画、織物といった表現活動。

人と人、「人間」として関わり合う上で、私たちは日々、無数のメッセージを発し受け取り合っています。それは喜びや共感の表れであるかもしれませんし、恐れや拒絶の表明であるかもしれません。

テキストや言語表現だけではない、 それゆえに見落とされやすい、もっと身体的な「語り」が、そこにはあるのではないか。

「身体」という、自他を分け隔てる壁を持ちながら、お互いを尊重し、社会の中で共に生きていくためには、どのような「語り」が必要なのだろうか。

そんな問いを、このセッションでは福森伸さんと共に考えていきたいと思います。

鹿児島県にある社会福祉施設「しょうぶ学園」の施設長である福森さんは、知的障害のある人たちの暮らしと表現活動の場を営んでいます。

”不揃いな音”たちが不揃いなまま自由に楽しくセッションをするパーカッショングループ「otto&orabu」、針一本で縫い続ける独自のスタイルから表現が生まれる「nui project」ほか、クラフトワークやカフェに蕎麦屋…一人一人の才能を開放する多彩な表現活動を通して、福森さんは知的障害のある利用者さんから発せられる「語り」をどのように受け取り、寄り添い、紡いできたのか。

福森さんとしょうぶ学園の皆さんの営みを通して、私たちの身体から湧き起こる「語り」に耳をすませていきたいと思います。

登壇者:福森伸(社会福祉法人太陽会 しょうぶ学園 統括施設長)

福森伸
1959年鹿児島県生まれ。知的障がい者支援施設しょうぶ学園統括施設長。1983年より障がい者支援施設「しょうぶ学園」に勤務。木材工芸デザインを独学し、「工房しょうぶ」を設立。特に2000年頃より縫うことにこだわってプロデュースした「nui project」は、国内外で作品が高く評価されている。また、音パフォーマンス「otto&orabu」・家具プロジェクト・食空間コーディネートなど「衣食住+コミュニケーション」をコンセプトに、工芸・芸術・音楽等、新しい「SHOBU STYLE」として、知的障がいをもつ人のさまざまな表現活動を通じて多岐にわたる社会とのコミュニケート活動をプロデュースしている。
関連記事:https://soar-world.com/2017/12/07/shoubugakuen/

Session 4&Workshop 「わたしと語り」

最後のセッションは、会場のみなさんとともにつくるワークショップです。

「語り」は病気の回復にとっても、生きづらさを見つめるにも必要なことですが、自分がどうありたいのか、何が好きでどんな希望を持っているかを語るかも重要です。

最後のセッションでは、「わたし」を語る時間を作りたいと思います。

ファシリテーターは、元「greenz.jp」編集長で、現在は京都精華大学人文学部特任講師を務める兼松佳宏さん。兼松さんは、自分らしい生き方を編むヒントとして「beの肩書き」を提唱しています。

従来、自分のことを人に伝えるときに用いていた職業などの仕事の肩書き「doの肩書き」ではなく、自分のより深いところにある”あり方”の肩書きを「beの肩書き」と呼んでいます。

兼松さん自身も、働く中で色々と肩書きを変えながら、自分らしさを表す肩書きを模索してきました。原体験も踏まえて「beの肩書き」を多くの人にも共有しています。

「自分のことは自分がいちばんよくわからない」と言われるように、自分を客観的に観てくれる他者の存在も不可欠です。

他者の視点も交えることで、これまでの自分をリフレーミング(捉え直し)でき、自分の内側にある多面性や階層を認識していくことで、「わたし」がより立体的に捉えられるように変化していきます。

「わたし」を語ることで、自分を起点に人生を歩んでいくための軸を持つことができるのです。

カンファレンスでは、まず兼松さんの考える「語り」について聞き、そのあと参加者が自身の人生を語り、そこから何かを見出していくような時間をつくりたいと考えています。


登壇者:兼松佳宏(勉強家、元greenz.jp編集長、京都精華大学人文学部 特任講師、「スタディホール」研究者)
モデレーター:モリジュンヤ(NPO法人soar理事、株式会インクワイア代表取締役)

兼松佳宏
勉強家/京都精華大学人文学部 特任講師/「スタディホール」研究者/元greenz.jp編集長
1979年生まれ。ウェブデザイナーとしてNPO支援に関わりながら、「デザインは世界を変えられる?」をテーマに世界中のデザイナーへのインタビューを連載。その後、ソーシャルデザインのためのヒントを発信するウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わり、10年から15年まで編集長。2016年、フリーランスの勉強家として独立し、著述家、京都精華大学人文学部特任講師、ひとりで/みんなで勉強する【co-study】のための空間づくりの手法「スタディホール」研究者として、教育分野を中心に活動中。 著書に『ソーシャルデザイン』、『日本をソーシャルデザインする』、連載に「空海とソーシャルデザイン」「学び方のレシピ」など。秋田県出身、京都府在住。一児の父。
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【主催】
soar https://soar-world.com/
お問い合わせ event@soar-world.com

【会場】
Nagatacho GRID

〒102-0093 東京都千代田区平河町2丁目5−3

● 地下鉄 東京メトロ
半蔵門線・南北線・有楽町線 「永田町駅」
4番、9番b出口より徒歩2分
● 有楽町線
「麹町駅」 1番出口より徒歩7分
● 銀座線、丸ノ内線
「赤坂見附駅」 7番出口より徒歩5分
● 銀座線、南北線
「溜池山王駅」 5番出口より徒歩11分

※会場にはエレベーター、1階に多目的トイレがございます。車椅子ユーザーの方など、駅からの移動にサポートが必要な方はスタッフがお手伝いいたします。また、視覚、聴覚障害のある方でセッションの聴講にサポートが必要な方は、お問い合わせアドレスにご連絡ください。

※保育のサポートはありませんが、お子さん連れの方も大歓迎です。保育室がございます。
お問い合わせ:event@soar-world.com

クジラは一生を回遊して暮らす旅人のようなイメージ。その中でもザトウクジラは、唄でコミュニケーションをとるそうです。

広い海の中でたまたま出会ったクジラやマンタが、それぞれの旅の中で見たこと感じたことを自分の唄で伝え合っている…。そんなイメージが浮かびました。

Painted by 中川和寿

Designed by mai ichita

【主催者紹介】


モリジュンヤ
NPO法人soar理事、株式会社inquire CEO
1987年生まれ、横浜国立大学卒。2010年より「greenz.jp」編集部にて編集を担当。独立後、「THE BRIDGE」「マチノコト」等のメディアブランドの立ち上げに携わり、テクノロジー、ビジネス領域を中心に執筆活動を行う。15年、編集デザインファーム「inquire」を創業。17年、社会をアップデートするクリエイティブポータル「UNLEASH」を創刊。エンパワメントやウェルビーイングの実現のため、メディアやプロジェクト、組織の編集に取り組む。株式会社アイデンティティ共同創業、NPO法人soar副代表、NPO法人マチノコト理事。
https://inquire.jp/


工藤瑞穂
NPO法人soar代表理事・ウェブメディア「soar」編集長
1984年青森県生まれ。宮城教育大学卒、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。仙台の日本赤十字社で勤務中、東日本大震災を経験。震災後、「小さくても、わたしはわたしにできることを」をコンセプトに、仙台で音楽・ダンス・アート・フードと社会課題についての学びと対話の場を融合したチャリティーイベントを多数開催。地域の課題に楽しく取り組みながらコミュニティを形成していくため、お寺、神社、幼稚園など街にある資源を生かしながら様々なフェスティバルを地域住民とともにつくる。2015年12月より、社会的マイノリティの人々の可能性を広げる活動に焦点を当てたメディア「soar」をオープン。2017年1月に「NPO法人soar」を設立。イベント開催、リサーチプロジェクトなど様々なアプローチで、全ての人が自分の持つ可能性を発揮して生きていける未来づくりを目指している。
https://soar-world.com/