社会人になって、気づけばもう10年以上が経ちました。これだけ時間が経っても、「働くこと」への悩みは尽きません。
もちろん今も、悩みや葛藤はあるけれど、仕事からは本当に多くのものを得ていると感じています。それは報酬やお給料という金銭的なものだけではなく、新しい人や出来事、場所との出会いなど、さまざまです。
私はこれから先、生きている限りどんな形でも働き続けたいと思っています。
でも、過去には、過剰労働によるオーバーヒートで「もう働けない」と私の心と体が悲鳴をあげたこともありました。
短期間お休みをして、働き方を変えられたことで、すぐに仕事に復帰できましたが、世の中から置いていかれるような不安感…。思い出すだけでも、胸のあたりがぎゅっと痛くなります。
誰にとっても、「働けない」ということはきっと不安なこと。その期間が長くなればなるほど、それは大きくなっていくことでしょう。病気や障害が理由なら、なおさらです。
今回は、「すべての人に働く機会があることを伝えたい」という思いのもと、株式会社LITALICOが開設した、働くことに障害のある方が自分に合った仕事や就職支援サービスを探せるWEBサイト「LITALICO仕事ナビ」をご紹介します。
働くことに障害がある方のためのWEBサイト、LITALICO仕事ナビ
LITALICO仕事ナビは、働くことに障害がある方のための就職情報サイトです。
自分に合った働き方が見つからない人、自分で就職活動をしてきたれどなかなかうまくいかない人。そんな人たちに、自分らしく働くための情報やサービスを届けるため、2018年3月にオープンしました。
お話を聞いたLITALICO仕事ナビ編集長の鈴木悠平さんは、これまで働くことに障害のある人にとって、有益な情報が十分にWEB上で公開されていなかったと話します。
LITALICO仕事ナビ編集長 鈴木悠平さん
鈴木さん：検索をかけても、上位に良質なコンテンツが出てこなかったり、自分が住む地域で利用できる就職支援サービスの情報が整理されていなかったりなど、さまざまな課題がありました。
こういった課題を解決するために、LITALICO仕事ナビを立ち上げることになったのだそう。働くことに障害のある方が、「働きたい」という思いを抱いたとき、整理された有益な情報にピンポイントでアクセスできるようになりました。
利用者とサービスを提供する事業所側の情報の溝を埋める役割も
LITALICO仕事ナビでは、働くことに障害のある方が受けることができる様々なサービスを紹介しています。そのなかでも、多くの方が必要としているのが就労移行支援と就労継続支援。これらのサービスを提供する全国1万8千件以上にもおよぶ事業所の情報は、地域ごとに分けられていて、簡単に通いやすい場所を探すことができます。
就労移行支援とは、企業などへの一般就労を目指す障害や難病のある方が利用できる福祉サービスのひとつ。一定期間学校のように通いながら、働くための知識や能力を身につけることができます。
対象者は原則18歳以上65歳未満。身体障害、知的障害、精神障害、発達障害や難病の方のなかで、企業などへの一般就労を希望し、就労が可能と見込まれている方です。
一方、就労継続支援とは、一般就労が難しい方や、就労移行支援を利用したものの就職に結びつかなかった方などが利用できるサービス。職業訓練や企業から受託された作業活動などを通じ、働くために必要な知識や能力を高めて一般就労を目指したり、その事業所で継続的に自分に合ったペースで働いたりすることができます。就労移行支援と比べると長い時間をかけて働く準備ができ、また事業所で行われた生産作業に対しては、報酬を支払われるのが特徴です。
そもそも、就労に関してこういったサービスがあることを、知らない方がとても多いのだそう。
鈴木さん：読者の方からは、「自分がこういった制度を利用できるとは思っていたなかった」「ここでこの制度があることを知って人生が変わった」などの反響もいただきました。
LITALICO仕事ナビには、就労移行支援を行う事業所、就労継続支援を行う事業所どちらも、それぞれの特徴やプログラムの内容、就職実績、スタッフのメッセージなどが掲載されています。
利用者にとって、自分に合った事業所を探すための助けになることはもちろん、事業所側にとっても、LITALICO仕事ナビは積極的に情報を発信するきっかけになっています。また、利用者と事業者の溝を埋める役割を果たし、双方を取り巻く課題解決の助けになるのです。
就職活動時はもちろん、就労後の悩み事、困りごとにも寄り添う
LITALICO仕事ナビには、「より自分らしく働きたい」という気持ちをサポートするコンテンツも揃っています。
LITALICO編集部の皆さん
実際に就労移行支援事業所などを経て、就職を決めた方のインタビュー、症状や障害ごとの働き方のヒント、精神科受診の仕方などのコラムも充実。就労の準備段階から、就労した後も自分らしく働き、より良く生きるためのヒントが詰まっています。
たとえば、パニック障害を発症した方に向けてのコラムには、疾患や治療についての紹介。そして、特徴的な思考パターンを解説したうえで、仕事を探すときに利用できる支援や、仕事中にパニックを起こしてしまったときの対処法まで書かれています。
病気や障害との付き合い方、仕事探しをするときに気をつけること、職場でのコミュニケーションなどの悩みを解決する方法は、その人や環境によってそれぞれです。
だからこそ、LITALICO仕事ナビでは、一人ひとりが自分に合った選択をするための「考え方」や「方法」を数多く伝えられるように心がけている、と鈴木さんは話します。
鈴木さん：ひとつひとつの障害や疾患、またそれらに対する治療法や支援制度、そういった方の働き方や仕事探しの方法といった情報をわかりやすく、様々な文献資料や現場実態を踏まえてまとめています。
丁寧に紡がれたコラムは、働くことに障害のある方が、就労を目指すときはもちろん、就労後の悩みや不安にも寄り添い、そっと背中を押してくれるはずです。
コンセプトは「らしくいる、世界が広がる」。フリーペーパーの創刊で、WEBを利用しない人にも情報を発信
2018年6月15日には、LITALICO仕事ナビのフリーペーパーを創刊。WEBを積極的に活用していない人にも情報を届けるために、手に取って読める紙媒体での情報発信も始めました。現在は東京、神奈川、千葉、埼玉のハローワークなどで配布されています。
フリーペーパーのコンセプトは、「らしくいる、世界が広がる」。女優の飯豊まりえさんとALSの当事者であり、一般社団法人「WITH ALS」代表でクリエイターの武藤将胤さんの対談や、就労移行支援を利用して就職をした方のインタビューなどが掲載されています。
就労移行支援を利用して、現在はIT関連の会社で働く池田さんは、フリーペーパーのインタビューでこんなことを語っています。
———インタビュー記事より
以前働いていた会社の人間関係で、体調を崩してしまいました。それでも働かなくてはという焦りから、退職と転職を繰り返すことに。でも、就労移行支援に出会い、失った自信を少しずつ取り戻すことができました。入社を強く希望した会社に就職することができ、今は楽しく働いています。これからも素直にたくさんの色に染まっていきたいと思っています。それが、いつかきっと自分になると思うから。
就労移行支援を経て、自分らしい働き方を見つけた池田さん
ウェブではなく、紙媒体だからこそ実現した企画も多かったのだとか。就職支援サービスの利用イメージがわくフローチャート形式の企画、ビジアル重視のファッション企画など、眺めるだけでも楽しい1冊となっています。
鈴木さん：読み終えたあとに読者の方が、自分らしさを大切にしたいと感じたり、未来に希望を持てるといいなと思っています。
フリーペーパーは次回、12月頃発行予定です。
また、9月からは新たにメールマガジンがスタートするそうです。メールマガジンは、読者の方の意見や質問を元にした対話型コンテンツがメイン。WEBサイト、フリーペーパー、そしてメールマガジンを通じて、LITALICO仕事ナビは、必要としているたくさんの方に情報を届けていきます。
すべての人に働く機会があるはずだから
新しい一歩を踏み出すことは、誰にとっても勇気がいること。特に、働くことにおいては、ためらってしまうという方も多いのではないでしょうか。
私自身も過剰労働で、心身ともに疲れ切ってしまったとき、正社員から派遣社員になり、立場と働き方を変えました。結果的にそうしたことで、自分らしい働き方をみつけることができたのですが、そのときは迷いに迷って、なかなかその一歩を踏み出せませんでした。
まさに今、これを読んでくださっている方のなかにも、さまざまな事情で働くことに障害があって、いろいろな葛藤を抱えている方がいるかもしれません。
でも本当は、すべての人に働く機会があるはず。まずは、LITALICO仕事ナビに掲載されているたくさんの情報から、それを実感していただけたら嬉しいです。
