【写真】コートのうえに並べられたサッカーボール。奥では子供たちが座ってコーチの話を聞いている。

「ホームレス」という言葉を聞いたとき、どんなイメージを持ちますか?

僕は、テレビ番組やニュースの情報、実際にホームレスの方々が多い地域へ炊き出しのボランティアに行った経験から、駅のホームや高架下で生活するような人々を「ホームレス」の人々だと考えていました。

しかし、現代の「ホームレス」の人々について詳しく見ていくと、うつ病や障がい、養護施設出身の若者、被災し生活が出来なくなった若者など、困難な事態に抗うことも出来ずに、「ホームレス」になる若い世代が増えていることが分かりました。

今、そんな若い世代のホームレスたちに、「サッカー」を通して、成長を感じたり、自信を持たせたりする、面白い取り組みがあります!

それは、ホームレスだけではなく、様々なバックグラウンドを持つ人々がサッカーを通して認め合えるきっかけを生み出す「ダイバーシティカップ」です。

今年の7月に開催されるというこちらの大会、いったいどのようなものなのでしょうか。

進むホームレスの若年化

まず、「ホームレス」の人々のなかで、若年化が進んでいる現状を整理していきましょう。

昨年、ホームレスの人たちへ支援を行う全国の施設に、助けを求めた人の年代別調査が、NHKによって行われました。

そこで明らかになったのは、助けを求めた人のなかで、30代以下の人の割合が初めて30%を超えたということ。

若者たちがホームレスになった理由は、決して、「怠惰だから」、「働く気がないから」というわけではなく、リストラや倒産といった仕事上の理由、うつ病や被災による精神上の理由など、さまざまなきっかけを経て、路上での生活を与儀なくされた若者たちが多くいるのです。

年々増え続ける「若者ホームレス」に対して、どのような支援が出来るのでしょうか。

一度路上に出た若者たちが、もう一度社会で働くことや、希望を叶えて生きていけるようサポートを行っているのが、「ビッグイシュー基金」です。

「ホームレス」から再び自立するために、ビッグイシューによるサポート

【写真】びっぐいしゅーの雑誌を右手に掲げて笑顔で道にたたずむびっぐいしゅーの販売員

photo by Facebook ビッグイシュー公式ページ

ビッグイシュー」は、ホームレスの人の救済(チャリティ)ではなく、仕事を提供し自立を応援する事業として、1991年にロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊されました。

日本においては、1冊350円で販売され、そのうち180円が街頭で雑誌を販売するホームレスの収入となり、彼らが収入を積み重ねるなかで、路上生活を脱する機会を提供しています。

もしかしたら、街を歩いていて、「ビッグイシュー」を販売する人に会ったことがあるかもしれませんね。

その「ビッグイシュー日本」を母体に設立された非営利団体が「ビッグイシュー基金」。

一度失敗しても“やり直しのきく”社会を形成するべく、ホームレスの人たちが自立し、再び社会に復帰できるようにさまざまなサポートを行っています。

路上生活する人が生きのびて自立への道を歩めるようになるための必要な情報を一冊の冊子にまとめた「ホームレス、路上脱出ガイド」や、ホームレス状態にある若者が急増した背景を把握するために「若者ホームレス白書」を発行するなど、多様な活動を行っています。

そんな「ビッグイシュー基金」は、ホームレスの人々で結成されたサッカー日本代表チームの事務局も務めているんです!

スポーツを通してホームレスを支援する「ホームレスワールドカップ」

【写真】サッカーのユニフォームを着て大きい円陣を組んでいるチームメンバー

photo by Facebook ビッグイシュー公式ページ

「NPO法人ビッグイシュー基金」が事務局として活動をサポートするサッカーチーム「野武士ジャパン」。

2003年から毎年開催されている「ホームレスワールドカップ」という世界大会があります。

このサッカー大会は、サッカーを通じてホームレスの人々が人との関係性や自信を取り戻す場として、現在世界70カ国のチームが参加しており、2008年に発足した「野武士ジャパン」も、これまで3度出場しています。

【写真】体育館でおもいおもいのポーズをとる人たち。年齢は様々でみんな楽しそうにしている。

 

「野武士ジャパン」に集まったホームレスの人々は、当初、人との関係性を築くことが難しかったものの、練習や試合を重ねるなかで、ただのチームメイトではなく、それぞれを思いを表現し合える仲間として成長していったんだそう。メンバーのなかには、住居を得て、仕事に就けた方もいるそうです。

「野武士ジャパン」のなかには、60歳のプレーヤーも在籍しており、ビッグイシュ―の販売を通して路上生活を脱した彼は、建築現場で働きながら、月2回のサッカー練習に通い、上達していく実感を噛みしめていると話します。

サッカーを通して、さまざまな人々との出会いや交流が生まれ、日々の成長や変化を感じる機会が提供される。生活に対するモチベーションの向上に、活動の成果が大きく表れていますね。

多様な若者がサッカーを通して認め合う場「ダイバーシティカップ」

【写真】両手を上にあげて喜びを表現する4人の男性。満面の笑みでとても嬉しそう。

 

「ビッグイシュー基金」は、7月30日(土)に、新豊洲で「ダイバーシティカップ」というサッカー大会を開催予定。

「ダイバーシティ」とは、「多様性」を意味する言葉で、大会名には、多様な境遇を持つ人々が、それぞれの経験や存在の価値を、スポーツという媒介を通して、互いに認め合う場にしたいという思いが込められています。

今回、プレイヤーの対象となる人々は、ホームレスに限定されず、若年無業者やひきこもり、うつ病、養護施設、被災地の若者、LGBT、不登校、ニート、依存症など、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が対象となっています。

イベントでは、サッカーが初めての人、苦手な人でも楽しめるようにワークショップをした後に、交流試合をする予定で、その後、交流会が開かれ、「大会参加のきっかけ」、「今チャレンジしていること、したいと思っていること」について語り合う場を持つそうです。

孤立しがちな若者が人生のチームメイトを得て再び歩き出す

【写真】黒板の前で笑顔でカメラを見つめる人たち。スポーツのユニフォームを着ている人や手にサッカーボールを持っている人もいる。

「ダイバーシティカップ」を主催する「NPO法人ビッグイシュー基金」は、参加者の交通費や滞在費などにかかる約100万円の資金が不足しており、活動に共感した人々から資金提供を募るクラウドファンディングを行っています。

寄付を行った人々は、額によってホームレスワールドカップ創設者が登壇するシンポジウムや、「ダイバーシティカップ練習会」に招待されるそうです。

「なぜ、ホームレスがサッカーを?就労支援が先では?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、「ダイバーシティカップ」を担当する「NPO法人ビッグイシュー基金」の長谷川さんは、こう言います。

「私は、8年間一緒にサッカーのフィールドで汗を流す中で、チームメートの存在に励まされ自信を取り戻し、住所を得て仕事に就く『ホームレス』の方々を多く目にしてきました。だからこそ、こうした機会をもっと広げたいんです。」

サッカーを通した居場所や自立を支援するプロジェクトは、これまで社会問題に関心のなかった層からも注目を集め、新たな支援者を増やすことにつながりそうですね。

ホームレスや被災地の若者、養護施設出身の若者といった、社会的に孤立しやすい人たちが、今回のイベントを通して、人生のチームメイトを得て、安心して新しいことにチャレンジ出来るようになるのではないでしょうか。

若者たちが人生において、自信を取り戻す機会を作り出そうとする「NPO法人ビッグイシュー基金」の今回の動き、みなさんもそんな彼らを支えるチームメイトにぜひなってください!

 

関連情報:

ビッグイシュー基金 ホームページ

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