あなたにとって、「家族」はどんな存在ですか?

血のつながりがある家族を思い出す方もいれば、血のつながりがなくても自分を支えてくれる大切な人を思い出す方もいるでしょう。自身が家族との関係に悩んだり、これから家族となっていくうえで不安を抱いている人もいるかもしれません。

「家族」という言葉は、辞書で引くと「夫婦とその血縁関係者を中心に構成され、共同生活の単位となる集団」という意味が記されています。既存の制度のもとでは、「家族」は血縁が重視されているのです。

でも、家族をつなぐものは“血のつながり”だけなのでしょうか?

心でつながる“もう1つのかぞく”の風景


今の日本には、様々な理由で家族との信頼関係が築けなかったり、親と一緒に暮らすことができない子どもたちがいます。

彼らは、子どもたちを社会の責任で公的に育てる「社会的養育(養護)」のもとに、乳児院や児童養護施設で暮らしたり、ファミリーホームや里親のもとで育てられたりします。

私たちはこれまで、里親と子どもたちの家庭の光景や、養子縁組でつながった親子を見てきました。そこには、血縁はないけれど、心でつながっているもう1つの“かぞく”の風景がありました。

“かぞく”のあり方は、私たちが想像するよりも、もっと、ずっと多様なんだ

私たちは、次第にそう考えるようになっていきました。家族と呼ばれたときに想像する、血によるつながり。血のつながりはないけれど、別の縁でつながり、絆で結ばれた“かぞく”もいる。少しずつ少しずつ、それがわかってきたのです。

私たちが出会ってきた“かぞく”は、共通してその中心に子どもがいました。どうしたら、子どもが周囲のひとたちから愛され、健やかに育ち、社会に旅立っていくことができるのか。大人たちが対等に、真摯に子どもと向き合い、子どもたちに合わせて環境をつくり出ししていることがわかってきました。

“かぞく”には多様なあり方がある。だから、一般的に捉えられている血縁のある家族だけではなく、別の「かぞく」のかたちが認められる社会であるといい。そして“かぞく”はひとつではなく、いくつもあっていいし、もっと広がりがあっていいのだと思います。

子どもたちにとってより望ましい「“かぞく”のあり方」をめぐる旅

どんな子どもたちも大人との信頼関係を築き、安心して暮らせる“かぞく”のかたちについて考えたい。

そう考えたわたしたちは、この夏より認定NPO法人SOS子どもの村JAPANとともに、子どもたちにとってより望ましい「“かぞく”のあり方」とは何か、読者のみなさんと一緒に考えていく企画を展開していきます。

SOS子どもの村JAPANは、「A loving home for every child」 をスローガンに、生みの親と暮らすことができない子どもたちを里親制度を利用した新たな家庭環境 「子どもの村」で養育する活動や、相談事業などを通し、困難を抱えた子どもとその家族を支える活動に取り組んでいます。

soarは、これまでたくさんの子どもや家族と関わってきたSOS子どもの村JAPANとの連携により、里親や養子縁組、または施設のもとで育ったユース、子どもたちとの現場ではたらく人たちのインタビューを行っていきます。

2017年8月から、“かぞく”のあり方や子ども、社会的養育をテーマとした記事を8本公開予定。また、8月23日開催のキックオフイベントを皮切りに、東京都内で連載と連動したイベントも開催します。

社会的養育や里親という制度は身近に感じづらい方もいるかもしれません。ですが、家族と暮らせない、関係性がうまく築けないという状況は、どんな家族にでも、そしてどんな人にでも共通するストーリーを含んでいます。そして、この企画に登場する様々なかぞく、大人、子どものあり方からは、“かぞく”というテーマだけには限らず、「人とのつながりのなかでどう生きるか」というたくさんの学びがあるように感じています。

子どもたちにとってより望ましい“かぞく”のあり方、そして社会的養育のこれからをめぐる旅を、ぜひたくさんの方とご一緒できると嬉しいです。

“かぞく”のあり方をテーマに連載をしていきます

<1>親と暮らせないこの子たちに、安心できる家庭をつくってあげたい。「子どもの村福岡」で里親をする田原正則さんと子どもたちの日々

<2>キックオフイベントのレポート:地域の多様なひとが「かぞく」や子どもの育ちに関わる社会に。SOS子どもの村JAPAN、よしおかゆうみさんと考えるかぞくのあり方

<3>福岡は「里親」先進都市って知ってました?まちぐるみで子どもを育ててきた地域の軌跡

<4>どの子どもにも「生きていてくれて、ありがとう」と伝えたい。児童養護施設等から巣立つ子どもたちを支える「ゆずりは」高橋亜美さん

<5>この保育園はまるで“家族”みたい。夜の歓楽街をやさしく灯す「どろんこ保育園」という親子の居場所

<6>日本でただ一つ、匿名で赤ちゃんを預かる「こうのとりのゆりかご」に託された思いとは?ひとりで妊娠・出産に悩む女性のためにできること

<7>生みの親にも育ての親にも「ありがとう」と伝えたい。特別養子縁組を結んだ家族と暮らしてきた近藤愛さん

イベント情報:『もう一つの“かぞく“のかたち〜子どもたちに多様な大人とのつながりや居場所を生み出すには』

【日時】2017/11/13(月)19:00〜21:30(開場18:30)

【場所】Impact HUB Tokyo

【ゲスト】

高橋亜美(アフターケア相談所「ゆずりは」所長)
小澤いぶき(NPO法人PIECES代表理事、児童精神科医)
田北雅裕(認定NPO法人SOS子どもの村JAPAN 理事、九州大学大学院人間環境学研究院専任講師)

詳細はこちらから

特定非営利活動法人 SOS子どもの村JAPAN ホームページ

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(写真/馬場加奈子)