【写真】空を見上げるshin5さん

私、親になる準備はできていたけど、彼と一緒に家族をつくる準備はできていなかった。

生後1ヶ月半の息子を腕に抱き、夫との離婚を考えている友人が漏らした言葉が耳に残っています。彼女は産後、パートナーとして親として、夫との足並みが揃わず、会話もままならず、一緒にいることが苦痛になってしまったと言います。

ふたりの恋愛から始まったとしても、子どもを迎え入れるなど、状況や環境が変われば、お互いの気持ちや関係性、家族のかたちは変わっていきます。その変化に心と行動が追いつかず、はじめは小さなボタンの掛け違いでも、積み重なって埋まることない深い溝が生まれてしまうこともあるでしょう。

夫と2歳の娘と暮らす我が家ももちろん例外ではなく、性格も育った環境も価値観も異なる人間同士が一緒に暮らして、ひとつの家族をつくっていくことは、決して当たり前にできることではないと日々実感しています。

先の友人と「シングルマザーやどちらかに子どもがいて結婚するステップファミリーという家族のかたちもあるし、一緒にいるのが苦痛であるなら離れる選択をしてもいいのかもしれないね」と話しながら、同時にふと、ある考えが頭をよぎりました。

子どもがいる状況から関係性を築いていくステップファミリーは、よりそのハードルが高くなるのではないか、と。

血のつながりも含め、異なる立場や関係性が交錯する“ひとつの家族”をどうやって築いているのだろう?

【写真】川沿いで話をするライターの徳とshin5さん

そんな私の問いに対して、自身の経験や想いを話してくれたのは、シングルマザーと恋をして、血のつながりはない長男と3人で家族を築き始めたshin5さん。現在は妻とのあいだに双子の次男と長女、そして末っ子の次女がいます。

ささやかで幸せな家族の風景を切り取り、妻や子どもたちへの愛情や感謝を惜しみなく表現するshin5さんのTwitterは、フォロワー数20万人を超える一大コンテンツに。140字の物語は「結婚しても恋してる」と題して、漫画や小説にもなっています。

shin5さんは夫になると同時に父になることをどう受け止めていったのか。血のつながらない息子との関係性をどう育んできたのだろう。妻と4人の子どもたちと、“ひとつの家族”を築いていくうえで大事にしていることは?

shin5さんのステップファミリーとしての12年の歩みを紐解いていくと、Twitterとはまた少し違った父としての顔や家族のかたちの断片が垣間見られました。

【写真】歩きながら話をするライターの徳とshin5さん

シングルマザーとの恋。息子の存在が関係を深めるきっかけに

遡って10年以上前、家族のはじまりはshin5さんが現在の妻である5歳年上のはるさんと出会い、恋をしたこと。大学を3年時に中退し、システムエンジニアとして企業に就職した22歳の頃でした。

会社の飲み会で意気投合し、社内チャットでやりとりを重ね、ランチや帰り道をともにして、距離を縮めていったふたり。当時のはるさんは3歳の息子を育てるシングルマザーでした。毎日定時に帰ることや社内の人の話からなんとなく勘づいていたものの、初めてのデートでお互いに好きな気持ちがあるとわかったとき、はるさんから「子どもがいる」とその事実を伝えられます。

正直びっくりしたし、まったくためらわなかったわけではないですが、彼女に子どもがいることで好きな気持ちにブレーキがかかることはなかったです。逆に、今までの恋愛とは違うものになるだろうという興味もあって……。彼女の子どもに会ってみたいと思いました。

4歳になった息子と初めて会ったのは、付き合い始めて1ヶ月後。もともと子ども好きだったというshin5さんは、一緒に思いっきり体を動かして遊びました。

その後も会社帰りや週末に3人で過ごす時間が増えていきます。いつしか息子の存在は、はるさんとの関係性を深めることのハードルではなく、後押しするものになっていました。

【写真】インタビューに応えるshin5さん

妻へと同じように、長男への思いや彼との関係性も深まっていって、「別れの危機があったときとか、悲しませたり傷つけたりするのが一人だけじゃないんだな」っていう思いが頭を過ぎりました。

たぶん、長男がいたから結婚して家族になることを意識したんだと思います。家族じゃないから僕は、彼の授業参観や運動会にも参加できないし、彼が怪我をしたり病気になったときに病室に入れないかもしれない。それは嫌だとはっきり思いました。家族になって守りたいという使命感のようなものが芽生えていましたね。

【写真】ライターの徳の話をきくshin5さん

とはいえ、当時23歳のshin5さんは、シングルマザーであるはるさんと結婚を前提に関係を深めていくことに、迷いや不安はなかったのでしょうか。

もちろんありましたよ。でも、なんだろう。気にはなっていましたけど、周りにいろんな人がいたので、自分が思い描いていたようないわゆる“普通の家族”だけじゃないんだな、いろんな選択肢があるんだなとは思っていて。

今から10年以上前なので、まだステップファミリーという言葉もなかったんですけど、上司にシングルマザーと結婚した人もいたので、相談に乗ってもらって、背中を押してもらいました

「ぼくのお父さんになってほしい」長男からの告白

shin5さんは、結婚してはるさんの夫になることと同時に、父親になることについても思いを巡らせます。出会った頃、shin5さんは「お兄さん」であり、長男にとっての「パパ」は2ヶ月に1回ほど面会する血のつながった父親でした。

それでも、週に2回ほど、実の父親よりもたくさんの時間を共にしているshin5さんに長男は懐き、別れ際に「帰らないでー!」と泣くことも。shin5さんが仕事が忙しくて会えなかったときにははるさんから「長男が寂しがっているよ」という連絡が。shin5さんは長男に「寂しい思いをさせたくない」という気持ちを募らせていきます。

【写真】インタビューに応えるshin5さん

その思いの根源には、幼い頃の自身の経験がありました。3人きょうだいの末っ子として沖縄に生まれたshin5さん。共働きの両親と年が離れた姉がふたり。父親は、物心がつく頃から4年ほど東京に“出稼ぎ”に行き、不在でした。

3歳くらいから小学校に上がるまで、父親に会ったのって10回もないくらいで。やっぱり、寂しかったんですよね。長男に「寂しい」と言われたときに、当時の自分が重なりました。

長男は、親が離婚していることはまだ理解していなかったかもしれないけど、近くにいた大切な大人である父親と頻繁に会えなくなる経験をしています。僕もそうなるんじゃないかと不安に思っていたんじゃないかな。

だから、寂しい思いをさせたくないと思ったし、遊ぶときも、一緒にサッカーをしたり絵本を読んだり、当時の自分が父親にしてほしかったことを追体験しているような感覚がありましたね。

そうして一緒に過ごす日々を重ねるなか、あるとき、長男からまっすぐな気持ちを伝えられます。

ぼくのお父さんになってほしい。

はるさんとの結婚を何よりも後押ししてくれたのは長男のこの一言だったのです。

嬉しかったですね。「僕でよかったら、お願いします」って、プロポーズみたいですけど(笑)。最初は妻が言わせたのかな?とも思ったんですけど、そうじゃなかった。気持ちをストレートに伝えてくれたので、結婚して家族になる決心がつきました。ためらう気持ちはゼロじゃなかったので、この一言がなかったらどうなっていたかな。

【写真】質問を受け考えながら話をするshin5さん

shin5さんはその後、彼の父親になることについて自分なりに考えて、正直な気持ちをはるさんに伝えました。

養育費をもらわないでいいように親として生活費を稼ぐこと、代わりに父親との面会を少なくしてほしいこと。それでも父親との関係は絶ち切らずに、隠さずに、はるさんを通じていつでも連絡を取れるようにしてほしいこと。

はるさんは「そういう考え方もあるんだね。いいと思う」とshin5さんの思いを尊重し、受け止めました。

自分のほかに父親がいることは、嫉妬のような複雑な気持ちもありました。矛盾するようだけど、それでも彼が思春期とかいつか父親に会いたいと思ったときは、遠慮せずに会ってほしい。その機会を奪わずに、自分の意思で父親に会うかどうかを選択できるようにしておきたかったんですね。

【写真】インタビューに応えるshin5さん

そして、結婚を決めてから、入籍する前に3人で一緒に暮らし始めます。shin5さんは長男とふたりで過ごす時間を増やし、家族になりたいと思っていること、父親がふたりになることを伝えました。ともに生活をする中で、お互いに思っていることを伝え合おうと、男同士、喧嘩をすることも。

家族になるからといって、長男に対して、“自分の子どもとして接しよう”とか“父親として認めてもらおう”とか、そういう意識はなくて、親として子ども扱いをすることもなく、これまでと変わらず一人の男の子として接していましたね。

そうやって一人の人間同士、関係性を築いていく中で、いつしかshin5さんにとって、“好きな人の子ども”だった長男は、“息子”に。長男もshin5さんのことを「パパ」と呼ぶように。ふたりは着実に親子になる階段を登っていきました。

両親の反対。養子縁組。納得するまでとことん話し合って家族になる

ステップファミリーは、独身の男女が結婚することが多い社会のなかでは、周囲の理解や制度がひとつのハードルになることもあります。

shin5さんとはるさんにとっても、お互いの両親の理解を得ることは容易なことではありませんでした。

はるさんの両親は当初、「子どもの気持ちを考えなさい」と結婚に賛成はせず、shin5さんがまだ若いことも心配していました。それでもはるさんがshin5さんと長男が仲良く遊ぶ写真を送ったり、両親には内緒で一緒にランチをする機会を設け、自分たちの姿を見せるなどするうちに二人の関係性を認めてくれるようになります。

ところがshin5さんの両親、特に父親は大反対。若いshin5さんに「妻子を養っていけるのか」と問いただし、はるさんには頑なに会ってくれません。

父に反対されたことで自分は何を一番大切にしたいのか、僕にとっての優先順位がわかりました。それは、妻と息子を笑顔にして、一緒に幸せな家族を築くこと。だから両親の理解を得られず、協力がなかったとしても、結婚をあきらめる選択肢はありませんでした。

結局shin5さんの両親の理解は得られないまま、反対を押し切って、結婚へと歩みを進めました。

【写真】shin5さんの話真剣な表情で聞くライターの徳

その後、入籍を前に、shin5さんは自分が姓を変えることを決めます。なぜならはるさんとの結婚を決めて以来、長男の姓が変わることがずっと気がかりだったから。夫婦別姓が認められていない日本では、9割以上の女性が男性の姓に変えている現実があります。

僕にも“男だから”という潜在意識がなかったわけではないですけど、妻と長男と幸せな家族を築くことに、世の中の常識や自分の姓へのこだわりは必要ないと思ったんです。

もう一つ、気になっていたのが戸籍上の名義。shin5さんがはるさんの戸籍に入る場合、養子縁組をすれば長男は「養子」、もし次にふたりの間に子どもが生まれた場合「長男」「長女」と記載されます。そこに違和感を覚えたshin5さんは、長男と養子縁組をしないことにしました。養子縁組をしなければ、shin5さんがはるさんの戸籍に入るのみで、長男の戸籍上の名義は「長男」のまま変わりません。

戸籍上で僕と長男が親子でなくてもひとつの家族になれると思ったし、長男が養子縁組をしたいと言ったらそのときは彼の意思を尊重したいと思っていました。

はるさんの元夫から養育費をもらい、息子が定期的に面会をしていること。長男は不妊治療で授かった子どもであるため、今後子どもを産むことを考えるなら治療が必要なこと。両親の反対。息子の姓や養子縁組など、血縁のない関係性を含むステップファミリーになること。

僕らには考えなくちゃいけないことがあったので、妻とは結婚前に喧嘩もしながら、もう大丈夫だと、疑問がなくなるまで、とにかくたくさん話し合いました。周囲の理解を得られなかったとしても、社会制度に合わなかったとしても、自分たちにとっていい選択をふたりで考えて選んできたので、立ち戻って後悔することはないですね。

お互いの状況や気持ちを打ち明けて、受け止める。目線を合わせて言葉を交わすことができるふたりにとって、目の前にあるハードルは、そのつながりを深めていくものになっていました。そして、付き合い始めてから1年半後、入籍し、3人は家族になったのです。

【写真】歩きながら話をするライターの徳とshin5さん

大切な人を失ってしまうかもしれない。父親になった日

結婚してからすぐに不妊治療をスタート。想定していたよりも早い約半年後、男女の双子を授かりました。双子を家族に迎え入れることに大きな喜びを抱くもつかの間、母体の容体は芳しくなく、妊娠5ヶ月からはるさんは入院し、絶対安静状態に。出産までの約5ヶ月間、shin5さんは自宅で長男とふたりで生活を送りました。

このときに長男との絆が一気に強くなりました。切迫早産になって、ICUに入って、お見舞いに行っても会えないこともあって。いつもより早く起きて弁当を作って準備して、仕事もあって、不安も取り除かないといけないし、バタバタで音を上げそうな毎日。もう必死でしたね。生活もままならず、息子も僕もお互いに不安で、気持ちをぶつけ合って一緒に泣いたこともありました。

安定期はないとされる双子の妊娠。入院生活を続けるはるさんも、ふたりで暮らすshin5さんと長男も、精神的に不安定になりながらも、お腹の中にいる赤ちゃんと5人家族になる日を待ち望んでいました。

妊娠9ヶ月、早期出産で緊急帝王切開に。手術に入る前、医師から、重度の高血圧症により常位胎盤早期剥離で出血多量になる可能性があること、母子ともに「万が一」があることを告げられます。大切な人を失うかもしれない。恐怖に襲われながらも、祈るように待ち続けました。

【写真】質問に応えるshin5さん

数時間が経ち、静かに開いた手術室の扉から、保育器が運ばれてきます。

お母さんも赤ちゃんたちもがんばりましたよ。元気な男の子と女の子です。

危険な状況のなかでも無事に生まれてきた双子はすぐにNICUに搬送され、出産後も長引いたはるさんの手術もなんとか無事に終了。家族5人が揃ったのは、それから1週間後の病室でした。

長男と一緒に過ごした日々のなかで、自分よりも子どものことを第一に考えていたとき「父親になったんだ」と思いました。そしてこの日、失ってしまう可能性もあった妻や子どもたちの笑顔を見たときに、この笑顔を失いたくない、家族を大事にしようと心に決めました。

弱い自分を見せ合って、受け止めて、補い合っていく

「家族を大事にする」と心に決めたとしても、誰しもが弱さも欠点もある不完全な人間、その気持ちを言葉や態度で示して、いつでも「いいパートナー」「いい親」であることはとても難しいことのように思います。そもそも、その“いい”という定義も人それぞれかつ曖昧なものですが。

【写真】shin5さんの話を受け話をするライターの徳

そんな思いを言葉にして漏らすと、shin5さんは自身の“失敗談”を語ってくれました。

僕には逃げ癖があるし、家族に対しても間違いや失敗をたくさんしてきました。今でももちろんありますよ。

shin5さんはこれまで2度ほど、離婚が頭を過ぎる家族の危機を経験しているそう。たとえば、双子が生まれた頃、これからもっとたくさんのお金が必要になるだろうとプレッシャーを感じたshin5さんは、若さと体力を頼みの綱にいくつかの副業を開始。無理なダブルワークから心身が疲労してしまいます。加えて、足りないほんの少しの生活費を補うために、はるさんには言わずにクレジット会社にお金を借りたのだそう。その利息によって借金は膨れ上がっていきました。

当時の僕には見栄やプライドがあって、妻には相談できなかったんです。どんどん追い詰められてひとりで苦しくなって。僕が借金をひとりで抱え込んでいたことを知った妻は頭を冷やしてほしいと言って実家に帰ってしまい、一人残された部屋で僕は、無駄なプライドは捨てて、これからは家族に隠し事をしないと決めたんです。そして妻に謝ってその決意を伝え、両親に頭を下げて戻ってきてもらいました。そこで僕が謝って変わることができなかったらダメになっていたと思います。

また、仕事と家庭のバランスが取れなくなってしまうこともよくあると言います。

僕は器用にバランスがとれる方ではないので、仕事が忙しくなり家族で過ごす時間を取れなくなって、逃げるように連絡もせず、妻に失望されたこともあります。そのとき妻に、仕事が遅くなっても、いつ帰るのか、いつまで忙しいかなど連絡だけでもしてほしいと言われて、意識するようになりました。

はるさんの言葉で自分の至らなさに気づいたshin5さんは、ちゃんと耳を傾け、少しずつ自分の意識や行動を変えていきました。

昔はプライドでかっこつけたいと思っていたけど、今は間違ってしまったことも素直に伝えて、弱さを見せることも大事だと思っています。

妻も完璧主義なので家事や子育てをがんばりすぎて倒れてしまったこともありました。お互いにどうしても無理しちゃうことはあるから、フォローし合えたら。お互いの弱さを知ることは安心にもつながるし、そうしてきたから、今があるのかなと思いますね。

子どもたちにも、つらいときは「今日は仕事に行きたくない」と言うこともあります。もしひどい態度を取ってしまったら、ごめんと謝る。そうやって少しずつ信頼関係を築いていくしかないと思っています。

shin5さんは「いいパートナー」「いい親」であろうとするのではなく、見栄やプライドを捨てて、自分の弱さを見せて、相手の弱さを受け止めることを選びました。それが、shin5さんにとって「家族を大事にすること」なのかもしれません。

父として。血のつながりよりも一緒に過ごす時間を大事にする

双子を出産した6年後、shin5さんとはるさんは自然妊娠で新たな命を授かりました。ただふたりは、妊娠を喜ぶとともに、双子の出産時に母子の命が危なかったことから、出産について大きな不安も抱えていました。shin5さんがその気持ちを長男に漏らすと「ママがいなくなるのは絶対にいやだけど、でも、弟か妹には会いたい」と。その長男の言葉にshin5さんは励まされたと言います。

shin5さんは仕事を調整して万が一の時に備えながらも、はるさんの妊娠は順調に経過。無事に次女が生まれ、shin5さんは4人の子どもの父親になりました。

【写真】緑の中を穏やかに歩くshin5さん

血のつながらない長男と、血のつながった双子の次男と長女と次女の6人家族。shin5さんはそもそも子どもに対して、血のつながりを意識することはまったくないと言います。

血のつながりがあるから家族だ、血のつながりがないから家族じゃない、というのはすごく短絡的な考え方ですよね。長男とは10年以上、他の子どもたちとも、一緒に多くの時間を過ごしてきました。間違ったら謝るとか、思いっきり遊ぶとか、子ども扱いしないとか、僕自身が幼いときにそばにいてほしかった父親を意識して子どもたちと接しています。

僕にとっては、血のつながりよりもそうやって一緒に過ごす時間の方が大事なんですよね。

はるさんを通していつでも連絡を取れるようにしていた長男の父親からは、誕生日や小学校入学、中学校入学など節目節目で連絡がきているそう。そのことは、長男もshin5さんも妹や弟も知っています。

長男にとって、目の前にいるママとパパ以外にも、お父さんも自分のことを大事に思ってくれているということは励みになると思うんです。だからほかのきょうだいにも”お兄ちゃんにはパパがふたりいる”という事実は隠しません。

双子には、以前クラスで親が離婚して苗字が変わった友だちの話をしていたときに、ママも離婚をしていて、その後パパと結婚したんだよという話をしました。何度か話して、今は小学校4年生なので、もう理解していますね。3歳の次女はまだ事情がわからないと思うのですが、これからときがきたら話すつもりです。

今のところ長男は、父親に会ってみたいとは言いませんが、双子は「会ってみたい!」「会ってどうする?」という会話をしたりもしています。

事実を隠さずに家族みんなで受け止める。そうやって一緒に過ごす時間の中で育まれていく関係性は、血のつながりを優に超えていくのでしょう。

【写真】shin5さんの話を受け止めるライターの徳

自分が一番いたい場所は、家族が笑顔でいるところだから。

僕にとって一番大事なのは家族であり、妻です。

shin5さんには今、ブレない軸があります。それは、これまで“家族を失うかもしれない”経験をして、失敗も反省もして、弱さを見せて、時に自分を変えながら、気づいてきたこと。shin5さんは壁にぶつかる度、自分にとって大切なものは何か?を問い続けてきました。

バランスを崩しやすい僕は、その度に自分にとって何が大事で誰と向き合わなきゃいけないのかを考えます。そして、自分が一番いたい場所は、家族が笑顔でいる場所で、何よりも家族を守りたいということに改めて気づくんです。

4人目の子どもが生まれた頃、仕事のプレッシャーから、心身の調子を崩し、朝スーツを着てネクタイを締める手が震えたことがありました。そんなshin5さんの姿を見て、はるさんは「仕事に行かなくてもいいんじゃない?」と声をかけてくれたといいます。その言葉をきっかけに、shin5さんは会社を辞めました。

精神的に辛いとき、妻の言葉に救われました。僕にとって家族は自分を支えてくれるもので、何より大事な存在。

仕事は替えが効くけれど、家族は代わりはいません。だからそのときも、家族と笑顔で一緒にいることを最優先に考えて、会社は辞めていいと判断できました。

【写真】川の方向を見つめるshin5さん

些細なことで崩れてしまう家族だからこそ、家族一人ひとりとの人間関係を大事にする

shin5さんは、家族という自分の大切な場所を守りたいと思うと同時に、常に失うことへの恐怖や不安も隣り合わせに持っています。

今でも家族が崩れてしまう不安はありますね。小さな約束を破ったり、見栄を張ったり。そんなことで?と思うかもしれないけど、家族や人の関係性ってそんな些細なことで壊れちゃうと思うんです。しかも壊れちゃったらなかなか取り戻すことができない。だからこそ、妻と、子どもたちそれぞれとの関係を大事にしたいと思うんですよね。

【写真】空を見上げるshin5さん

家族と言えど、些細なことでほころんでしまう人間関係。その前提に立つshin5さんは、はるさんに対しても、長男やほかの子どもたちに対しても、夫や父という立場や夫婦や親子といった関係性の枠にとらわれず、それぞれとの“ひとつの人間関係”として、フラットに捉えているように感じました。

家族だから、親子だから、夫婦だから、無条件に大事にするわけでもなく、“こうするべき”にとらわれることなく、shin5さんは一人の人間として妻であるはるさん、子どもたち、その一人ひとりと向き合っているのだと思うのです。

はるさんに対しても“妻や母としてこうあるべき”といった思考がないから、10年以上連れ添っても恋人のような関係でいられるし、“父親だから”と気負わずに子どもを子ども扱いしないから、血のつながらない長男ともほかの子どもたちとなんら変わらない関係性を育むことができる。

ステップファミリーであっても、そうでなくても、家族の中の立場にとらわれることなく押し付けることなく、甘えすぎることなく、それぞれの“人間関係”を育んでいくことが大事なのだと思いました。その関係性の輪がゆるく交わるところに、“ひとつの家族”が生まれていくのでしょう。

私も「母であること」「妻であること」にとわられず、気負わずに、目の前にいる夫と娘と、「一人の人間」としてそれぞれの関係性を育んでいきたいと思います。

【写真】笑顔でこちらを見ているライターの徳とshin5さん

関連情報:
shin5さん Twitter

soarではライターの徳瑠里香さんとともに、「わたしと家族のつながり方」をテーマに、「自分の選択」をして、「わたしの家族」を築いている人たちに話を伺う企画を展開しています。

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(編集/工藤瑞穂、写真/川島彩水、企画・進行/松本綾香、協力/高村由佳)